いよいよ公開された超大作『スーパーマン』。アメコミ映画ファンならずとも観ておきたい、この夏の一大エンターテインメント作品となった本作について、本誌おなじみ杉山すぴ豊さんに解説してもらいました。(文・杉山すぴ豊/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『スーパーマン』より © & TM DC © 2025 WBEI

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予習不要! 派手なビジュアルとパワフルな展開の“夏”エンタメ!

まず本作は今までの作品を観ていないと楽しめないという作りになってはいません。本作から新たなDC映画世界が始まる1作目なわけですから。その一方でヒーロー物の1作目というのはどうしても上映時間の半分近くをヒーローの誕生秘話や紹介にさいてしまいがち。だから活躍シーンにいくまでが長くなる。けれどこの『スーパーマン』はすでに彼がヒーローとして活躍しているところからスタートします。この矛盾をどうクリアするのか? ズバリ!「スター・ウォーズ」手法です。冒頭のテロップでこの世界の状況とスーパーマンの存在を手際よく説明しています。そういえば劇場版「名探偵コナン」シリーズも必ず冒頭でコナンとはなにかを説明することで初めての人もいっきに作品の世界へひきずりこみますよね。だから予習はいらない、しかも話の展開がもたもたしない、テンポのいい大活劇なのです。そして本作はスーパーマンならではの見せ場のオンパレード。怪獣と戦うわ、悪の超人とバトルするわ、天変地異の大ディザスターに立ち向かうわ。それぞれの見せ場で1つの映画が作れてしまうぐらい、あらゆるヒーロー映画の面白さがつまっているのです。

画像: 人命救助シーンも大迫力

人命救助シーンも大迫力

さらにスーパーマン以外のヒーローやヴィランたちも多数登場。まさにコミック・ブックの世界がそのまま現実に飛び出したような派手なビジュアル・エンタテインメントに仕上がっています。これ1本で沢山のヒーロー映画を観たような満腹感を味わえるでしょうか。アクションの見せ場もさることながら、主要キャラクターたちの会話も楽しい。ジェームズ・ガン監督が手掛けたマーベル・シネマティック・ユニバース/MCUの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズも、登場人物たちのセリフの応酬が魅力ですよね。そういうジェームズ・ガン節が本作にも活かされています。とにかくスーパーマンは晴れた青空が似合う。そこが夜に活躍するバットマンと違うところ。夏にぴったりのヒーロー映画です。

画像: スーパーヴィランもド派手に暴れる

スーパーヴィランもド派手に暴れる

画像: スーパーマン以外のヒーローもクールに活躍

スーパーマン以外のヒーローもクールに活躍

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心から応援したくなる! 極限状態でも貫く信念

スーパーマンというのはある意味完璧な超人なのです。あまりに強く、そしてまっすぐな心を持っています。優等生的でもある。これをこのままスクリーンで描くと面白みがなくなってしまうんですね。どこか弱点があったり、心に闇を持った人間を描いた方が観客は共感しやすいし、ドラマ的に盛り上がるわけですから。従ってスーパーマン物を面白くするには、この無敵のヒーローにどういう試練を与えるかなのです。今回の『スーパーマン』はのっけからスーパーマンが負けるところから始まります。さらに世の中的にはよかれとやったことが世間的に大バッシングされている。さらに信じていた実の両親が実は………、みたいに肉体的にも精神的にもとことんまで追いつめられます。この映画、全体の3分の2ぐらいまではスーパーマンがピンチという感じです。だからこそスーパーマンが活躍する逆転のクライマックスにわくわくするわけです。そう、心からスーパーマンを応援したくなるんですよね。

画像: 心からスーパーマンを応援したくなるつくり

心からスーパーマンを応援したくなるつくり

そして、どんな状況でも“苦しんでいる人を助ける”という信念の持ち主であることが嬉しい。「戦争で多くの人が死んでいる。だから戦争を止めるんだ」このピュアさ、そして尊さ。スーパーマンというヒーローだからこそ見せてくれる強さとやさしさがここにあります。僕ももしスーパーマンが本当にこの世界にいてくれたら、戦争をやめさせてほしいと願うと思うから。スーパーマンならではの難しさ、スーパーマンならではの素晴らしさをガン監督はちゃんとわかっているんです。リチャード・ドナー監督の『スーパーマン』には人々を見守る温かさがあり、ザック・スナイダーの『マン・オブ・スティール』には人々が憧れるクールさがありました。そして今度の『スーパーマン』には人々のハートを鼓舞する熱さがあります。世界を皆でよくしていこう、という思いです。個人的にはコミックやアニメで何度か描かれていた巨大怪獣VSスーパーマンをまさか実写で観られるとは! 大興奮でした。

画像: レックス・ルーサーがひたすら追い詰める

レックス・ルーサーがひたすら追い詰める

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今後も広がる“DCU”に期待が膨らむばかり!

