ジェイソン・チョウ(香港法廷弁護士、ニューヨーク州弁護士)にインタビュー!
本作は、香港の検事を主人公に据えた異色の法廷アクション。ドニーを取り巻くキャストには、「Mr.BOO!」シリーズのマイケル・ホイを筆頭に、『エグザイル/絆』のフランシス・ンや「イップ・マン」シリーズのケント・チェンなど、香港映画ファンにはおなじみのベテラン勢が集結。また『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のジャーマン・チョンなど旬の次世代キャストも参加。さらに、ドニーの実父であるクライスラー・イェンもサプライズ出演する。

香港の司法制度を熟知するジェイソン・チョウ氏(香港法廷弁護士。日本国内での外国法事務弁護士未登録)は、本作の裁判描写について「現実の手続きと完全に一致するわけではありませんが、舞台設定や法律事務所の描写には一定のリアリティを感じました。香港の司法制度を知る“入門編”としては良いと思います。ただし映画的な脚色もあるので、その点は理解して鑑賞するといいでしょう」と語る。
また、ドニー・イェン演じる検事像についても触れ、チョウ氏はこう説明する。 「現実の検事がドニー・イェンのように戦闘することはありません(笑)。ただ、香港では警察官や税関職員などが第二のキャリアとして弁護士や検事になることもあり、物語には一定のリアリティが反映されています」

本作は2016 年に香港で起きた麻薬密売冤罪事件をモチーフにしており、当時の社会に衝撃を与えた事件を背景にしている。チョウ氏は「とても有名な事件です。実際の事件名は“HKSAR v Ma Ka Kin(馬家健)[2021] HKCA 118”です。最終的に司法制度が機能し、香港の法の支配が依然として生きていることを示した事件です」と指摘する。また、香港大学の臨床法律教育チームが重要な役割を果たしたことも注目に値するという。
さらに香港裁判の際にかつら着用について、同氏は「香港の法曹制度はイギリス式を踏襲しており、ウィッグ(かつら)の着用は通常、バリスターと判事に限られ、すべての裁判で必要というわけではありません。現在のルールでは家事裁判所や非公開審理を除き、裁判所レベルが地裁以上であれば、バリスターはウィッグと黒いガウンを着用するのが通例です」と話し、さらに香港の法廷事情については「裁判は陪審制で量刑は裁判官が決め、証拠開示も全面的に行われます。判決文も公開されるため、過去の裁判例を誰でも確認できる点が日本との大きな違いです」と説明した。

Jason Cheung/張皓程(ジェイソン・チョウ)
香港法廷弁護士、ニューヨーク州弁護士(日本での外国法事務弁護士未登録)。
弁護士法人 淀屋橋・山上合同のフォーリンカウンセルです。国際商事仲裁およびクロスボーダー訴訟を専門とし、京都の同志社大学で国際法に関する非常勤講師も務めています。近年、日本の依頼者や弁護士から香港法に関するリーガルオピニオンを求められることが多く、特に日本とのクロスボーダー案件に携わっています。また、日本の裁判所を含む外国法域で使用される法律意見の提供にも従事しています。
<あらすじ>
香港警察の熱血警部から検事に転職した男・フォク(ドニー・イェン)。麻薬密売容疑である青年が起訴された担当事件に疑問を感じた彼は、独自に捜査を開始。やがて、法を悪用し利益を得ようとする法曹と裏社会の繋がりに気付くフォクだったが、その行く手を阻む刺客が忍び寄るのだった―
『プロセキューター』
2025年9月26日(金)全国ロードショー
監督・主演・製作:ドニー・イェン
出演:ジュリアン・チョン、フランシス・ン、 マイケル・ホイ、ジャーマン・チョン
2024年/香港・中国/広東語/カラー/117分/シネスコ/5.1ch/原題:《誤判》THE PROSECUTOR/字幕翻訳: 小木曽三希子
配給:ツイン TWIN
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