作品選びにお悩みのあなた! そんなときは、映画のプロにお任せあれ。毎月公開されるたくさんの新作映画の中から3人の批評家がそれぞれオススメの作品の見どころポイントを解説します。(デジタル編集・スクリーン編集部)

〜今月の3人〜

稲田隆紀
映画解説者。気づかないうちに年齢が増える。今のような米映画衰退は予想だにしていなかった。

まつかわゆま
大阪シネ・ヌーヴォで2/4 11:50〜父の作品二本が上映されます。貴重な機会なので私も行こうかなと計画中です。

松坂克己
映画ライター・編集者。26年も楽しみな作品が多いが、やはり「デューン」の3作目が早く見たいですね。

稲田隆紀 オススメ作品
『ランニング・マン』

画像: 稲田隆紀 オススメ作品 『ランニング・マン』

分断社会に異を唱えるヒロイズムをエンタテインメントに仕上げる
ライト監督の反骨精神が痛快

評価点:演出5/演技4/脚本4.5/映像5/音楽5

あらすじ・概要
無職になったベンは、娘の治療費を捻出するために、巨額の賞金のかかるリアリティショー「ランニング・マン」に参加する。捕まれば即死、30日生き延びれば賞金を手にできる。これまで生存者ゼロのショーが開始された。

まさか『バトルランナー』と同じ小説が再映画化されるとは思わなかった。リチャード・バックマン名義のスティーヴン・キング原作デスゲームものだが、脚本と監督をエドガー・ライトが担当するのだから弾けっぷりが違う。メディアが権力を遂行するという、いささか旧い図式のもと、ライトが問答無用に暴れる。無職、差別される側の男が、生き延びるために牙を剥くという、ありがちな設定の下、過激な疾走ぶりを披露する。『ベイビー・ドライバー』と同じく抜群の音楽センスを武器に、ライトならではのアクション世界が披露される。テンポの良さ、歯切れのよさが身上だ。

主演に起用されたグレン・パウエルは本作で精悍なヒーローを体現。仇役のジョシュ・ブローリンのアクの強さに負けない存在感を発揮している。持てる者、持たざる者に分断された社会で、異を唱えるヒロイズムをエンターテイメントに仕立て上げて謳う。ライトの反骨精神が映像から滲み出ている。ラストに原作と違うひねりも嬉しい。これぞライト・テイストの痛快作だ。

1月30日公開、東和ピクチャーズ配給
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まつかわゆま オススメ作品
『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』

さようならダウントン・アビーの皆さん。
いつかまたお会いできますように

画像: まつかわゆま オススメ作品 『ダウントン・アビー/グランドフィナーレ』

評価点:演出5/演技4/脚本5/撮影5/音楽4

あらすじ・概要
1930年、メアリーが離婚、醜聞に。その頃、母の遺産運用に失敗したコーラの弟ハロルドが来訪。彼の連れガスに魅かれるメアリーはロンドン邸の売却を提案、ロバートを激怒させ、当主継承に赤信号がともる?!。

6年前胸椎骨折で入院、初めて海外ドラマの一気見をして嵌ったのが「ダウントン・アビー」。英国映画に同番組の出演者が増えてきてこれは必見と思ったのがきっかけ。映画版の予習にもなった。そのシリーズが終わるのは、寂しい。ドラマと異なり回収すべき問題は無く、シリーズのエピソードを思い出させつつお馴染みの人々全員登場でその後を描く。

まさにフィナーレ大団円編。二つの世界大戦に挟まれた消えゆく貴族の時代15年間を、今の視点で惜しむものと改革してよかったことの両面から描いて来た。良いことも悪いこともある貴族の暮しを覗き見する物珍しさと、優雅さより人間臭いダメっぷりが親しみを持てる登場人物とその成長は、自分の親族のことのように同感できた。そして何よりもセット・美術・衣装・ヘアメイクなどの本物感がすごい。時代考証がしっかりしていてもそれを再現できる素材や技術が伴わなければここまで本物感は出ない。それは歴史と古い物や伝統技術を大事にする国柄・国民性の賜物だと思う。英国エンタメ界を見習うべきだな。

公開中、ギャガ配給
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松坂克己 オススメ作品
『コート・スティーリング 』

鬼才アロノフスキー監督が放った
なんとも楽しいクライム・アクション

画像: 松坂克己 オススメ作品 『コート・スティーリング 』

評価点:演出5/演技4/脚本5/映像4/音楽4

あらすじ・概要
ニューヨークでバーテンをするハンクは裏社会の大金がらみの事件に巻き込まれ、次々とギャングたちに襲われる。生き残ろうと必死になって逃れようとするが、警察もあてにならず、遂に反撃を決意するのだが……。

ダーレン・アロノフスキー監督というと『ブラック・スワン』『ザ・ホエール』といったドラマ系作品のイメージが強いが、今回はエンタメ系に振り切ってくれている。

舞台は1998年のニューヨーク。ということはブルックリン生れのアロノフスキーにとっては20代最後の年の地元を描いたことになるわけで彼のNY愛が伝わってくる。

怪我のため野球選手の夢を絶たれ、しがないバーテンとして暮らすハンク(オースティン・バトラー)が、隣人のネコを預かったことから裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれる様子がテンポのいい描写で進んでいくが、次から次と現われる悪党どももキャラが立っていて楽しませてくれる。

共演陣の中では隣人ラス役のマット・スミスが出色。大騒ぎの発端となる役でありながらも、飄々としたとぼけた味を出してくれている。ユダヤ人ギャングのヴィンセント・ドノフリオとリーヴ・シュレイバーのコンビも適役。監督が楽しみながら作っているのがビンビンと感じられて、見ているこちらも嬉しくなってきてしまった。

公開中、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給

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