デジタル世界を唯一無二のヴィジュアルで描き出し、SF映画史に名を刻む「トロン」シリーズ。その最新作となる『トロン:アレス』では、なんと超高度AIプログラムが実体化して現実の世界へ。果たして、その目的とは!?(文・平沢薫/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:『トロン:アレス』より © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

イントロダクション

“最強兵士”として開発されたAI搭載の高度なコンピュータ・プログラムが、現実世界で実体化してしまったら、彼は人類に何をもたらすのか。それを描くのが、人気シリーズ最新作『トロン:アレス』。そのプログラムの名前が、ギリシャ神話の暴力と破壊を象徴する戦闘の神、アレスと同じであることが、不穏な気配を感じさせる。

これまでのシリーズは、第1作『トロン』(82)、続編『トロン:レガシー』(10)とも、人間がコンピュータ内部の世界を訪れたが、本作では、発想を逆転。コンピュータ世界の存在が、現実世界に侵入してくるという、新たな物語が描かれていく。

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主人公のAIプログラム“アレス”を演じるジャレッド・レトは、このシリーズの大ファンを公言し、自らプロデュースにも参加。前2作に出演したジェフ・ブリッジスが、本作に同じ役名で出演するのも気になるところだ。

監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』『マレフィセント2』と特殊効果映像満載の大作が続くヨアヒム・ローニング。音楽はトレント・レズナー率いるナイン・インチ・ネイルズが担当。レズナー同様、デヴィット・フィンチャー監督作の常連、ジェフ・クローネンウェスの撮影による硬質でクール映像が、このシリーズならではのスタイリッシュな世界を描き出す。

あらすじ

画像: あらすじ

コンピュータ・プログラムを現実世界で実体化することが可能になった世界。高度の戦闘能力と知能を持つ"究極の戦士"として開発されたAIプログラム、アレス(ジャレッド・レト)は、実業家デリンジャー(エヴァン・ピーターズ)により、軍事利用のため現実世界で実体化されるが、現実の中で自ら学習し、進化していく。果たしてアレスは人類の敵なのか、それとも味方なのか。

登場人物

画像: アレス(ジャレッド・レト)

アレス(ジャレッド・レト)

アレス(ジャレッド・レト)
"最強兵士"として開発されたAIプログラム。現実世界で実体化される。

画像: ジュリアン・デリンジャー(エヴァン・ピーターズ)

ジュリアン・デリンジャー(エヴァン・ピーターズ)

ジュリアン・デリンジャー(エヴァン・ピーターズ)
実業家。デリンジャーは、第1作の主人公の宿敵プログラマーの名前。

画像: イヴ(グレタ・リー)

イヴ(グレタ・リー)

イヴ(グレタ・リー)
AIの研究者でプログラマー。アレスと何か関係があるらしい。

画像: ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)

ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)

ケヴィン・フリン(ジェフ・ブリッジス)
第1作の主人公。第2作ではデジタル世界に登場し消滅したかと思われたが…。

みどころ

1)現実世界を反映し“AI”も題材に

第1作、第2作は、人間がデジタル世界に入って活躍したが、今回の第3作では方向が逆になり、デジタル世界のプログラムが、現実世界に侵入してくる。また、人工知能AIが実用化されつつある現実の状況を反映し、そのプログラムにはAIが搭載されている。AIの進化の先には何があるのか。リアルでスリリングなストーリーが展開。

2)スタイリッシュさも進化?!

第1作の未来感覚を継承しつつ進化させたデザインも、このシリーズの魅力。第1作でシド・ミードが手掛けた乗り物ライト・サイクルや、コミック作家メビウスが担当したコスチュームなどが、今回も進化して登場。第2作に続いて本作の美術を手がけるダレン・ギルフォードは、第1作への敬意と共にデザインしたと発言している。

これだけは覚えておきたい!「トロン」シリーズのキーワード

トロン
第1作の主人公フリンの友人が作ったセキュリティ・プログラム。フリンと一緒に悪のプログラムと戦った。

グリッド
第1作でフリンがコンピュータ内に作った世界の未開発の部分。別名デジタル・フロンティア。

アイデンティティ・ディスク
擬人化されたプログラムが、背中に装着しているディスク。そのプログラムの全データを記録。武器としても使う。

ライト・サイクル
プログラムが乗る大型バイク状の乗り物。走行で生じる帯状の光に接触すると、破壊される。

画像: ライト・サイクル

ライト・サイクル

レコグナイザー
デジタル空間を飛行するアーチ状の物体。元はフリンが作ったゲームの乗り物だが、空中から攻撃する戦闘兵器になった。

画像: レコグナイザー

レコグナイザー

COLUMN)『トロン』が与えた2つの大きな影響

『トロン』(82/現『トロン:オリジナル』)が与えた大きな影響は2つある。まず一つは、映画でのCG映像の使用。第1作は、映画史上初めて本格的にCGを使ったが、公開時のアカデミー賞では「CGを使うのは不正行為だ」として特殊効果賞にノミネートされなかった。その後、CG映像の使用は一般的になり、『ジュラシック・パーク』(93)のリアルな恐竜が生み出される。

もう1つ、デジタル空間を人間世界のように描く/プログラムを擬人化して描く、という斬新な発想はサイバーパンクと共通。人間の意識を情報空間に侵入させるウィリアム・ギブスンの短編小説「クローム襲撃」(82)などサイバーパンク小説や、そのギブスン原作の映画『JM』(95)、コンピュータ・プログラムを擬人化して描く『マトリックス』(99)やその類似作には、『トロン』との共通点が多い。世界中の様々な分野のクリエイターたちに大きな影響を与えたのだ。

画像1: 逆転の構図!〈デジタル〉が〈現実〉に浸食『トロン:アレス』
画像2: 逆転の構図!〈デジタル〉が〈現実〉に浸食『トロン:アレス』

『トロン:オリジナル』ディズニープラスで配信中 © 2025 Disney

『トロン:アレス』
2025年10月10日(金)公開
アメリカ/2025年/1時間59分/ウォルト・ディズニー・ジャパン配給
監督:ヨアヒム・ローニング
出演:ジャレッド・レト、グレタ・リー、ジェフ・ブリッジス、エヴァン・ピーターズ

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