無実の罪で収監された男が、過酷な状況でも常に生きる希望を失わない姿を描くハートフルムービー『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』(原題:AMERIKATSI)が6月13日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開される。この度、世界各国の映画祭で19の賞を受賞した本作の監督・脚本を務めたマイケル・グールジャンがSCREEN ONLINEのインタビューに応えてくれた。企画の立ち上がりから、本作のキーとなる「アルメニア」「牢屋からののぞき見」に関する秘話までたっぷりと話を聞かせてくれた。

“祖父はチャーリー以上にひどい過去を経験しているけど、
明るく生きる術を見つけた。彼の生き方は今の時代、大切だと思う”

ーーそもそも、この映画の企画はどのように立ち上がったのでしょうか。また、ご自身で主演を努めようと思われた理由は?

「様々な要素が合わさって、この企画は立ち上がったんだ。アルメニア系アメリカ人、ディアスポラとして、僕の民族的ルーツを描いた作品をずっと作りたいと思っていてね。2006年に初めてアルメニアを訪問した時の感動があまりにも大きかったから。アルメニア人ならきっと分かる、祖国の地を踏んだ時の特別な『帰ってきた』という感覚さ。

その時、何か作るのであれば、アルメニアで撮りたいと思ったんだ。アルメニア人やその文化についての映画を撮るだけでなく、アルメニアで撮影することにはこだわったよ。なぜなら、アルメニアで制作される映画は非常に少なく、可能性を秘めているのに勿体ないと感じていたから。僕が作り、その可能性を示してあげることも、目標の一つとなったんだ。最初は囚人と看守という小さなストーリーを伝えたいと思っていたんだけど、次第に雪だるまのように企画は大きく膨れ上がっていったよ。

マイケル・グールジャン

役者としていろんな現場を経験してきて、要求が厳しい監督がたまにいる。それでうまくいく時もあるけど、僕はそれぞれの長所を引き出したいと常に思っているし、その方が成功する場合が多いんだよね。今回はそれを心がけた。

今回、音楽は実はアルメニア国立交響楽団(Armenian National Philharmonic) が手がけてくれたんだ。そんな予算はもちろんなかったけど、最後の方には誰もが参加を希望していて、みんな何かしら貢献したいと考えていたから、彼らも手を挙げてくれたんだ。

あと、主演についてだね。僕からの視点で脚本を書いたから、チャーリーは僕と同じ信念を抱いている。最初は資金を集めるために、他の有名俳優を考えていたけど、結局は僕が演じるのが一番だと気づいたんだ。大変そうだと感じるかもしれないけど、僕自身はとても楽だったよ。撮影監督、助監督、プロダクションデザイナーなど、スタッフ全員を信じて各々に動いてもらっていたから、監督と主演の両方を務めるのは決して難しいことではなかったんだ」

画像1: “祖父はチャーリー以上にひどい過去を経験しているけど、 明るく生きる術を見つけた。彼の生き方は今の時代、大切だと思う”

ーー本作は「故郷」を巡る物語だと思います。監督ご自身もアルメニアにルーツがおありですが、アルメニアをどのような場所だと考えておられましたか。

「映画のようにアルメニア人は世界中に散らばっている。そんな人々にとってアルメニアは、とても幸せであり、悲しい場所でもある。過去にアルメニア人に起きたことは悲劇的だ。それは現在でも続いているんだ。映画の撮影を終えて2カ月後にアゼルバイジャンとの間に戦争が勃発し、多くのキャストやスタッフが戦場に出向いた。アメリカ人としては信じがたいことだった。

前線にいる役者から動画が送られてきて、彼はその中で『マイケル、こんなことより映画を撮りたい』と言っていたんだ。心が張り裂けるよね。でもそれだけの悲劇や苦しみを経験しているにも関わらず、明るく生きている。僕たちだけじゃなく、多くの民族が体験していることだけどね。初めてアルメニアを訪れた時、初めて体験することがたくさんあった。昼食を食べに行っただけなのに、5時間後には村の半数の人と交流していたり・・・。アルメニアにはそういう魅力があり、それをできるだけ映画の中でも描くようにしたよ」

画像2: “祖父はチャーリー以上にひどい過去を経験しているけど、 明るく生きる術を見つけた。彼の生き方は今の時代、大切だと思う”

ーー物語自体はシリアスですが、監督ご自身が演じるチャーリーの人柄が前向きなので救われます。彼は劇中で「アメリカッチ(アメリカ人)」と呼ばれていますが、チャーリーの人柄にはアメリカ人そのものが反映されている部分もあるのでしょうか。もしくはモデルとするような人物がいますか。

「モデルの人物はもちろんいたよ。歴史的に見て、1940~1950年代のアメリカ人は『何でもできる』という雰囲気を持っていたんだ。だからそういう側面を描いた。でもチャーリーは、僕の祖父の人間性と生き方をベースにしているよ。

祖父はアルメニア人の大量虐殺の生存者で、言葉にできないような悲惨な出来事を経験してきた。でも僕にとっては、彼は誰よりも前向きな人だった。僕にも、常に笑うように、友達をたくさん作るように、と言ってくれた。

チャーリーは、あまりにもナイーブでポジティブすぎるという人もいるけど、社会全体が冷たく薄汚れてきたとも言える。チャーリーは僕の祖父そのものなのさ。祖父はチャーリー以上にひどい過去を経験しているけど、明るく生きる術を見つけた。彼の生き方は今の時代、大切だと思うんだ。最近の映画ではなかなか見られないよね」

『アメリカッチ コウノトリと幸せな食卓』
6月13日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
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