21世紀ホラー映画の世界をリードしてきた「死霊館」シリーズのメイン・キャラクターとなるウォーレン夫妻は、実在した心霊研究家として知られ、調査に当たった怪異な体験の数々が映画化され、見る者を震え上がらせてきました。シリーズ・フィナーレとなる『最後の儀式』公開を前に、もう一度ウォーレン夫妻の映画化された恐怖の事件簿を振り返っておきましょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像『死霊館』より ©2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved

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大家族が引っ越してきた古い屋敷には恐るべき事実が隠されていた

『死霊館』(The Conjuring / 2013)

「死霊館」シリーズの第1作。1971年、仲睦まじい夫妻と5人の娘たちが新居にやってきたが、その古い屋敷では異常な出来事が頻発。妻キャロリンに謎の痣が出来たり、愛犬が急死したり、家中の時計が午前3時7分で一斉に止まってしまったり…。やがて末っ子が庭の巨木の下で古いオルゴールを見つけると、見えない友だちと話をするようになるなど、幼い娘たちにも危険が迫ったため、キャロリンが霊能力者として有名なウォーレン夫妻を訪ね、助けを求める。

ウォーレン夫妻がこの家を調査すると、一家が競売で手に入れた家は、19世紀半ばにジェドソン・シャーマンという人物が建てたものだったが、彼の妻が生まれたばかりの息子を悪魔の生贄に捧げようとしたのを見つかり、庭の巨木で首つり自殺したという。そして彼女が死んだのは午前3時7分だった…。ウォーレン夫妻はただならぬ霊の力を感じ取り、悪魔祓いの儀式を行う決意をするが、悪魔は猛烈な反撃を開始する。

実際の事件

基になったのは「ペロン一家事件」と呼ばれるもので、1971年に米ロードアイランドに7人家族のペロン氏が屋敷を購入したところ、入居の翌日から、異臭が漂うなど奇妙な現象が一家を襲うようになったというもの。映画では妻のキャロリンがウォーレン夫妻にすぐに調査を依頼しているようにみえるが、実際には数年たってから相談した模様。ペロン家は80年に引っ越したが、家は実在するため、映画化された後も観光客たちが訪れるという。

『死霊館』デジタル配信中
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史上最長のポルターガイスト現象とウォーレン夫妻の死闘

『死霊館 エンフィールド事件』(The Conjuring 2 / 2016)

ロンドン北部のエンフィールド、ホジソン家のシングルマザー、ペギーと4人の子供たちは、家の中で不思議な物音や、家具がいきなり動き出す現象に悩まされていた。見世物感覚でテレビ局が取材にやってくると11歳の次女ジャネットが自分を「ビル・ウィルキンス」とホジソン家がここにやって来る前の住人だった老人の名を名乗る。さらに家族以外の来訪者もこの家の怪現象を目撃するほど状況はエスカレートし、英教会はアメリカの有名な心霊研究家ウォーレン夫妻に調査を依頼する。だが夫妻はその前に携わった「アミティービル事件」によって世間からバッシングを受けたため意欲を失っていた。

それでも英国までやって来た夫妻だが、彼らの前に調査を始めていた超心理学者たちの間でも真偽の意見が分かれ、ポルターガイスト現象を目撃したロレインも霊の存在を感じることができない。一体ここでは何が起きているのか? やがてそれは超常現象史上、最悪の事例となる…。

実際の事件

シリーズ第2作のモデルとなったのは、1977年に英国ミドルセックスで起きた「エンフィールドのポルターガイスト」と呼ばれる事件。これは2年以上も続き、史上最長期間続いたポルターガイスト現象として知られる。母親と4人の子供が住む町営住宅で急に家具が動いたり、奇妙な音がするなど怪現象が起きるようになり、その総数は1500件に及ぶという。テープや写真などで記録され、目撃証言も多数という他に例のない心霊事件となった。

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悪魔に取り憑かれた状態の青年が犯した殺人事件は有罪なのか?

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』(The Conjuring: The Devil Made Me Do It / 2021)

1981年、エドとロレインのウォーレン夫妻はデヴィッドという少年に取り憑いた悪魔を祓う依頼を受けるが、エドがその最中に心臓疾患で倒れてしまった。そして悪魔はデヴィッドの姉のボーイフレンド、アーニーに乗り移ってしまう。病院で目覚めたエドはアーニーの身を案ずるが、アーニーは幻覚を見るようになり、自身の雇い主を刺し殺してしまったことで逮捕され、裁判にかけられることになる。アーニーは検察から死刑を求刑されるが、事情を知っているウォーレン夫妻は、「悪魔が行わせた殺人」として無罪を主張すると、判事から現実的な証拠の提出を求められるのだった。

元々悪魔が取り憑いていたデヴィッドのグラツェル家で証拠となりそうなものを探し出すことにしたウォーレン夫妻。すると家の床下から黒魔術の彫像を発見。夫妻は何者かが悪魔召喚の呪いをかけていることを察知し、地元の有名なオカルト研究家カストナー神父を尋ねるが、やがて事態は思わぬ展開を見せていく…。

実際の事件

米コネチカット州で1981年に実際に起きたこの事件は、造園業で働く19歳のアーニー・ジョンソンという青年が、雇い主の40歳の男性を何度もナイフで刺して殺してしまったというもの。だがアーニーは自分に憑依した悪魔が行わせた仕業として無罪を主張したことから全米が騒然となった。有名なこの事件は1983年に一度映像化されており、ケヴィン・ベーコンも出演。日本では『ブライアンの悪夢』というタイトルでビデオ発売されている。

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COLUMN 実際のウォーレン夫妻とは?

「死霊館」シリーズで主人公なるエド・ウォーレンとロレイン・ウォーレン夫妻はアメリカに実在した心霊研究家。エドは2006年に79歳で、ロレインは2019年に92歳で死去している。エドはカトリック教会が承認した唯一の非聖職者の悪魔研究家で、ロレインは透視、または霊視能力を持っている。

2人は1960年代からアメリカを中心とする数々の心霊事件の調査に関わって来た。70年代にはアミティービル事件など後に映画化された怪事件調査にも携わっている。全米でも有名な心霊研究家であるが、プライベートに関してはあまり知られていない。夫妻には「死霊館」シリーズにも登場する娘ジュディ・スペラ(トニー・スペラと結婚)がおり、彼女は父の思い出として家の中に呪われた品々を集めて保管した一室があったことを記憶しており、「アナベル人形と目を合わせるな」と言われたことを覚えているという。

またロレインを演じたヴェラ・ファーミガは実際のロレインと会ったことがあり、「私にはエドとロレインが絶妙なパートナーシップを築いていることがわかりました」と語っている。「彼女は自らの特殊能力を神からの賜物であると信じていました。そしてこの力を使わなければ、神はそれを奪ってしまうだろう」ということも得心したという。夫妻はとても大きくユニークな愛情と敬意を互いに抱いていたようだ。

画像: 実際のウォーレン夫妻 Photo by Getty Images

実際のウォーレン夫妻
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