来る10月7日は、世界初のミステリー小説とも言われる「モルグ街の殺人」の著者エドガー・アラン・ポーが亡くなったことから「ミステリー記念日」とされています。夜も長くなり“ミステリーの季節”ともいえる今、謎解きの世界に浸りたいという方も多いのでは。そこで今回は、映画・ドラマからミステリーの世界へ誘ってくれる数々のキャラクターたちをご紹介。あなたは誰と一緒に事件に挑みますか?(文・田中雄二/デジタル編集・スクリーン編集部)

2000’s 多層的な体験を提供するミステリーが増加

2000年代以降のミステリー映画は、古典的な探偵劇を踏襲しながらも、心理サスペンス、社会問題、科学捜査といった多様なテーマを持った作品が増加した。その結果、観客は従来の謎解きの楽しみに加え、深層心理や社会的な背景をも考慮した多層的な体験を享受できるようになった。

画像2: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

歴史や美術に秘められた“暗号(コード)”を読み解く

⬛︎ ロバート・ラングドン from「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ(Cast:トム・ハンクス)

ダン・ブラウン原作の「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズでトム・ハンクスが演じたハーバード大学の宗教象徴学教授。博識で冷静沈着、歴史や美術に隠された暗号を解き明かす達人。勇気と機転を兼ね備え、知の力で陰謀に挑む。

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『ダ・ヴィンチ・コード』

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権利元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
発売・販売元:ハピネット・メディアマーケティング

© 2006 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

まず、ダン・ブラウン原作・ロン・ハワード監督の『ダ・ヴィンチ・コード』(06)は、古代の暗号や宗教的な謎を巡る知的推理とアクションの融合によって、世界的なヒットを記録した。続編の『天使と悪魔』(09)では、教皇選挙を巡る陰謀と暗号解読を軸に、歴史の謎や宗教組織の暗部をストーリーに取り込み、古典的な探偵物の構造を現代的な視点から再構築してみせた。

2010’s・20’s 複合的な要素を飲み込みミステリーの歴史はまだ続く

さらに、社会的な視点を伴うミステリーも広がりを見せた。『ドラゴン・タトゥーの女』(11)は、犯罪・社会問題・人間心理を複合させたサイコロジカル・スリラー。女性探偵リスベット・サランデルの鋭い観察力と論理的な推理は、男性中心だった従来の探偵物の常識を覆し、暴力や権力構造への批評性を帯びた現代的なミステリー像を提示した。

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背に龍を宿す天才ハッカー

⬛︎ リスベット・サランデル from『ドラゴン・タトゥーの女』(Cast:ルーニー・マーラ)

スティーグ・ラーソン原作の「ミレニアム」シリーズのキャラクター。『ドラゴン・タトゥーの女』(11) ではルーニー・マーラが演じた。フリーの調査員で、対象の秘密を暴く能力に長け、ハッキング能力にも優れている。

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『ドラゴン・タトゥーの女』

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デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーン・ガール』(14)は、結婚生活の崩壊とメディア操作をテーマにした心理サスペンス。妻の失踪事件を巡る主人公夫婦の駆け引きとメディアの影響力が描かれ、夫婦が持つ二面性の描写は、現代社会における人間関係の複雑さを浮き彫りにした。

エメラルド・フェネル監督の『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)は、性暴力事件で親友を失った主人公が、事件に関わった男性たちへの復讐を誓い、彼らを欺きながら裁きを下していくさまを描いた復讐劇だ。

画像6: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

頭脳派かつ武闘派なシャーロック

⬛︎ シャーロック・ホームズ from「シャーロック・ホームズ」シリーズ(Cast:ロバート・ダウニーJr.)

「シャーロック・ホームズ」シリーズでロバート・ダウニーJr.が演じた、アーサー・コナン・ドイル原作の名探偵。鋭い観察眼と論理力で真相究明に当たる。戦術的思考と行動力で謎に挑む現代的なホームズ像を構築した。

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『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』

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権利元:ワーナー ブラザース ジャパン

© 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

一方、古典的な探偵物や伝統的な推理ドラマに新たな視点や映像処理を導入する試みも見られる。ロバート・ダウニーJr.主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズは、クラシックな探偵像を現代的なテンポとアクションでリニューアル。論理的な推理とダイナミックな映像演出を組み合わせることで、観客はホームズの観察と推理を追体験しながら事件を解決していく楽しみを味わった。

