大事にしたのは、自分が感じたことに忠実であること
——いくつかを除けば、死亡シーンはとてもオーバーに描かれます。残虐なのにどこか笑ってしまうような。このようなスタイルになったきっかけは?
「作品のテーマは “人は誰もが死に、それは逃れられない”というダークなものです。だからこそ、少しコミカルにするのがベストだと思ったんです。受け入れ難いシュールな不条理は、不条理に描くのがいいんじゃないかと。それにダウナーな感じではなく、アッパーなものにしたかったんです。重たい、痛ましい、ではなく、軽やかな感じにね」

オズグッド・パーキンス監督
——映画は原作から様々な点でアレンジがされています。ここはブレずに描きたいと思った点は?
「スティーヴン・キングの原作を読んだときに、どう感じたか。自分が感じたことに忠実であることを大切にしました。自分の色で語ることは大事だと思っています。例えば、誰かがビートルズのカバーをするとして、本人たちそっくりに歌っていたら『なぜ、わざわざそんなことを?』って僕は思ってしまう。僕は、内側から湧いてきて何かをもって、自分に正直に、自分独自のテイストをもって描きたいんです。
スティーヴン・キングのような偉大な作家の作品を脚色できるのは、当然大きな喜びです。でも、どんな傑作も、それを受け取った人が、その作品の中に自分を見出すことができると思っています。今回、この映画がこういうトーンになったのは、人を怖がらせることよりも、“遊び心を持つ”、これが正解だと僕が思ったからなんです」
——原作では猿が持つのはシンバルです。権利上の問題でドラムになったそうでが、別の楽器にしなかった理由は?
「ドラムなら、いい具合にドラマを運んでくれると思いました。いいギミックになるんですよ。これから何かが始まる“ドラムロール”にも、『はい、笑う所ですよ』というジョークの合図“リムショット”にもなる。それにドラムにはロックンロールのイメージもあります。ロックはホラーやスティーヴン・キングものにぴったりじゃないですか」

——猿がドラムを叩く前にバチを回すのは、時計を進めているようにも思えたり、ルーレットのようにも思えたりと、とても素晴らしい動きでした。アイデアはどこから?
「確かにそんな意味付けもできるかもしれないですね(笑)。着想はモトリー・クルーのトミー・リーから得ました。実際にあんな感じでバチを回してから叩き出します。インスピレーション元は彼なんです」