彼(ベネディクト)の言葉を借りるならば、彼は素晴らしい“ダンスパートナー”でしたーーオリヴィア・コールマン(アイビー・ローズ役)

──あなたが演じたアイビー・ローズとは誰ですか?そして、彼女と夫のテオとの関係をどのように描きますか?
「アイビー・ローズは最高です。彼女はシェフであり、ユーモアを持ち、良い友達がいて、情熱的で愛情深く、良い母親です。アイビーとテオが出会った時、それは爆発的なものでした。30秒で、彼女が働いているレストランの冷蔵室で関係が始まり、その後も長く情熱的で喜びに満ちた楽しい関係が続いていたの。でも、子供を授かった後、全てが少し狂い始めてしまう。
子どものせいではないけれど、アイビーは当初、育児を担い、その結果、彼女は本当に才能のあるシェフだったけれど、キャリアは後回しになっていく。アイビーとテオはそれぞれ自分の分野で素晴らしい才能を持っているけれど、キャリアと家庭生活のバランスを見つけるのは難しいものですね。もしもベビーシッターを雇っていたら、この映画はもっと短いものになっていたでしょうね」
──アイビーとテオのキャリアはその後、全く異なる方向へ進みます。なぜそのようなことが起こったのでしょうか?
「テオは設計士で、彼が設計した建物が崩壊し、彼は建築界で不遇の立場に追いやられてしまい、アイビーがテオの役割を継ぐことになります。彼女は自分の仕事に非常に長けているので、家族の危機を救い、多くの収入を得ることとなったと同時に、そのせいで子供たちとの時間を多く失ってしまいます。
テオが子供たちの面倒を見ることとなり、それが嫉妬の種となっていくんです。そのため、アイビーとテオとも彼女の成功に対して、それぞれ異なる形で不満を抱えるようになります。
やがて事態は手に負えなくなり、彼らは争いに没頭するあまり、互いを愛する気持ちを忘れてしまったことに気付くんです。
もし彼らが互いに耳を傾けることができれば、すべての問題を切り抜ける道筋を立てられたかもしれないですね。残念ながら、彼らにはできなかったようだけれど。最初は、彼らの“違い”が互いを引き付ける要因だったけれど、やがてその違いが最も互いを苛立たせる要因になってしまったんです」
──アイビーとテオは親としてどのような人物でしょうか?
「アイビーとテオの育児スタイルは大きく異なります。アイビーの育児はより行き当たりばったり。彼女はお菓子作りが大好きで、子供たちに大量の砂糖を与えるため、子供たちは少し興奮して吐き気を催すほどです。
これはあまり良いことではないですね。対して、テオははるかに厳格で、彼らをアスリートに育て上げていく。なぜなら、彼はもう建物を建てられなくなり、彼は自分の子供を“建てる”(育てる)ことを決意したから。どちらもかなり極端ですね。彼女はルールが一切ない点で極端であり、彼は運動に極端なほど熱心。私はアイビーのほうが好きです」

画像は『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』より
──ベネディクトは、あなたがこの作品で素晴らしい“ダンスパートナー”だったと言っています。あなたも彼に対して同じように感じていますか?
「もちろんです。彼は素晴らしいわ。私たちはこれまで一緒に仕事をしたことはなかったけれど、何年も前から知り合いなんです。 初めて会ったのは、パーティーや共通の友人の誕生日パーティーだったと思います。ああ、あと2021年の『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』で1日だけ出演したけれど、そのシーンはカットされてしまったんです。おそらく正当な理由があったのでしょうね。
彼の言葉を借りるならば、彼は素晴らしい“ダンスパートナー”でした。彼の作り笑いは、私が聞いた中で一番上手いのよ。感情的なシーンで彼の目を見ていると、もう“バン!”って感じで、すべてがそこにあるんです。彼は私をたくさん笑わせてくれたわ。彼はオナラをネタにしたジョークをたくさん持っていて、それが毎回私のツボに入りました」
──ジェイ・ローチ監督が、この物語の監督として最適な人物である理由はどこにあるのでしょうか?
「ジェイは最も優しい男性で、素晴らしい監督です。彼が監督するスタイルが大好きです。彼は『気に入らない』とは言わず、代わりに『どう思う?』と聞いてくれます。彼は違うことを求めているのだけれど、それを直接言いません。本当に親切で、誰でも同じように尊重し、優しさで接してくれます。それは本当に美しいことですよね。彼は優しく、愛に満ちていて、輝いている、極めてまれな人です」
──ディナーパーティーのシーンでは、あなたとベネディクトを含むほとんどのキャストが一緒にいます。本作のキャスト陣はいかがでしたか?
「夢のようでした。アメリカ人キャストが多くて、皆がアメリカにいたため、Zoomで読み合わせをしたの。アンディ・サムバーグ、ケイト・マッキノン、ゾーイ・チャオ、ジェイミー・デメトリウ、スニータ・マニ、チュティ・ガトゥ。これらの顔ぶれが次から次へとZoomに現れてきて。
本当に信じられないほど素晴らしい人たちばかりです。こんな顔ぶれが揃うなんて信じられなかったけれど、こんなにたくさんの人が集まってくれて、本当に楽しい時間を過ごせました。撮影期間中、私たちは同じホテルに泊まっていて、毎晩一緒に夕食を食べて、女性たちはみんなノーフォークまで来て滞在してくれました。
みんなで良い時間を過ごせて、ビーチを散歩し、美味しい食事を楽しみ、本当に仲良くなれました。この人たちは一生の友達になるような気がします。仕事ごとに、たいていは一人くらい親しい友人として残る人がいるものだけれど、この現場では、何人もそういう仲間ができました」
──本作の脚本は、あなたが『女王陛下のお気に入り』で共演し、その作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞したトニー・マクナマラが執筆しました。彼のこの脚本のどういった部分が際立っていますか?
「トニーは本当に素晴らしいです。彼が書くものはすべて大好きだし、全部読みますし、いつでも、全部喜んでやります。彼の人間性にも惹かれます。
彼とはただ一緒に座っていたいような人で、彼は本当に“人が悪いことをする様子”を書くのが抜群に上手いんです。彼はドライでアナーキーな一面を持っていて、食べ物が大好きなんです。この作品でもその“食”への愛情が随所に表れていますし、建築へのこだわりもあります。
この作品は本当に笑えますが、その中に深い感情の核もしっかりとある。彼は本物の笑いを生み出すのが上手すぎて、そこに激しい感情が込められていることを忘れてしまいます。彼はそれを散りばめ、心を打ち砕くんです」
オリヴィア・コールマン プロフィール
1974年1月30日、英・ノリッジ生まれ。コメディ番組「ピープ・ショー ボクたち妄想族」(03~15)で人気を集め、スパイドラマ「ナイト・マネジャー」(16)でゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞。ヨルゴス・ランティモス監督と『ロブスター』(15)ぶりにタッグを組んだ『女王陛下のお気に入り』(18)では第91回アカデミー賞で主演女優賞を受賞。「ザ・クラウン」シーズン3&4(19~20)では英エリザベス2世を演じ、大きな注目を集めた。
『ローズ家〜崖っぷちの夫婦〜』
10月24日(金)より公開
監督:ジェイ・ローチ
出演:オリヴィア・コールマン、ベネディクト・カンバーバッチ、アンディ・サムバーグ、ケイト・マッキノン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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