カリギュラの狂気を捉えたポスタービジュアル
1976年、ペントハウス誌の創設者ボブ・グッチョーネは、映画史上最高額の製作費を投じて“自主製作映画”『カリギュラ』を企画した。セックスとアートを融合させ、史上最も退廃的とされる皇帝カリギュラを描く歴史大作として、脚本にゴア・ヴィダル、監督にティント・ブラスを起用。
さらに、『時計じかけのオレンジ』のマルコム・マクダウェル、後に『クィーン』でアカデミー主演女優賞を受賞することになるヘレン・ミレン、『アラビアのロレンス』のピーター・オトゥールら英国の大物俳優が参加し、公開前から大きな期待を集めていた。
しかし、製作中に様々なトラブルに見舞われることに。完成時には製作費は2倍に膨れ上がり、脚本家やスタッフらが訴訟を起こす事態に発展。撮影完了後には、監督は解雇され、編集と音楽の担当はクレジットを拒否した。トラブルを経て、1980年にようやく公開された『カリギュラ』は、観客だけでなくキャストにも衝撃を与える。
グッチョーネが勝手にポルノシーンを付け加えていたり、勝手に脚本を書き換えたものが公開されてしまったからだ。批評家からは“価値のないゴミ”や“倫理的ホロコースト”と酷評され、フィルムは警察に押収され、わいせつ罪にも問われた。しかし公開時に異例の興行収入を記録し、今でも世界的に高い人気を誇っている。
そしてそれから45年。破棄されたと思われていたフィルムが奇跡的に発見され、90時間以上の素材を再編集版として当時と全く異なる姿で公開されることとなった。
ポスタービジュアルには、マルコム・マクダウェル演じる若き皇帝カリギュラが、観る者の心の奥底まで射抜くような鋭い眼光をこちらへ向け、狂気の視線が迫りくる圧倒的な迫力を放っている。背後を染め上げる深紅の背景は、血塗られた歴史と絶対的権力を象徴するかのように重々しく広がり、その中央で睨むカリギュラの燃え上がる欲望を秘めた表情は、まさに『究極版』の名にふさわしい圧巻のデザインとなっている。

さらに、一挙解禁された4点の場面写真からは、ローマ帝国の華やかさと腐敗、そしてその奥に潜む狂気の空気がより濃密に伝わってくる。若き日のヘレン・ミレンが妖艶に演じる皇妃カエソニアは、煌びやかな装飾で登場し、皇帝と心を通わせる存在としての魅力を存分にはなっている。一方、ピーター・オトゥール演じる前皇帝ティベリウスは、病に侵されながらも、支配者としての威厳を失わぬまなざしをこちらに向け、老帝の狂気と執念が鮮烈に焼きつく一枚となっている。

また、カリギュラとカエソニアがベッドの上で密やかに語り合う親密な一幕や、豪奢な衣装に身を包んだカリギュラが狂乱の宴のさなか、家臣から何かを受け取るカットなど、本作の魅力が詰まった場面写真。いずれの写真もローマ帝国の光と影、そして底なしの狂気を克明に切り取り、観る者を一瞬にして混沌の世界へと誘う強烈なインパクトを放つ。


『カリギュラ 究極版』
2026年1月23日(金)より新宿武蔵野館、TOHOシネマズ シャンテ、
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:シンカ
© 1979, 2023 PENTHOUSE FILMS INTERNATIONAL

