3月22日(日)フランス映画祭クロージング上映&Q&A

『そして彼女たちは』のジャパン・プレミアを迎えたフランス映画祭クロージング上映後、両監督がQ&Aに登壇。
善悪を分け、はっきりと答えを出すような昨今の作品、風潮に対し監督の作品は人物のもつ複雑さをそのまま描いているように感じる、という問いかけに「それぞれの登場人物の物語に、ラベル付けをしてひとつのケースとして受け取られないようにしています。観ている人が、登場人物を、その人自身として、その人自身と秘密の対話を持つことができるように心がけているのです。映画の中には感じのよくない登場人物もいますが、その人も含めて、私たちはこの人たちを愛しています」と回答。それからすかさず「ひとりでは愛しきれないので、(兄弟で)二人でやっているんです。嫉妬することもあるんですけどね」と冗談交じりに続けた。
映画館で映画を観ることについての思いを問われると、「教訓を垂れたいわけではないのですが」と前置きしながらも「映画館に来て、スクリーンで見るっていうのは、社会的な行動だと思っています。誰か(知らない人も含めて)と同じ空間で映画を観て、そしてその映画館の前で、あるいは飲み屋さんに一緒に行って、映画の感想を交わす。集団の生活の一部だと思います」。続けて、「インターネットによって、映画館に来なくなるというのは非常に残念で、(言ってしまえば)世界の終わりに相当すると私は思います。ですから、ぜひ映画館に来て映画を見てください」と熱く語った。
また、物語を希望へと導く印象的な音楽のシーンについての質問も。「シナリオを書く時にモーツァルトをよく聴いているんです。モーツァルトはその生命の流れを感じさせてくれる音楽家です。若い女性が赤ちゃんがいて、それでも生き続けるっていうのは大変なことなんですけれども、最終的にはその命の力が勝つ、ということを表しました」と製作の裏側が垣間見える言葉も。最後には、関係者や通訳、そして観に来てくれた観客に丁寧に感謝を述べてQ&Aは終了した。
3月27日(金)公開記念Q&A付特別上映
公開記念Q&A付特別上映でも、平日の夜にもかかわらず、監督に一目会い、質問をしようと多くの観客が駆け付けた。
再生や救いを感じるラストに込めた意図を聞かれると、「物語を書き始めたときから、彼女たちに光と希望をもたらしたいと考えていました。母子支援施設で共同生活を送る5人の少女たちは、同じ屋根の下にいながらも、それぞれが孤独や困難を抱えている。現実は決して甘くはないが、私たちはフィクションを撮っている。だからこそ、現実には難しいことにも可能性を与えることができる」と説明。本作は、壁にぶつかりながらも前へ進もうとする少女たちが、閉じ込められた状況から少しずつ解放されていく“解放と再生の物語”であると強調した。

若い母親が子育てをしながら学校に通える支援に驚いた。実際に取材を重ねたのか、という質問に対しては「決してベルギーを天国のように描こうとしたわけではありません」と前置きしつつ、若い母親への国家的な支援制度が実在することを説明。未成年で母親になった少女たちは施設に入り、家族手当を受けながら学業や仕事を続けることができる。また、暴力的な親やパートナーから距離を取ることも制度として守られているという。「公共サービスとしてこのような支援があることは、とても大切なことです。本作はある意味、その公共サービスへのオマージュでもあります」と語った。
カメラの存在を忘れさせるようなリアリティはどのように生まれるのか。また困難をどう乗り越えてきたのか、という問いに対し、監督は「まず自分自身の映画の手法を見つけることが大切です」と答える。本作では撮影前に約5週間のリハーサルを実施。俳優の身体の動きやカメラの動線を徹底的に探りながら、信頼関係を築いていったという。「技術はその次。まずは登場人物に興味を持つこと」。観客と人物のあいだに余計なものを置かず、できる限りシンプルな方法で撮影することが、独特のリアリティにつながっていると明かした。
赤ちゃんの撮影はどのように行われたのか、という質問には、「最初は不安もありましたが、結果的にはとてもうまくいきました」と笑顔を見せた。俳優たちは事前に人形で練習を重ね、施設の教育係や若い母親から赤ちゃんの抱き方を学んだうえで撮影に臨んだ。「人形と本物の赤ちゃんはまったく違います。生身の存在に注意を払いながら演技することで、そこに真実味が生まれました」と説明。さらに「映画監督は謙虚であるべきです。すべては赤ちゃんが決めるのです」と語り、赤ちゃんの自然な反応に合わせる撮影スタイルが、ドキュメンタリー的なリアリティを生み出したと振り返った。
女性だけがケアを担っているように見えるが、そこからどう脱却できるのか、という問いに対し、監督は率直に「簡単な答えはありません」と述べたうえで「まず男性が変わらなければならない」と指摘。取材を重ねるなかで、若い父親たちもまた未熟さや問題を抱えているケースが多かったという。時には父親が不在であるほうが、母親と子どもが安定して生活できる場合もある。「この映画はフィクションですが、描いている問題は現実とも深くつながっています」と語り、観客に問いを投げかけた。
歌舞伎、お花見、小旅行、そしてお餅!
映画のキャンペーン活動の合間に、観光も楽しんだ2人は、歌舞伎やお花見に、聖地巡礼、日本の食事も満喫した様子。
初めての歌舞伎観劇
歌舞伎座で「加賀見山再岩藤」の一幕を鑑賞。4階席まである会場に「リュミエール(カンヌ国際映画祭のメイン会場)みたいだね」とカンヌ国際映画祭常連監督らしい一言。初めての歌舞伎観劇を終えて、ジャン=ピエール「所作が踊りのようで美しかった」、リュック「ブレヒトを想起した。家にある演劇の歴史の本に歌舞伎の章があるからもう一度読み返してみよう」など興奮気味に感想を語っていました。鑑賞後は銀ブラをして文房具屋でノートを何冊も購入。「これで3本映画が作れるよ」と茶目っけたっぷりに冗談を言うリュック。