「エノーラ・ホームズの事件簿」シリーズでは、シャーロック・ホームズの妹である若き探偵が、女性故に受ける制約を跳ねのけて、持ち前の観察力と推理力を駆使して事件を解決する様子が描かれた。

画像8: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

ホームズ家の末娘!おてんば少女探偵

⬛︎ エノーラ・ホームズ from「エノーラ・ホームズの事件簿」シリーズ(Cast:ミリー・ボビー・ブラウン)

「エノーラ・ホームズの事件簿」シリーズでミリー・ボビー・ブラウンが演じた、名探偵シャーロック・ホームズの妹。兄譲りの鋭い観察眼と推理力を持つ。兄とは異なる方法で謎を解き、ユーモアと勇気で事件に立ち向かう。

*写真は『2』より
Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿2』独占配信中

1970年代のロサンゼルスを舞台に、ホアキン・フェニックス演じるヒッピー探偵が、元恋人の依頼を受けたことから思わぬ陰謀に巻き込まれていく姿を描いたポール・トーマス・アンダーソン監督の『インヒアレント・ヴァイス』(14)は、古典的なフィルムノワールと70年代のニューシネマの雰囲気を混合したような摩訶不思議な世界を現出させた。

画像9: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

混沌の70年代を彷徨うヒッピー探偵

⬛︎ ラリー・“ドック”・スポーテッロ from『インヒアレント・ヴァイス』(Cast:ホアキン・フェニックス)

トマス・ピンチョン原作の『インヒアレント・ヴァイス』(14)でホアキン・フェニックスが演じた70年代風のオフビートな私立探偵。麻薬や混沌に囲まれながらも鋭い洞察力を発揮し、複雑な事件を解決に導いた。

画像10: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

『インヒアレント・ヴァイス』

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権利元:ワーナー ブラザース ジャパン

© 2014 Warner Bros. Entertainment Inc.,Interactivecorp Films, LLC and RatPac-Dune Entertainment LLC.

ダニエル・クレイグ演じる紳士探偵ブノワ・ブランが難解な殺人事件の謎を解くライアン・ジョンソン監督の「ナイブズ・アウト」シリーズは、クラシカルな謎解きを用いながらも、現代の複雑な人間関係を描いたミステリーとして高評価を得た。

画像11: 【ミステリーの季節に誘う、映画・ドラマの謎解きの名手たち】謎解きの名手と辿るミステリー映画の歴史

ユーモアと鋭さを兼ね備えた名探偵

⬛︎ ブノワ・ブラン from「ナイブズ・アウト」シリーズ (Cast:ダニエル・クレイグ)

「ナイブズ・アウト」シリーズでダニエル・クレイグが演じた風変わりな探偵。軽妙なユーモアと直感力を駆使し、複雑な家族や権力の陰謀を解明した。監督・脚本のライアン・ジョンソンによるオリジナルキャラクター。

CHECK:12月に配信される「ナイブズ・アウト」シリーズ第三弾『ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン』でブランは、教会を舞台にこれまで以上に難解な事件に挑むことに。ジョシュ・オコナー、ケイリー・スピーニー、ジョシュ・ブローリン、ジェレミー・レナー、そしてグレン・クローズなど豪華ゲスト陣が演じる面々との掛け合いも楽しみ!

Netflix 映画『ナイブズ・アウト: ウェイク・アップ・デッドマン』12月12日(金)より世界独占配信

エドワード・ベルガー監督の『教皇選挙』(24)は、キリスト教会における権力構造と陰謀を題材に、伝統的な推理ドラマの枠組みを社会的な問題と絡めて今の時代を反映させた。

こうした多様な流れの中で、デジタル時代に即した作品も登場した。アニーシュ・チャガンティ監督の『search/サーチ』(18)は、女子高生の行方不明事件をSNSやオンライン情報を手掛かりに推理する形で描き、全編がPC画面の映像で展開する斬新な手法も話題となった。

21世紀のミステリー映画は、古典的な推理劇を現代風にアレンジしたものに加えて、心理サスペンス、社会問題、科学的な分析、デジタル時代の到来などのテーマを柔軟に取り入れ、多層的な表現を手に入れた。こうしてミステリー映画は、単なる謎解き娯楽の域を超え、さまざまな要素を統合したジャンルへと発展したのだ。

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