東京で暮らす孤独で落ちぶれた俳優が、“アメリカ人男性”として日本の「レンタル・ファミリー」会社に雇われ、他人の人生の誰かの身代わりを演じる過程で、人との繋がりや自らが家族の一員として受け入れられる喜びを思いがけず再発見していく。『レンタル・ファミリー』は『ザ・ホエール』で第95回アカデミー主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーが主演を務めるヒューマンドラマである。メガホンをとった日本人のHIKARI監督にインタビューを敢行。作品に対する思いやキャスティング、演出、映像へのこだわりについて語ってもらった。(取材・文/ほりきみき)

さらに大きな作品に挑戦したい!

──撮影監督の石坂拓郎さんは、監督の色彩へのこだわりに驚かれたそうですね。

映画は総合芸術です。一枚の絵として構図や色をどう配置するかで、観客の感情をどこまで動かせるかが違ってきます。ですから、構図や色にはかなりこだわります。もともと油絵を描いていて、大学ではコスチュームデザインも学びました。

この作品はブルートーンで始まり、次第に温かい色へと変化をつけています。観客は無意識にその変化に影響される。カラーグレーディングでは青の抜け方までこだわりました。

──ロケーション選びも徹底されたと聞きました。

日本に来て、実際に各地を回ってロケハンしました。ストライキでキャスティング作業が止まっていた時期があったので、その時間を利用したのです。

フィリップが海賊姿で出ているCMがタブレットに映し出されるシーンでは、バックの海賊船として、廃船寸前の遊覧船を探してもらって使いました。チラッとしか見えませんが、制作費に余裕のないCMというリアルな質感が欲しかったのです。

構図と心情を計算し、フレームの「抜け」も意識しました。美亜の母親とフィリップが公園で話をするシーンでは行き詰まっている母親を背景に線が多い側、気持ちに余裕のあるフィリップを抜けのある側に置いたのは、心情の対比を空間で表現したのです。

──天草の朽ち果てた古民家や幻想的な大木には驚きました。

プロデューサーの小泉朋さんが天草に詳しく、素晴らしい木を紹介してくれました。ロケハン時は葉が生い茂ってもっと幻想的でしたが、撮影時には葉が散っていたので、「CGでなんとかならない?」と聞いたのですが、「高いから無理」と言われて(笑)。でも枯れた感じも味があって、いいですよね?

古民家は重要文化財に指定されている古い日本家屋をお借りしました。実際はきれいに保存されています。それを美術チームが徹底的に「汚し」を加え、廃屋のような外観に仕上げました。あの朽ちた質感はすべて美術の仕事によるものです。

画像: さらに大きな作品に挑戦したい!

──この作品は監督のキャリアの中でどのような位置づけになりますか。

ハリウッドは夢の舞台でもありますが、同時に非常に現実的な場所でもあります。予算やスケジュール、契約など、クリエイティブ以外の要素も多く関わってくる。でも、だからこそ、そこに挑戦する価値があると思っています。今回、サーチライトという大きなスタジオで長編デビュー作を撮れたことは大きいチャンス。ここからさらに大きな作品に挑戦したいです。

── 今後も家族をテーマにした作品を撮っていかれるのでしょうか。

私の中に家族というテーマはいつも根底にありますが、それをどう描くかは作品ごとに変えていきたい。恋愛ものやSFなどジャンルにこだわらず、「次はどんな作品だろう」と観客に“驚き”と“共感”を届けられる監督でありたいと思っています。しかも、毎回違う作品を作りながらも、どこかに自分らしさがある。そんな作品を積み重ねていきたいですね。

そして、私はファンタジーやアドベンチャー映画が好きで、『ネバーエンディング・ストーリー』(1985)や『グーニーズ』(1985)などに影響を受けて育ちましたから、いつかは、デビッド・リンチ監督の『デューン 砂の惑星』(1984)のような壮大で感情豊かなアドベンチャー映画を作りたいです。

──最後に、日本の観客へのメッセージをお願いします。

人は誰かと繋がっていたい、理解されたい、受け入れられたいという思いを持っています。でも現代社会では、それが難しくなっている部分がある。だからこそ、演じることで繋がろうとする人々の姿を描きたい。それが“レンタル・ファミリー”というテーマの根底にあります。

この作品をご覧いただき、少しでも心が温かくなるような瞬間があれば、それが私にとって何よりの喜びです。誰かの孤独に寄り添え、誰かの感情に共鳴できたなら、それだけでこの作品を撮った意味があります。映画は“共感のメディア”だと思っているので、観客が自分の感情と向き合う時間になればいいなと思います。

<PROFILE>
監督: HIKARI 
大阪出身のHIKARIは、ダンサー、歌手、画家、写真家としての経歴を持つ受賞歴のある脚本家、監督、プロデューサーである。デビュー作『37セカンズ』は第69回ベルリン国際映画祭でプレミア上映され、パノラマ観客賞、CICAEアートシネマ賞のW受賞の快挙を成し遂げ、最優秀新人監督賞にもノミネートされた。本作は世界的に高い評価を得ている。
彼女の過去のテレビ作品には、エミー賞® 受賞シリーズ「BEEF/ビーフ」(オスカー候補スティーヴン・ユァンとコメディアンのアリ・ウォン主演)のパイロット版監督、アンセル・エルゴートと渡辺謙主演、マイケル・マンがエグゼクティブプロデューサーを務めた「TOKYO VICE」がある。また、数々の受賞歴を持つ短編映画も執筆・監督している。

画像: 【インタビュー】演じることで繋がろうとする人々の姿を描く『レンタル・ファミリー』HIKARI監督

『レンタル・ファミリー』2026年2月27日(金) 公開

画像: 『レンタル・ファミリー』ティーザー予告映像<2026年2月27日(金)公開> youtu.be

『レンタル・ファミリー』ティーザー予告映像<2026年2月27日(金)公開>

youtu.be

<STORY> 
東京で暮らす落ちぶれた俳優フィリップは、日本での生活に居心地の良さを感じながらも、本来の自分自身を見失いかけていた。そんな中、“レンタル家族”として他人の人生の中で“仮の”役割を演じる仕事に出会い、想像もしなかった人生の一部を体験する。そこで見つける、生きる喜びとは?

<STAFF&CAST> 
監督:HIKARI 
脚本:HIKARI、スティーブン・ブレイハット 
出演:ブレンダン・フレイザー、平 岳大、山本 真理、柄本 明、ゴーマン シャノン 眞陽ほか  
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.searchlightpictures.jp/movies/rentalfamily 

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