スティーヴン・スピルバーグ(アメリカ出身)
彼にとって戦争は映画の重要なテーマ

スティーヴン・スピルバーグ
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ジャンルを問わない名手スティーヴン・スピルバーグは、第二次世界大戦を題材にした作品も多く手掛けている。
J・G・バラードの自伝的小説を映画化した『太陽の帝国』(87)では、日本軍の侵攻を受けた上海で両親と生き別れた少年ジム(クリスチャン・ベイル)が、日本軍の強制収容所で逞しく生き抜く姿を描く。多数のユダヤ人をホロコーストから救ったドイツ人実業家オスカー・シンドラーの偉業を描いた代表作『シンドラーのリスト』(93)は、自身もユダヤ系であるため、原作小説との出会いから映画化を決意するまで10年を要した。その分、入魂の一作となり、スピルバーグに初のアカデミー賞作品賞と監督賞をもたらす結果に。それまで無名だったシンドラーに光を当てた功績も大きい。冒頭30分近く続くノルマンディー上陸作戦の生々しい描写が戦争映画の歴史を変えた『プライベート・ライアン』(98)では、アカデミー賞監督賞など5部門を受賞。

『プライベート・ライアン』
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『シンドラーのリスト』
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これらに先駆け、1979年には異色作『1941』も発表している。真珠湾攻撃直後、日本軍の潜水艦がカリフォルニア近海に浮上したという事実に基づくハチャメチャなコメディだ。2度のアカデミー賞監督賞受賞作はいずれも第二次世界大戦が題材の上、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)でもナチスを悪役にするなど、スピルバーグにとって戦争は重要なテーマとなっている。
クリント・イーストウッド(アメリカ出身)
自らも徴兵経験があり「戦争」を嫌っている

クリント・イーストウッド
Photo by Jun Sato/WireImage
太平洋戦争末期、日米両軍が硫黄島で繰り広げた激戦を双方の視点で描いたのが、クリント・イーストウッドの“硫黄島二部作”だ。第1弾『父親たちの星条旗』(06)では、ピューリッツァー賞に輝いた写真「硫黄島での国旗掲揚」に写った米軍兵士たちの壮絶な戦場体験と、英雄に祭り上げられたその後の苦悩を描く。その製作過程で日本軍守備隊に関心を持ったイーストウッドは、第2弾『硫黄島からの手紙』(06)も発表。日本軍が主役の本作には渡辺謙や二宮和也ら日本人俳優が大挙出演し、劇中では日本語が飛び交う異例の作り。それが実現したのも、若い頃に言葉の通じないイタリアでキャリアを積んだイーストウッドならではだった。自らも徴兵経験があり、「戦争は大嫌い」というイーストウッドは、この二部作について「戦争が与える影響を描きたかった」と語っている。

『父親たちの星条旗』

『父親たちの星条旗』
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権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
©2006 Warner Bros. Entertainment Inc. and Dreamworks LLC. All rights reserved.

『硫黄島からの手紙』

『硫黄島からの手紙』
デジタル配信中
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権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
©2006 Warner Bros. Entertainment Inc. and Dreamworks LLC. All rights reserved.
クリストファー・ノーラン(イギリス出身)
臨場感ある歴史体験を観客に届ける

クリストファー・ノーラン
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クリストファー・ノーランの『ダンケルク』(17)は、1940年5月〜6月、ドイツ軍に追い詰められた英仏連合軍の撤退作戦が題材。現場となったフランス北部のダンケルクの海岸でロケ撮影しており、その迫力は折り紙付き。撤退中の兵士(1週間)、救援の民間船(1日)、航空支援を行う戦闘機(1時間)という時制の異なる三者の視点を交差させる手法が緊迫感を高める。“原爆の父”J・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画『オッペンハイマー』(23)は、原爆開発秘話に止まらず、核開発競争の扉を開いた人間としての苦悩まで描き切り、アカデミー賞作品賞、監督賞など7部門に輝いた。

『ダンケルク』

『ダンケルク』
デジタル配信中
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
© 2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『オッペンハイマー』

『オッペンハイマー』
4K Ultra HD + Blu-rayセット: 7,260円 (税込)
Blu-ray: 2,075円/DVD: 1,572円 (税込)
発売・販売元: ハピネット・メディアマーケティング
© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.
いずれも、交差する時制、CGに頼らない実写へのこだわり、IMAX等の大型スクリーンに相応しい臨場感など、ノーランらしい作風で見る者に歴史を追体験させる。
テレンス・マリック(アメリカ出身)
自然の美しさと激しい戦闘の対比から浮かび上がるものは

テレンス・マリック
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1942年、日本軍が守備するガダルカナル島攻略に挑んだ米軍兵士たちの戦いを描いたのが、テレンス・マリックの『シン・レッド・ライン』(98)だ。ただし、本作で強く印象に残るのは、自然の風景を捉えた映像美。せりふを極限まで削ぎ落したドラマもその美しさを引き立て、激しい戦闘との対比で戦争の愚かさを浮き彫りにする。“映像の詩人”マリックは、ひとつのシーンを異なる日差しの下で3度撮影し、編集段階で最適なものを選択したという。その執念は、ベルリン国際映画祭金熊賞受賞という形で結実。マリックはこのほか、ドイツに併合されたオーストリアで、ナチスに忠誠を誓うことを拒み続けた男の不屈の生き様を描いた『名もなき生涯』(19)も手掛けている。

『シン・レッド・ライン』
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