必見の6プログラム6作品を上映
本企画は、世界各地で開催されている無声映画祭と同様に、生演奏や弁士の説明を付けて無声映画を上映するもの。
今回は国立映画アーカイブとドイツキネマテークの共同復元プロジェクト(2018-20)によって鮮やかに甦った『除夜の悲劇』(1924)デジタル復元・最長版の国内初上映をはじめ、生誕150年を迎えたD・W・グリフィスの『大疑問』(1919)や、近年新たに収蔵した齋藤寅次郎の『明け行く空』(1929)など無声映画史上の傑作を揃え、6プログラム6作品を上映。
「除夜の悲劇」デジタル復元・最長版の国内初上映
登場人物のしぐさや表情の変化を丹念に捉えることで映像表現の可能性を追求した無字幕の「室内劇映画」である『除夜の悲劇』。当館が所蔵する最も完全に近い版(小宮登美次郎コレクション)を主素材として、欠落を他の複数のフィルム素材で補ったドイツキネマテークとの共同復元版を、国内で初めて上映する。11月26日(水)19:00の回はクラウス・プリングスハイムが封切り時に作曲したオリジナルスコアを再現・収録したDCPでの上映、11月30日(日)16:00の回はピアノ伴奏付での上映となる。
貴重な「明け行く空」のニュープリント上映
「喜劇の神様」として知られる齋藤寅次郎ですが、全盛期に製作された代表作の多くはフィルムが現存しておらず、現在ではその全体像を把握することがきわめて困難となっている。
本企画では、近年新たに当館が収蔵した『明け行く空』をニュープリントで上映。松竹蒲田の定番であった「母子もの」「少女もの」の一作であり、シリアスなトーンの作品ながら、随所に齋藤寅次郎らしいユーモアが垣間見える。またこの作品は、日本映画史における女性脚本家の先駆けであり、のちに児童文学作家となる水島あやめのやはり数少ない現存作品でもある。
多彩な顔ぶれの弁士・伴奏付上映、そして電子音楽×フィルム上映も注目
弁士・伴奏付上映には多彩な顔ぶれが勢揃い。『明け行く空』は佐々木亜希子氏の映画説明と永田雅代氏のピアノ伴奏、『大疑問』は柳下美恵氏、『除夜の悲劇』は長谷川慶岳氏、『ヴァリエテ』(1925)は上屋安由美氏、そして『月世界の女』(1929)は天池穂高氏のピアノ伴奏とともに楽しめる上映回を編成。
さらに、前衛、ドキュメンタリー、商業劇映画を自在に横断した映画作家ジャン・グレミヨンが孤島の燈台守として働く親子を描いた『燈台守』(1929)上映の伴奏には、エレクトロニック・アーティストとしても世界的評価の高い音楽家・Phew氏が当館初登壇。
燈台の幻想的な光や“水のシネアスト”とも呼ばれたグレミヨンによる荒れ狂う海の表現が堪能できる一篇と電子音楽の邂逅に期待したい。

『明け行く空』
上映作品 8プログラム6作品
1.『大疑問』(1919、米国、D・W・グリフィス)
♪伴奏付上映の回 11月29日(土)13:00 伴奏:柳下美恵
2.『除夜の悲劇[デジタル復元・最長版]』(1924、ドイツ、ルプ・ピック)
♪伴奏付上映の回 11月30日(日)16:00 伴奏:長谷川慶岳
3.『ヴァリエテ』(1925、ドイツ、エヴァルト・アンドレ・デュポン)
♪伴奏付上映の回 11月30日(日)13:00 伴奏:上屋安由美
4.『明け行く空』(1929、日本、齋藤寅次郎)
★弁士・伴奏付上映の回 11月28日(金)19:00 活動写真弁士:佐々木亜希子、伴奏:永田雅代
5.『燈台守』(1929、フランス、ジャン・グレミヨン)
♪伴奏付上映の回 11月29日(土)19:00 伴奏:Phew
6.『月世界の女』(1929、ドイツ、フリッツ・ラング)
♪伴奏付上映の回 11月27日(木)18:30 伴奏:天池穂高
企画名:サイレントシネマ・デイズ 2025 (英題:Silent Film Days 2025)
会期:2025年11月25日(火)-30日(日)
会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]
主催:国立映画アーカイブ
協力:株式会社 橋本ピアノ