“僕自身も生き様や性格が絵に表れているような気がします”
髙橋海人 プロフィール
1999年4月3日生まれ。神奈川県出身。2018年にKing & PrinceとしてCDデビューを果たし、俳優としてもさまざまな作品で活躍中。近年の主な出演作はドラマ「わが家は楽し」(25)、「DOPE 麻薬取締部特捜課」(25)。待機作に映画『君の顔では泣けない』(2025年11月14日公開)がある。
──本作のオファーをいただいた時の心境からお聞かせいただけますか。
「幼い頃は母親と何気なく時代劇を観ていましたが、俳優のお仕事をするようになってからは“時代劇が持つ独特の世界観はどのように作られているんだろう?”と興味を持っていたので、今回お話をいただけてすごくうれしかったです。日本を代表する浮世絵師であり、今や日本のパスポートの査証ページに代表作『富嶽三十六景』が使われている北斎と、娘の応為を描いた作品に呼んでいただいたことは、絵を描くのが好きな自分にとって奇跡のようなご縁だなと思いました」
──最初に台本を読まれたときはどんな感想を持ちましたか?
「応為の視点で北斎や善次郎が描かれているところがおもしろかったですし、生きることと絵を描くことが混在した生活を送っている応為と北斎の姿にも魅力を感じました」
──髙橋さんは英泉の絵をご覧になってどんなことを感じましたか?
「英泉は美人画や春画を得意とする絵師なので、生々しいものを美しく描く才能に長けている人なんだと思いました。北斎の絵には波の上を鳥が飛んでいるような少しファンタジックなものもありますが、英泉の絵は自分が見たものをリアルに描いているように感じて、その背景をいろいろと想像することもありましたね。応為と北斎とは違い、善次郎は家族を養うことと自分が生きるために絵を描いていたところがあるので、そういった環境が自身の絵にも影響を与えていたのかなと思いました」
──ちなみに髙橋さんはご自身の絵を客観的に捉えてみてどんな特徴があると思いますか?
「僕自身も生き様や性格が絵に表れているような気がします。ファンタジーでポップな絵になるのはそういうことなのかなと(笑)」
──役作りのために浮世絵の特訓も受けられたそうですが、挑戦してみていかがでしたか?
「普段アクリル絵を描く時は筆を使うのですが、浮世絵の特訓では毛筆だったので新鮮でした。毛筆なんて習字を書いた時以来ですから(笑)。練習していく中で気付いたのが、カーブ一つ描くにしても筆圧によって印象が変わるということ。筆に自分の感情や魂を乗せて描いていくので、それが如実に線に現れるのがおもしろかったですし、細い筆で細かく描く練習からは学びもたくさんありましたね」
──本作での経験が、その後の髙橋さんの絵や創作意欲に影響を与えることもあったのでは?
「たくさんありますが、北斎の『富嶽三十六景』です。どの作品も構図や配置のセンスが本当に素晴らしいと思います。見たままを描くのもいいけれど、北斎のように構図を考えながら自分なりの遊びを入れるのもおもしろいなぁって、とても影響を受けました。どこに木を置いてどこに人々を置いてどこに富士山を描くか、そういうのを考えるだけでもワクワクするし、前よりも“楽しみながら描く”という意識が高まったように思います」
※全文はSCREEN2025年11月号に掲載
『おーい、応為』

北斎の娘お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。描きかけの絵が散乱したボロボロの長屋で始まった二人暮らしだが、やがて父親譲りの才能を発揮していくお栄は、北斎から「葛飾応為」という名を授かり、一人の浮世絵師として時代を駆け抜けていくのだった。

善次郎(=渓斎英泉)(髙橋海人)
北斎の門弟であり応為の良き理解者。若くして両親を亡くし、家族を養う為に職業として絵師に。美人画を得意とする人気絵師として活躍。
『おーい、応為』
2025年10月17日(金)公開
日本/2時間2分/東京テアトル、ヨアケ配給
監督・脚本/大森立嗣
出演/長澤まさみ、髙橋海人、大谷亮平、篠井英介、奥野瑛太、寺島しのぶ、永瀬正敏
©2025「おーい、応為」製作委員会