東京・桜満開の週末に…
成瀬巳喜男監督『おかあさん』が好きなジャン=ピエールの希望で、ロケ地である石神井公園へ。ピクニックをしている家族をみて映画の中みたいだ!と喜んでいた。桜もしっかり咲いていて、お花見も。公園の帰りにはうつわ屋さんで、お店の方から作家について説明してもらいながら、リュックが菊の花のレリーフ、ジャンピエールが花瓶を購入。都会の喧騒を離れた風景にも癒された様子だった。

神奈川県真鶴町へ、小旅行——
1日フリーのため、電車に乗って神奈川・真鶴町へ。車内放送で「ご乗車ありがとうございました」と言われるたび、「アリガトー」と返事する二人。真鶴の古くからの建造物や街並みを終始撮影するジャン=ピエール、聞こえてくる鳥の声にも耳を澄ませ、鳴き声で言い当てる博識ぶりを見せるリュック。 ランチには漁業の盛んな真鶴町の地魚のお寿司に舌鼓を打った。鮮魚を販売するお店で店主と交流するなど、伸び伸びと休日を楽しんでいた。

And more……
取材の合間の午後や、夕食終わりには必ずデザートを召し上がる二人。リュックは必ず「MOCHI?」と聞いてくるほどに「モチ」食感に夢中で大福、わらび餅、お汁粉など和菓子をいろいろと試していた。
ベルギーと言えば作者がベルギー出身の「タンタンの冒険」‼ ジャン=ピエールが「私たちは(双子の刑事)デュポンとデュボンのようなものだよ」と楽しそうに話してくれた。リュックは孫の寝かしつけに読み聞かせると言い、お気に入りは雪男が出てくる「タンタン チベットをゆく」だそう。

『そして彼女たちは』(全国上映中!)イントロダクション
若くして妊娠した女性を支援する施設で共に暮らす5人の少女。彼女たちは頼る人を持たず、貧困、家族との関係などさまざまな問題を抱えている。「ひとりじゃ育てられない」「嬉しいと思いたいのに」――戸惑い、悩み、なるべき家族のかたちを見いだせないまま、母になる少女たち。押し寄せる孤独感に飲み込まれそうになっても、時に誰かに寄り添われながら、それぞれが歩むべき道を選び取っていく……。
『ロゼッタ』(99)『ある子供』(05)でカンヌ国際映画祭パルムドール大賞を受賞、10作がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、世界中で100賞以上を獲得するなど、注目を集め続けてきたダルデンヌ兄弟。本作は第78回カンヌ国際映画祭で自身2度目となる脚本賞と、エキュメニカル審査員賞をW受賞し、今年度アカデミー賞Ⓡ国際長編映画賞ベルギー代表にも選出。常にひとりの主人公の人生を背中越しに、同じ目線で体験させるかのように映し出してきた彼らが、本作では5人を主人公とする自身初の《群像劇》に挑んだ。これまでと同様に彼女たち一人ひとりが置かれた状況に寄り添い、共に時間を積み重ねるように観客を導いていく手腕は見事だ。その真摯な映画作りへの姿勢に共鳴した、同じくベルギー出身の新鋭監督ルーカス・ドン(『CLOSE/クロース』)が共同プロデューサーとして手を挙げた。キャリア38年、新境地にして真骨頂を鮮やかに示す一作に、各国メディアからも称賛の声が後を絶たない。
ⓒLes Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / Photo©Christine Plenus


