フランス革命200周年を記念して建築されたエッフェル塔や凱旋門に次ぐパリの新モニュメント、通称「新凱旋門(グランダルシュ)」。第78回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品作『新凱旋門物語』はその誕生の裏にあった実話を基に、国家プロジェクトに挑んだ建築家の数奇な人生を描くヒューマンドラマである。本作で実在の建築家を演じたスワン・アルローのインタビューが到着した。

国際色豊かなキャストとの楽しい現場を振り返る

『落下の解剖学』で“ホットロイヤー”として注目を集めたスワン・アルロー。主演作『A Man of His Time(英題)』が第79回カンヌ国際映画祭でプレミア上映されるなど、近年ますます存在感を高めている。そんなスワンが演じたのは、実在の建築家ポール・アンドリューである。

アンドリューはパリのシャルル・ド・ゴール空港や大阪のなにわの海の時空館(現:THEJEWELRY)の設計でも知られ、本作では主人公ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン(クレス・バング)の革新的なデザインに惚れ込み、その才能を誰よりも信じ、巨大国家プロジェクト遂行のために自らは裏方に回った。しかし、政治や予算、工期といった現実の制約に葛藤する。理想を追うスプレッケルセンと現実に向き合うアンドリュー。互いを認め合いながらも、二人の間には次第に溝が生まれていく。その関係性は、本作の大きな見どころとなっている。

今回のインタビューでは、子ども時代の思い出から役作りのアプローチ、クレス・バングやグザヴィエ・ドランなど共演者たちとの撮影現場でのエピソードまで、本作の舞台裏をたっぷりと語っている。

画像1: 国際色豊かなキャストとの楽しい現場を振り返る

― あなたは1981年生まれなので80年代当時はまだ子供だったと思いますが、新凱旋門に関する話はご存知でしたか。

この映画に参加するまでまったく知らなかったです。フランスでも知らない人は少なくないと思います。子供心に覚えている当時のことと言えば、ルーヴルのガラスのピラミッドぐらいです。

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― 実際のポール・アンドリューは、あなたに特に似ていらっしゃるわけではないですね。彼の建てたシャルル・ド・ゴール空港などは有名ですが、彼自身の風貌はそれほど知られていない印象があります。この役にどのようにアプローチされたのでしょうか。

おっしゃる通り、彼の風貌はそれほど知られているわけではないので、とくに彼に似せようとは思いませんでした。実在の人物というよりフィクションのキャラクターを演じるときと同じように、自由に演じました。ステファン(・ドゥムースティエ監督)から言われたのは、スプレッケルセンは理想主義者で、一方アンドリューは実用主義者だったこと。彼はスプレッケルセンの建築プランを素晴らしいと思い、心から賞賛していたが、現実的にはどのように建てることが可能かを考える方だと。なるべく原型に近い形の具体案を見つけること、いわば夢には到達できないけれど、それに近づけるためにはどうすればいいのかを考えるタイプです。アンドリューは嫉妬しているわけではない。スプレッケルセンとはお互い尊敬し合っているが、その関係性は対等でどちらが上でも下でもないのです。そのバランスをどう表現するかが自分にとってはチャレンジでした。またリサーチをするなかで、アンドリューはわりと怒りっぽい性格だったことも知りました。この映画でも、彼が事務所で声を荒げる場面がひとつだけあります。

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― 本作の主要キャストはとても国際的な顔ぶれですね。デンマークからクレス・バングとシセ・バベット・クヌッセン、カナダからグザヴィエ・ドラン。彼らとの共演はいかがでしたか。

 みんなそれぞれメソッドが異なったのですが、それがうまく行きました。とても刺激的でした。クレスはほとんどのセリフがフランス語ですが、もともとフランス語がまったく喋れなかったのです。ゼロから学んだのに、結果は素晴らしかった。僕は彼の横で何かサポートできればと思っていましたが、その必要もないほどでした。彼とはとても友好的な関係が築けました。シセ・バベットはフランス語がとても上手くて、気さくで、才能あふれる俳優です。グザヴィエとは、彼が演じたシュビロンをネタにして、よく冗談を言い合っていました。本当に楽しい現場でした。

取材・文:佐藤久理子

スワン・アルロー  
1981年、フランス・フォントネー=オー=ローズ生まれ。カンヌ国際映画祭の批評家週間で上映された『美しき棘』(10)で注目を集め、繊細さと強度を併せ持つ演技で早くから評価を確立。『アナーキスト 愛と革命の時代』(15)でセザール賞有望若手新人賞にノミネート、『ブラッディ・ミルク』(17)でセザール賞最優秀男優賞を受賞し、同年に『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』(19)でセザール賞助演男優賞を受賞。第76回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『落下の解剖学』(23)では、弁護士のヴァンサンを演じ、2024年のセザール賞助演男優賞を受賞した。本作でも、第51回セザール賞助演男優賞にノミネートされた。フランス映画界を代表する俳優の一人として、社会性の高い作品から心理劇まで幅広く出演を重ね、近年では『Sukkwan Island(原題)』(25)、カミュの「異邦人』の映画化『The Stranger(英題)』(25/フランソワ・オゾン監督)、第79回カンヌ国際映画祭コンペ出品作『A Man of His Time(英題)』(26)と注目作への出演が続く。

画像: 『新凱旋門物語』よりスワン・アルローのインタビューが到着

【STORY】
1983年、パリ。ミッテラン大統領はフランス革命200周年を祝う新モニュメントの建設を構想していた。国際設計コンペで選ばれたのは、無名のデンマーク人建築家ヨハン・オットー・フォン・スプレッケルセン。イタリア・カッラーラ産の大理石によるキューブ状のアーチと、そのふもとに雲のような屋根が浮かぶ大胆なプランは、大統領の心を射止め、彼を一夜にして時の人にした。しかし、完璧を追い求める彼の前には、予算や政治的圧力、周囲の思惑が立ちはだかる。理想を貫くか、現実に折り合いをつけるか。巨大プロジェクトの渦中で、一人の建築家が下す“ある決断”とは――。

画像: 【7月17日(金)公開】映画『新凱旋門物語』予告編解禁!クレス・バング×スワン・アルロー×グザヴィエ・ドラン www.youtube.com

【7月17日(金)公開】映画『新凱旋門物語』予告編解禁!クレス・バング×スワン・アルロー×グザヴィエ・ドラン

www.youtube.com

『新凱旋門物語』 
7月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開 
監督・脚本:ステファン・ドゥムースティエ  
出演:クレス・バング、スワン・アルロー、グザヴィエ・ドラン 
原作:「新凱旋門物語 ラ・グランダルシュ」 ロランス・コセ著 北代美和子訳(草思社)
2025/フランス・デンマーク/フランス語・英語・デンマーク語・イタリア語/106分/1.37:1/5.1ch 
原題:L'Inconnu de la Grande Arche 英題:The Great Arch 
字幕:齋藤敦子
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ、デンマーク王国大使館 
協力:ユニフランス 
配給:ミモザフィルムズ
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