デヴィッド・リーン(イギリス出身)
ヒューマニズム溢れる物語の裏に戦争の愚かさを忍ばせる

デヴィッド・リーン
Photo by Baron/Hulton Archive/Getty Images
デヴィッド・リーンの『戦場にかける橋』(57)は、タイ奥地の日本軍捕虜収容所を舞台に、鉄橋建設作業に従事する連合軍捕虜と収容所指揮官の交流を描く。対立していた両者が徐々にお互いを認め合っていくヒューマニズムに溢れた物語でありながら、すべてが水泡に帰すラストで戦争の愚かさを強烈に訴える。アカデミー賞では作品賞、監督賞など7部門を受賞し、リーンは以後、『アラビアのロレンス』(62)、『ドクトル・ジバゴ』(65)など、戦争に翻弄される人間ドラマの超大作を次々と送り出す。

『戦場にかける橋』
Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images
ロマン・ポランスキー(フランス出身)
幼少期に強制収容所で母を亡くした過去を持つ

ロマン・ポランスキー
Photo by Andreas Rentz/Getty Images
スティーヴン・スピルバーグは当初、『シンドラーのリスト』を自分で監督する自信が持てず、何人もの監督に映画化を勧めていた。その1人が、ユダヤ系ポーランド人のロマン・ポランスキーだった。だが、自身も幼少期に強制収容所で母を亡くした過去を持つポランスキーは、「私にもまた語るべきホロコーストがある」と、スピルバーグの依頼を辞退。その言葉通りに完成させたのが、『戦場のピアニスト』(02)だった。第二次世界大戦中、ドイツ占領下のポーランドで身を隠しながら生き抜いたユダヤ人ピアニストの回想録を原作に、ポランスキーは自らの思いを重ねて映画化。その渾身の一作は、カンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いたほか、アカデミー賞でも監督賞など3冠を受賞。後にポランスキーは「もし私の墓にフィルム缶を置くとしたら、『戦場のピアニスト』を置きたい」と語っている。

『戦場のピアニスト』
Photo by Getty Images
ジョン・スタージェス(アメリカ出身)
戦争映画にも男気の溢れた物語を展開する

ジョン・スタージェス
Photo by Hulton Archive/Getty Images
第二次世界大戦中、兵役を経験したジョン・スタージェスは、戦後に監督デビューすると、アクション映画を連発。その代表作が、鉄壁を誇るドイツ軍捕虜収容所から、連合軍捕虜たちが大挙脱走した史実に基づく痛快娯楽作『大脱走』(63)だ。スティーヴ・マックィーンらオールスターが演じる個性的な捕虜たちが、監視の目を掻い潜って進める脱走計画はスリル満点で、さながら「捕虜たちのミッション:インポッシブル」といった趣。

『大脱走』
Photo by Silver Screen Collection/Getty Images
遺作となった『鷲は舞いおりた』(76)では、ベストセラー冒険小説を原作にドイツ特殊部隊による英国のチャーチル首相誘拐作戦を描く。このほか、ビルマ(現ミャンマー)を舞台に日本軍に抵抗する米軍ゲリラ部隊の活躍を描いた『戦雲』(59)も発表。いずれもスタージェスらしく、男気に溢れた物語が満喫できる。