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ウディ・アレンとの一連のコンビ作でユニークな才能を発揮
2025年10月11日、ダイアン・キートンが亡くなったというニュースが多くの映画ファンを驚かせた。今年の初めに日本公開された新作コメディ『アーサーズ・ウィスキー』でいつもの元気な笑顔を見せてくれたばかり。遺族によると彼女は最期の数か月をカリフォルニアの自宅で親しい家族にのみ囲まれて過したそうで、急激に健康状態が悪化し、死因は肺炎だったという。享年79。
ダイアンは60年代半ばにニューヨークにやってきて、ネイバーフッド・プレイハウスで演技を学び、ブロードウェイでミュージカル「ヘアー」に出演した。69年に同じくブロードウェイの舞台「Play It Again, Sam」に出演。ダイアンはトニー賞候補にもなった。この脚本を書き共演者でもあったのがウディ・アレン。この作品をきっかけに2人は恋人同士になり、72年に製作された本作の映画版『ボギー!俺も男だ』でもアレンとダイアンが共演した。その頃『ゴッドファーザー』にも出演していたダイアンはこちらの共演者アル・パチーノともオンとオフを繰り返しながら交際していたことがある。クレバーで楽しい彼女の個性は数々のロマンスを産んでいる。
アレンとは恋人関係終了後も『スリーパー』『愛と死』(日本未公開)と彼の監督作で共演が続き、77年に登場したのが『アニー・ホール』。タイトルでもあるヒロインの名前はダイアンの本名ホールと、ニックネームのアニーから取られており、アニー・ホール=ダイアン・キートンその人と言えそうだ。アカデミー賞作品賞に輝く本作で、アレンは監督賞、ダイアンは主演女優賞に輝き、一躍時の人になった。同年にダイアンはシリアスな『ミスター・グッドバーを探して』の演技も絶賛され、ユニークな演技派女優として人気爆発。元恋人アレンとのコンビはさらに『インテリア』『マンハッタン』と続く。アレン映画のミューズは数々いるが、元祖はダイアンで、その後の『ラジオ・デイズ』『マンハッタン殺人ミステリー』も含め、やはりアレン監督作の唯一無二のミューズはダイアンなのだとあらためて確信させられる。
『アニー・ホール』でウディ・アレンと
『ゴッドファーザー』でアル・パチーノと
アレンも彼女を追悼しており「私はダイアン一人のために映画を作っていたともいえるだろう。他者の批評は一切読まずに、彼女の意見だけを気にしていたから」と振り返り「いま彼女がいなくなってこの世界は少し寂しくなった。でも彼女の映画がある。そして彼女の笑い声は今も頭の中でこだましている」とフリー・プレスに寄稿している。
大物俳優たちとの共演作で独自の個性を光らせる
81年にはアレンと別れた後に交際を始めたウォーレン・ビーティが監督し、彼と共演も果たした『レッズ』で再びアカデミー賞主演女優賞候補に。この作品を始め80年代はシリアスな作品への出演が多かったが、ヒットしたのはやはりコメディの『赤ちゃんはトップレディがお好き』だった。『ゴッドファーザーPARTⅢ』を挟んで、続く『花嫁のパパ』もヒット。ダイアンとコメディの相性の良さを印象付けた。メリル・ストリープ、レオナルド・ディカプリオと共演した『マイ・ルーム』のようなアンハッピーな作品も、彼女が出演するとほのかに灯りがともるような印象に変わった。メグ・ライアンらと共演した『電話で抱きしめて』では監督にも挑戦している。
21世紀以降も、ジャック・ニコルソン、キアヌ・リーヴスと共演のロマコメ『恋愛適齢期』、ハリソン・フォード共演の『恋とニュースのつくり方』、ロバート・デ・ニーロ共演の『グリフィン家のウエディングノート』、モーガン・フリーマン共演の『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』など大物アクターとの共演で彼らと渡り合う存在感を発揮。かといって自分一人が目立つこともなく、共演者を立てながら自身も光るという稀な才能はハリウッド屈指のものだった。
ロマンスは華やかだったが結婚は一度もなし。50代になって2人の養子を迎えた。遺族は「彼女は動物をこよなく愛し、家のない人々への支援をずっと続けてきました。動物保護施設やフードバンクへ支援をいただければこれ以上ない彼女への追悼になるでしょう」とメッセージを公表している。
『レッズ』でウォーレン・ビーティと
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