カバー画像:『レクイエム・フォー・ドリーム』より © 2000 Requiem For A Dream, LLC. All Rights Reserved.
四半世紀ぶりに、あの“トラウマ映画”が復活!
今や『ザ・ホエール』(22)、『ブラック・スワン』(10)など数々の監督作が映画賞を賑わせるダーレン・アロノフスキーが、低予算の処女作『π』(98)に続いて監督した第2作『レクイエム・フォー・ドリーム』(00)が、四半世紀を経て4Kリマスター版として復活する。
麻薬の売人になって儲けようと考える青年ハリー(ジャレッド・レト)と恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)は、次第に麻薬の依存症に。並行して、一人暮らしのハリーの母サラ(エレン・バースティン)はTVのクイズ番組に夢中になり、それに出演するためのダイエット薬として処方された覚醒剤の依存症になっていく……。
薬物や欲望に溺れ、そこから逃れられなくなる人々を生々しく描く本作は、公開時、観客にトラウマ級の衝撃を与えた。その強烈な印象は時間を経ても変わらず、映画は2000年公開だが、2009年には英映画雑誌「EMPIRE」の“絶望する映画トップ10 ”の第1位、2014年にも米映画サイト『Taste of Cinema』の“心が潰れる映画ベスト20 ”の第1位に選ばれている。
この強烈な印象を生み出した理由の1つが、公開時31歳の新鋭だったアロノフスキー監督の映像化のコンセプトと、それを実現する凝りに凝った映像技法にあることを、今回4Kリマスター版で甦った鮮明な映像が再確認させてくれる。
監督が本作で試みるのは、“麻薬依存症が味わう体感”の映像化だ。例えば、依存症の人間が薬物を摂取した瞬間、身体で感じる感覚は、監督が“ヒップホップ・モンタージュ”と呼ぶ編集技法で描かれる。ヒップホップ文化のサンプリングとコラージュを踏まえたこの技法で、ごく短い映像で、目の瞳孔の弛緩、透明な管に吸い上げられる液体、クラゲが広がる瞬間、といったイメージが矢継ぎ早に連続して映し出され、薬物摂取の瞬間の快感を味わっているような錯覚に陥る。
また、薬物摂取後に自分の周囲の世界が歪んで見えるような感覚は、特殊なカメラ設置装置“スノーリカム”を用いて、カメラを俳優の身体に直接固定して撮影。俳優が歩くと、周囲の背景が奇妙に揺れ動き、薬物摂取状態の体感を疑似体験させてくれる。こうした映像により、観客も登場人物と同じ依存症に陥ったような感覚になり、彼らと同じように精神的なダメージを負ってしまうのだ。
さらに感情を揺さぶるのが、俳優たちの名演だ。主人公の母サラ役のエレン・バースティンは、すでに『アリスの恋』(74)でアカデミー賞主演女優賞受賞の名女優だったが、本作でも同賞にノミネート。また主人公ハリー役のジャレッド・レトは、依存症のため約11㎏減量して熱演。その後のレトは、『チャプター27』(07)では体重を増やして肥満体のジョン・レノン殺人犯を演じ、『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)で薬物依存症のトランスジェンダーを演じてアカデミー賞助演男優賞を受賞、『スーサイド・スクワッド』(16)では狂気のジョーカー役と、個性的な役柄に続々挑戦しているが、本作ではまだ初々しい美貌を見せている。
アロノフスキー監督は本作の後、多彩な作風の映画を次々に生み出しているが、本作で見せた映像表現へのこだわりは、今も彼の表現の根底にあるのではないか。4K映像で甦った本作で、監督の原点も再確認したい。
『レクイエム・フォー・ドリーム 4Kリマスター』
2月6日(金)公開
アメリカ/2000年/1時間42分/クロックワークス配給
監督/ダーレン・アロノフスキー
出演/エレン・バースティン、ジャレッド・レト、ジェニファー・コネリー、マーロン・ウェイアンズ
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