本作はスーパーマン以外のヒーローがすでにいる世界です。MCUは『アイアンマン』から始まり徐々にヒーロー世界を広げました。また、ザック・スナイダーの『マン・オブ・スティール』もまずはスーパーマンだけを登場させました。それに対し本作はざっと6人のヒーローが出てきます。また、ヴィランとして紹介されたエンジニアはコミックではジ・オーソリティというヒーロー・チームのメンバーで、この先のスクリーンでの再登場も期待できます。いきなりDCユニバースという大風呂敷を広げたわけですから、あとはここにどんどんヒーローを並べていけばいいのです。とはいえガン監督はやみくもにDCヒーロー物を量産かつリリースしていくことには慎重のようで、まずそのヒーローについてきちんと脚本が出来てから作っていくというスタンスの模様。

DCユニバースの劇場用映画2作目は『スーパーガール』になります。ガン監督曰く、もともと『スーパーガール』を2作目にするつもりはなかったが、脚本が素晴らしかったので急遽製作したと。一方、DCユニバースにとってスーパーマンと同じぐらい重要なのはワンダーウーマンとバットマンであり、彼らをどう登場させるかにも取り組んでいる模様。(DCユニバースのバットマンは、ロバート・パティンソンの『ザ・バットマン』路線とは別ものになります)すでに新たな「ワンダーウーマン」映画の脚本は出来たと報じられているので新ワンダーウーマンの発表も近い?(『モービウス』「キャシアン・アンドー」のアドリア・アルホナが演じる説あり)一方次の『スーパーガール』は宇宙が舞台とされています。ジェイソン・モモア演じる銀河の賞金稼ぎロボも絡んでくる予定。ガン監督の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズがMCUに宇宙を持ち込んだように『スーパーガール』起点でDCユニバースの宇宙もの路線が花開くかもしれません。個人的にはホークガールが素晴らしかったので彼女のスピンオフを期待したいところ。

そうだったのか! トリビア解説

1)新たなグリーン・ランタン

ガイ・ガードナーという地球人が宇宙のヒーロー、グリーン・ランタンとして活躍しています。コミックではガードナーは地球人としては四代目のランタン。なおライアン・レイノルズが映画『グリーン・ランタン』で演じたハル・ジョーダンは2代目ランタン。

2)ホークガールには連れがいる?

翼を持った武闘派の女性ヒーロー、ホークガール。コミックなどで彼女にはホークマンというペアがいますが、ホークマンはドウェイン・ジョンソンが出演したDCEUの1作『ブラックアダム』で活躍しています。

3)「GotG」ファミリーが集結!

スーパーマンの“孤独の要塞”で彼を助けるロボットの声をマイケル・ルーカー、ポム・クレメンティエフが担当。そしてスーパーマンの実の父、ジョー・エルをブラッドリー・クーパーが演じています。皆「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GotG)」シリーズの出演俳優ですよね。

4)イヴ・テシュマッカーのお約束

ルーサーの恋人でSNSのインフルエンサーのイヴ。彼女がルーサーを裏切ってスーパーマンは助かるわけですが、クリストファー・リーヴ版『スーパーマン』でもルーサーの情婦イヴがスーパーマンを助けるのです。

画像: 78年版同様にシュテマッカーが反撃のカギに

78年版同様にシュテマッカーが反撃のカギに

『スーパーマン』
アメリカ/2025年/2時間9分/ワーナー・ブラザース映画配給
監督:ジェームズ・ガン
出演:デヴィッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト、エディ・ガテギ、イザベラ・メルセード、ネイサン・フィリオン、サラ・サンパイオ、マリア・ガブリエラ・デ・ファリア
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