それまでアニメーションと言えばすべて平面的という概念が一般的だった時代に、オールCGによる長編映画が誕生し、世界中の観客を驚かせたのが『トイ・ストーリー』第1作でした。もはやCGアニメーションが当たり前になった現代では考えられないことかもしれませんが、革命的な映像を生み出した名作の初公開から30年。あらためて当時の衝撃と今も愛され続けるおもちゃたちの世界観を振り返ってみましょう。また30周年を機に、様々なイベント開催や記念グッズの発売も。これらの情報もまとめてお伝えします。(文・横森文/デジタル編集・スクリーン編集部)

「トイ・ストーリー」について

世界初のフルデジタル長編アニメーションとして、1995年に公開され、ピクサー・アニメーション・スタジオの名を全世界に広めた記念すべき作品。人間の見ていないところで、おもちゃたちは表情豊かに語り、自由に動く、そんな想像力溢れる世界を、感動的なストーリーと共に贈り、世代を超えたファンに愛された。その後、現在までに長編映画は4作目まで公開され、さらなる新作も2026年公開予定。

米雑誌の「史上最高のアニメーション映画」で1位に輝いた名作

画像: ウッディ、バズらたくさんのキャラが今も愛されている(第1作)

ウッディ、バズらたくさんのキャラが今も愛されている(第1作)

95年11月22日。これが記念すべき『トイ・ストーリー』の全米公開の日。日本では96年3月23日に公開され、筆者もその前に試写で観てはいたけれど、公開初日に劇場に駆けつけた。それくらい面白かったからだ。

とにかく『トイ・ストーリー』には驚かされた。世界初のフルCGアニメーション作品という意味でもすごかったが、舞台をおもちゃの世界にしたことで、全く違和感なくCGでできたウッディやバズ、ポテトヘッド、レックスなどのキャラクターたちが逆にリアルに画面の中で生きていた。そんな彼らが見せるのは、おもちゃ同士の嫉妬や葛藤、友情、愛情という、並の人間ドラマよりも感情があふれる展開。さらにディズニーなど昔のアニメーションが大好きで研究してきた監督ジョン・ラセターの、過去のカートゥーンやディズニー長編アニメーションへの熱い愛情が感じられた。それらがスパークして、とんでもなく笑えて感動できるずば抜けて素晴らしい作品に昇華したのだ。

画像: それまで誰も見たこともなかった映像が展開した(第1作)

それまで誰も見たこともなかった映像が展開した(第1作)

『トイ・ストーリー』

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おかげで『トイ・ストーリー』はアメリカのTotal Film誌で行われた「史上最高のアニメーション映画50」にて第1位に輝き、あの評価が厳しいことで知られるレビュー集積サイト「Rotten Tomatoes」では支持率100%の映画の1本となった。

93年に公開された『ジュラシック・パーク』は、CGで映画に革命をもたらしたが、『トイ・ストーリー』も確実にアニメーションの世界を変えた。特にアメリカではその影響が顕著で、次々とCGアニメーションが作られるようになり、手書きアニメーションはその姿を消していくことに。アニメーターはコンピューターの中で絵を描くことが、当たり前になっていったのである。

画像: 1作目の大好評を受けピクサー初の続編映画となった『トイ・ストーリー2』

1作目の大好評を受けピクサー初の続編映画となった『トイ・ストーリー2』

『トイ・ストーリー2』

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おもちゃの世界が舞台だったこともあり、ウッディやバズの人形は、もうリアルに映画の中から飛び出してきたような気がして、買わずにはいられなかったし(映画同様に喋ったりするトーキング・バズは、全世界で900万体以上を売り上げたそう)、映画もリピーターが続出。全世界では約3億7300万ドルの興収をあげることになった。

そしてこの映画の成功は、ピクサーという製作会社を世界1位〜2位を争うCGアニメーションの製作会社に押し上げたのだ。

『トイ・ストーリー』誕生にはスティーヴ・ジョブズも投資していた

画像: 大人も泣けるアニメーションと評された『トイ・ストーリー3』

大人も泣けるアニメーションと評された『トイ・ストーリー3』

『トイ・ストーリー3』

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でも『トイ・ストーリー』は順風満帆で製作が進行したわけではない。そもそも『トイ・ストーリー』の原点となったのは、短編の『ティン・トイ』(88年)というブリキの人形と赤ちゃんの追っかけっこを描いたものだ。アカデミー賞の短編アニメーション賞を獲得した『ティン・トイ』は、その後に30分のテレビスペシャル『A Tin Toy Christmas』が作られる予定だったが(『トイ・ストーリー3』のロッツォ・ハグベアが登場していた)、テレビ局側から予算が出ず、企画は頓挫。そこでディズニー側からの交渉で映画として話が進み、『トイ・ストーリー』へと話が変更になっていったのだ。

しかもピクサーには資産がなく、当時はピクサーのCEOであったスティーヴ・ジョブズから5000万ドルにも及ぶ投資をしてもらい、どうにか『トイ・ストーリー』を作りあげることができた。結果、映画の成功はピクサーの株を高騰させ、その後も「トイ・ストーリー」シリーズを全部で4作品仕上げただけでなく、傑作を量産させることに繋がっていった。

『バグズ・ライフ』(98年)を筆頭に、『モンスターズ・インク』(01年)、『ファインディング・ニモ』(03年)、『Mr.インクレディブル』(04年)、『カーズ』(06年)、『レミーのおいしいレストラン』(07年)、『ウォーリー』(08年)、『カールじいさんの空飛ぶ家』(09年)……と、向かうところ敵なし! の勢いで連チャンしてヒット作を生み出し続けたのだ。

画像: ボー・ピープが20年ぶりに再登場した『トイ・ストーリー4』

ボー・ピープが20年ぶりに再登場した『トイ・ストーリー4』

『トイ・ストーリー4』

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こういったピクサーの急成長が、ディズニー・スタジオそのものを活性化させたし、後に「シュレック」シリーズや「ヒックとドラゴン」を生み出したドリームワークス・アニメーション・スタジオや、ミニオンなどの人気キャラを生み出したイルミネーション・スタジオなど、競争相手となったアニメーション・スタジオを生み出すキッカケになったのだ。かくして全スタジオがCGアニメーションがメインという、今の流れを発展させていったわけ。

そんな『トイ・ストーリー』から30年。技術が進化し、水や草木など自然を臨場感たっぷりに描けるようになったり、より動きなども滑らかになった中、ついに『トイ・ストーリー5』が2026年6月19日全米公開に向けて動き出している。今度の敵は子供用タブレットらしい。監督は『ファインディング・ニモ』のアンドリュー・スタントンとマッケナ・ハリス。はたしてどんなオモシロ作品に化けるのか、今から期待したい。

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