無実の罪で収監された男が、過酷な状況でも常に生きる希望を失わない姿を描くハートフルムービー『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』(原題:AMERIKATSI)が6月13日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開される。この度、世界各国の映画祭で19の賞を受賞した本作の監督・脚本を務めたマイケル・グールジャンがSCREEN ONLINEのインタビューに応えてくれた。企画の立ち上がりから、本作のキーとなる「アルメニア」「牢屋からののぞき見」に関する秘話までたっぷりと話を聞かせてくれた。

“芸術を通して自分を表現することは、誰にも止めることはできない”

ーー本作でのポイントとなる牢屋からの「のぞき見」は、どういったきっかけで作品に取り入れようと思われたのでしょうですか。

「実話に基づいているんだ。ウクライナ人の友人の知人が刑務所に入っていて、彼はそこからある人の生活をずっと覗いていたらしい。彼にとってはテレビのような存在だったのさ。これは映画の中で描いていないんだけど、ある日、覗いていた人が姿を見せず、あまりにも動転して、その人を見つけて助けるために、脱獄しようとしたんだ。それを聞いて僕は気づいたのさ。それは人間の本質だと。一度、相手のことを詳しく知ってしまったら、僕たちはその人を想わずにはいられないんだ。まさにそれを伝えるために、本作を作ったようなものだ。

さらにアルメニアの文化やアルメニア人の美しさを知ってもらうという目的もあった。例えば『マイ・ビッグ・アルメニアン・ウェディング』という風に、“アルメニアのすばらしさを知ってくれ”と押しつけるのではなく、少しずつね。

『裏窓』のように映画の中だけでなく、僕たちは常に人々の生活をのぞき見している。観客はチャーリーと同様、のぞき見することで、少しずつアルメニアを知ることができるんだ。あのアパートには、僕が考え得るアルメニアらしさをすべて詰め込んだ。ゲームやダンス、音楽や食事、人々の表情などすべてだ。観客はもっと知りたくなり、前のめりになるはずだ。“のぞき見”にはそういう効果があると感じ、魅了されたんだ」

画像1: “芸術を通して自分を表現することは、誰にも止めることはできない”
画像2: “芸術を通して自分を表現することは、誰にも止めることはできない”

ーーチャーリーがティグランの家を覗くシーンはそれぞれセットを作って撮影したのでしょうか。実際に距離があるような画作りになっていました。また、演出の方法も気になります。

「まずはコロナ禍で撮影を止められる前に、アパートのシーンをできるだけ撮った。そして刑務所の中の僕のシーンを撮る時、“眺める”という演技は大切だと思ったから、プロジェクターを用いて、すでに撮っていたシーンを壁に映し出したんだ。だから僕は実際にアパートの中の様子を眺めていたのさ」

ーーティグラン役ホヴィク・ケウチケリアンさんのキャスティングが絶妙だと思いました。彼をキャスティングしたきっかけを教えてください。役作りについてはどんなお話をされましたか。

「僕とボヴィク、ディミトリ、ソナ以外は全員アルメニア出身だ。ホヴィクは見つけるのに時間がかかったけど、彼の写真をオンラインで見て『これは誰だ?』とピンときたんだ。彼は撮影開始の1カ月半前にアルメニア入りしてもらい、言語を学び、食事を楽しみ、アルメニアに溶け込んでもらうようにした。

彼は役者になる前にボクサーとして活躍していて、ティグランのように体は大きいけど心も大きい魅力的な人間だ。この役のためにすごく努力をしてくれて、アルメニアのダンスも習ってくれたし、歌うシーンも実際に彼が歌っている。すべてを役に注ぎ込んでくれたね」

ーー本作では音楽、絵画、映画など「文化」と触れることで、他者そして自分自身を登場人物たちが知っていくように思いました。この映画の中では「文化」をどのように描きたいと思っていましたか。

「前の質問でも答えたように、アルメニアの文化を押しつけるような描き方はしたくないと思っていたよ。完成したての頃、友人で哲学者のジェイコブ・ニードルマンに本作を見せたんだ。残念ながら、そのあと亡くなったけどね(2022年11月死去)。彼が『この作品は芸術へのラブレターであり、芸術の大切さを語っている』と言ってくれた。映画に出てくるティグランは画家でアーティストだからね。

ちなみにティグランはプロデューサーの一人、パトリック・マルカシアンの祖父を基にしているんだ。彼も帰還者で、教会の絵を描いたというだけでシベリアに送られたらしい。そのストーリーを映画に取り入れてみた。ティグランはチャーリーに、絵を描く道具を送ってくれるけど、それは“表現の自由”の延長線だとも言える。自分や自分の文化を表現する自由だよ。

本作には2つの側面がある。1つは祖国に思いを寄せるチャーリーの物語。でももう1つのティグランの物語も同じくらい大切なんだ。ソ連の一部となったアルメニア人たちは、自分たちの文化を奪われて、ソ連の人間になることを命じられた。でも芸術を通して自分を表現することは、誰にも止めることはできない。それを本作では伝えたかったんだ」

画像: 6/13公開!映画『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』予告編 www.youtube.com

6/13公開!映画『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』予告編

www.youtube.com

『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』
6月13日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
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