1991年のポーランドを舞台に、ニューヨークで生まれ育った娘と、ホロコーストを生き抜き約50年ぶりに祖国へ戻った父親が、家族の歴史をたどる旅路を、ユーモラスかつ温かく描いたロードムービー『旅の終わりのたからもの』が絶賛公開中。監督&キャストが明かす、アウシュヴィッツ撮影の知られざる舞台裏とは?
画像1: 映画『旅の終わりのたからもの』が呼び起こす“痛み”を語り継ぐことの力 監督&キャストが語るアウシュヴィッツでの撮影秘話
画像2: 映画『旅の終わりのたからもの』が呼び起こす“痛み”を語り継ぐことの力 監督&キャストが語るアウシュヴィッツでの撮影秘話
画像3: 映画『旅の終わりのたからもの』が呼び起こす“痛み”を語り継ぐことの力 監督&キャストが語るアウシュヴィッツでの撮影秘話
画像4: 映画『旅の終わりのたからもの』が呼び起こす“痛み”を語り継ぐことの力 監督&キャストが語るアウシュヴィッツでの撮影秘話

既に鑑賞した観客からは「お正月に会ったばかりだけど、家族と話したくなる!」「1年の最初にこの映画を見て本当によかった」と親子の心温まる物語に共感の声が上がると同時に、現在のアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所が映し出される約10分間の一幕には「博物館化したアウシュヴィッツ強制収容所の様子を表したものは初めてだったので、衝撃だった」「見た目は美しい景色でしたが、そこで起きていた事実を想起するとなんとも言えぬ気持ちになりました」と歴史の重みに衝撃を隠せない感想も。今回は、主人公の親子を演じたレナ・ダナム、スティーヴン・フライ、そしてユリア・フォン・ハインツ監督の言葉から制作陣がこのシーンにかけた思いをひも解く。

「アウシュヴィッツが“今どうなっているか”を映画で見せるのは、ほとんど初めてではないでしょうか」と語るのは本作のメガホンをとったドイツの俊英ユリア・フォン・ハインツ監督。そもそも彼女がティーンエイジャーの頃に、オーストラリアの作家、リリー・ブレットがホロコーストの生存者である父との旅の実体験をもとに書き上げた小説『Too Many Men』を読み、深い感銘を受け今回の映画化が実現。そんな彼女にとって、本作で“今のアウシュヴィッツの姿”を描き現代に伝えることは命題であった。「アウシュヴィッツは、歴史的な記憶を伝えるために、あえて手を加えずそのままの状態を保っています。そのこと自体がとても大切なのです。過去に起きたことを、生き残った人々やその子孫たちがきちんと理解するために、この場所は必要なのです。」と監督が語るように、作中では現在のアウシュヴィッツ収容所の姿が登場し、言い知れぬ緊張感を漂わせる。旅の冒頭から常に自由奔放な振る舞いで娘・ルーシーをイラつかせていたエデクだが、収容所を目の前にした瞬間、表情を曇らせ、呟く一言一言に痛烈な痛みが宿る。エデクの自由奔放で天真爛漫な笑顔は痛みを包み隠し、娘を過去から引き剝がそうとする手段だったと観客は思い知らされる。

父・エデクを演じ、自身も母方の家族がアウシュヴィッツで命を落としたスティーヴン・フライにとって、ホロコーストの記憶は直接向き合うことを避けてきたテーマでもあった。「これまで一度も訪れたことはありませんでした。あの場所で自分の家族が命を落としたと知っている人々にとって、その地を訪れ大叔母や大叔父、いとこたちが列車を降り強制収容所に送られる様子を想像することは、非常に強く重い感情を抱くものです。」と振り返る。自らの家族が経験したであろう光景を想像することは、俳優としてではなく、ひとりの人間としての強い負荷を伴う体験だったことがうかがえる。

「アウシュヴィッツに到着した初日、私たちはほとんど喋りませんでした」と明かすのは、ユリア監督の思いに共感し、約15年ぶりの映画主演を果たしたレナ・ダナム。「徐々に、ホロコーストに関して異なる歴史や経験を持つ人々の間で、非常に力強い会話が生まれていきました。私たちは決して、自分たちがどこにいるのかを忘れることはありませんでした。その場所は、私たちの集合的意識と同様に、永遠に悲しみと重みを帯びています。私たちは決して忘れてはならないのです」と強調するレナ。アウシュヴィッツを目の前にした父から語られる、これまで明かされることのなかった痛烈な記憶に娘は何を思うのかー?ずっと父を知りたいと望み計画したこの旅行。親子が終着点で見つける“たからもの”とはー?

監督・キャストから感じられたのは、未来を守るために残酷な出来事を決して風化させてはいけないという強い想いそのもの。過去の悲劇を二度と繰り返さないように、どう次の世代へ伝えていくのか?という問いが、観客にも静かに投げかけられている。

1月27日はホロコースト犠牲者を想起する国際デー。戦後から今年で81年となった今、本作は後世に語り継ぐことの力を静かに訴えかける。映画『旅の終わりのたからもの』はkino cinéma新宿ほか全国公開中。

『旅の終わりのたからもの』
kino cinéma新宿ほか全国公開中
配給:キノフィルムズ
© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

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