
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』
2025年8月8日(金)公開
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監 ギャレス・エドワーズ 脚 デヴィッド・コープ
出 スカーレット・ヨハンソン、マハーシャラ・アリ、ジョナサン・ベイリー
前作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』から5年後。世界に散らばった恐竜たちは赤道近辺に隔離されていたが、ある特殊チームがそんな恐竜たちのDNAサンプル採取に向かう。さらに時を同じくして赤道洋付近で恐竜に襲われた一家の船が難破するという緊急事態も起きていた…。(配給:東宝東和)
1993年の『ジュラシック・パーク』初公開以来、映画史を塗り替える映像と興行記録で人気となったシリーズ最新章『ジュラシック・ワールド/復活の大地』が日本上陸。
本作でメガホンを取ったギャレス・エドワーズ監督と、シリーズ第1作、第2作を担当し、久々に「ジュラシック」シリーズにカムバックした脚本家デヴィッド・コープ(本人に確認するとケップと読むのが正しいそうだ)のコンビが来日した。
2人が思うスティーヴン・スピルバーグの凄さとは
まずは 2人とも絶賛する本シリーズのクリエイター、スティーヴン・スピルバーグの他の作家とは違う凄さについて聞いてみた。
ギャレス・エドワーズ(以下G)「やっぱり天才ですよね。言い方を間違えると問題になりそうだけど、マジック同様に他の映画作家は同じ作品を2度3度と見ていると、‟タネ”がわかるものなんです。例えば袖の中にぱっとカードを隠しちゃうとか、極端にいうとそれを真似しようと思えばできそうなんですが、スティーヴンの映画は、何度見てもタネがわからないんです。本物の魔法を使っているのかと思うくらい、どこからアイディアを持ってくるのか不明なんです。『復活の大地』を作る前に、彼のいろんな作品のフッテージを集めていろいろ研究したんですが、それでもわからない(笑)」
とスピルバーグ信者でもあるギャレスらしい賛辞が返って来た。
デヴィッド・コープ(以下D)「私には答えはよくわからないということかな(笑)。もしわかるようだったら、みんなその真似をするはずですから。『ジュラシック・パーク』の時、初めて会ったのですが、彼のやっていることはまるで魔法のようで、私も真似しようとしたけど諦めました。もう一つ、彼ほどキャラクターに思い入れを持つ人はいないと思います。『ジョーズ』が時代を経てもなお傑作であり続けるのは、スティーヴンが3人の主人公の個性をありったけの情熱を注いで描いているドラマだからです。私が一緒に仕事をした作家の中でも、彼は突出して登場人物に思い入れのある監督でしたね」
デヴィッドは『宇宙戦争』(05)などでもスピルバーグと仕事をしているだけあって、尊敬の念が深いようだ。
原作者マイケル・クライトンへの思い
続いて本シリーズの原点である『ジュラシック・パーク』の原作小説を書いたマイケル・クライトンへの思いも尋ねてみた。
G「私が15歳の頃に原作が発表され、すぐに買って読んだんです。実を言うと映画は自分が空想していたものとちょっと違っていたんですが、それ自体は完璧でした。でもその時はこの映画のどこからどこまでがスティーヴンで、マイケル、デヴィッドが創作したものかわからなかったんですが、デヴィッドと今回一緒に働いて、なんとなくここがデヴィッドだとわかるようになりました(笑)。3人の意見が交わされて第1作ができたのだと思うけど、最初の発想はマイケルから生まれたものであることは間違いない。これは神からの贈りものだと思えるくらい素晴らしいものだと思いますね」
D「まず今回私がやったことは、マイケルの800ページもある原作に立ち返ることでした。これは本当に素晴らしい素材で、そこからまだ何か使えるものがあるかを探しました。もう一つこれをやった理由は、私が脚本を書いたシリーズ初期(1作目と2作目)の頃の感覚を振り返ってみたかったんです。あの時の気持ちや発想はどういうところから出て来たのかを思い出し、マイケルが見ていた視点、世界観を今度は自分なりの視点でスティーヴンやギャレスに伝えなくてはならなかったんです。ともかく恐竜とテーマパークというシンプルだけど天才的な発想はマイケルならではのものです」
クライトンは『ジュラシック・パーク』以外にも『ライジング・サン』などのベストセラー作家であり、『ウエスト・ワールド』(73)などで映画監督、『ツイスター』(96)などで脚本もこなし、ドラマ「ER/緊急救命室」などの製作者としても知られるが、08年に66歳で死去している。

デヴィッド・コープ
第1作の脚本で成功した時、30歳だったコープ
クライトンも早熟の天才だったが、デヴィッドも『ジュラシック・パーク』の公開時はまだ30歳になったばかり。その後も『ミッション:インポッシブル』(96)などでハリウッドきっての名脚本家になったが、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(98)以来、久々に「ジュラシック」シリーズにカムバックしての心構えをこう語ってくれた。
D「その頃から経験も積んだので、自分の目指すゴールにより早く着けるようにしたいとかいう気持ちはあるんですけど、それよりも常に品質の高いものを提供し、自分が映画館で観たいと思うものを作りたいという気持ちが強いです。私は今もニューヨークの68丁目とブロードウェイにある映画館にずっと通っていて、外で買って来たブリトーを食べながら観客がどんなふうに映画を楽しんでいるか観察するという鑑賞方法をずっと続けています。そんな風に、前より実力やスキルがついたとしても極力以前と変わらない方がいいのではないかと個人的には思うんです。幸い私は若いうちに成功しましたが、人生はアップダウンがあるもの。嫌な奴になってはいけないということもありますが、成功よりもつまづいた時にどうすべきかが重要です」
ちなみにデヴィッドは『シークレット ウインドウ』などで彼とコンビを組んだジョニー・デップと全く同じ誕生日で、彼が『ジュラシック・パーク』の脚本を書いたのはジョニーが『ギルバート・グレイプ』に出ていた頃だ。

ギャレス・エドワーズ
自分の映画にはある記録があるというエドワーズ監督
今度は監督にちょっとマニアックな質問をぶつけてみた。『復活の大地』でチタノサウルスのカップルが愛し合うシーンが出てくるが、そこが何となくギャレスのデビュー作『モンスターズ/地球外生命体』の最初にモンスターが出てくるシーンがやはり交尾するシーンだったことを彷彿させる。そこに本作が自分自身にとっても原点回帰になっているというニュアンスがあるのかと投げてみる。
G「(笑)これは元々脚本に、恐竜たちが求愛するというト書きが書いてあったシーンなんですが、どう表現するかはたしかに私の担当ですよね。自分では上手くいったかどうかわからないけれど、想像を搔き立てるという方法が良いと思ったんですよね。実は『GODZILLAゴジラ』の時もゴジラの敵になるムートー(巨大怪獣)の雄雌の求愛シーンがあったはずですが、自分では巨大生物の生殖シーンを描いた回数の記録を持つ監督だと思っています(笑)。もし誰かがこの記録を破ったら、さらに私が作るつもりです(笑)」
とちょっと変わった質問にユーモアで返してくれた。
最後に本作の続きはもう考えているかと聞いてみると「何か良いアイディアがないですか? そこから考えてみますよ」とデヴィッドに逆提案をされ、「アクイロプスを使うのはどうですか?」と答えてみると、「あのキュートなやつね。可愛いモンスターはゴジラの方でやっちゃってるからなあ」とギャレスの返答。「ジュラシック」シリーズ新章の続きがどう展開していくか期待される。