監督を務めるのは坂本浩一、谷垣健治、下村勇二の3人
長年にわたって香港と日本の映画界を行き来し、香港アクション映画の黄金時代を築き上げてきた倉田保昭。俳優、武道家、プロデューサーであると同時に、倉田アクションクラブの主宰者として、数多くの人材を輩出してきたことでもつとに知られている。
かくゆう私もライターになれたのは倉田保昭先生のおかげだ。なぜ私が憧れの人を先生と呼ぶようになったのか?カンフー映画、香港映画にはまっていったか?については2年前、SCREEN ONLINEの「『帰って来たドラゴン』リバイバルで再注目を浴びる伝説の男、倉田保昭の真の偉大さとは?」に書かせていただいた。そしてその拙文の最後をこう結んだ。
併映作品「夢物語」のそのまた続きや、盟友サモ・ハンと映画を撮る企画も進んでいるという。78歳にして現役バリバリのアクション・レジェンド、倉田保昭の物語はまだまだ続く!
あれから2年。“やると言ったらやる男”倉田保昭は80歳になり、俳優生活60周年を迎え、その間、実にさまざまなミラクルが起った。2024年10月、東京国際映画祭関連のTIFFCOMで倉田保昭、サモ・ハン、アクション監督の谷垣健治がカンフー映画をテーマに熱く語るセミナーが開催された。2025年1月には「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」が日本公開され、異例のロングラン上映とともに大ヒットを記録。それまで香港映画やカンフーアクションになじみのなかった若い世代が熱狂、数々の社会現象を巻き起こした。同年4月には谷垣健治が同作で香港電影金像奨の最優秀アクション設計賞を授賞。プレゼンテーターは倉田保昭、登壇するや電光石火の前蹴りを披露して客席をどよめかせ、トロフィーを手にがっしり抱き合う師弟に盛大な拍手が送られた。一方で突然の別れもあった。2026年1月、「帰って来たドラゴン」のブルース・リャンが死去。享年77歳…

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そんななか、3話からなるオムニバスエンターテインメント「夢物語 The Living Dragon」がついに完成した。製作総指揮、主演はもちろん倉田保昭。監督を務めるのは坂本浩一、谷垣健治、下村勇二の3人。いずれも倉田アクションクラブ出身で、ワールドワイドに活躍し、名前でお客を呼べる売れっ子アクション監督たちだ。
坂本浩一は高校1年生で倉田アクションクラブに入門したのち、1989年に渡米。ハリウッド映画「ガイバー2ダークヒーロー」「DRIVE 破壊王」などを手がけ、日本の「スーパー戦隊シリーズ」をベースにしたアメリカ版「パワーレンジャー」を大成功させた。帰国後さらに「ウルトラマン」「仮面ライダー」も手がけたことから、三大東映特撮シリーズ最大の功労者とも言われる。最新監督作「BLACKFOX: Age of the Ninja」には倉田保昭も出演。
下村勇二監督は高校生のとき倉田アクションクラブ大阪支部に入所。香港でアクション映画を学び、ドニー・イェンに師事したのちに帰国。「GANTZ」などを手がけ、最近では時代劇大作「キングダム」シリーズや「ゴールデンカムイ」で名を馳せる。今回はオムニバスの第2話だけでなく、全3話をまとめるオープニング、エンディングの演出も担当。これが師匠との初仕事だったが、見事にエモーショナルな作品に仕上げた。
そして谷垣健治は大学入学と同時に倉田アクションクラブ大阪支部に入所。22歳で香港にわたり、日本人で唯一の香港スタントマン協会のメンバーになる。ドニー・イェンの右腕として鳴らしたのち、「るろうに剣心」シリーズで日本のアクション業界に旋風を巻き起こす。「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」では香港電影金像奨の最優秀アクション監督賞を受賞。監督最新作「The Furious」も話題沸騰中。
「夢物語 The Living Dragon」のすごいのは「私はレジェンドではない。現役のアクション俳優です」と静かに微笑む倉田保昭と、そんな師匠のために駆け付けた3監督の熱い想いとが結集し、三者三様の作品の中に苛烈にスパークしていること。

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今回、脚本も任された3人の監督は「憧れの倉田先生と仕事ができる」という喜びの中で「お互いに負けられない」と善意の闘争心を燃やし、「限られた時間内でどう先生を輝かせるか」「自分のカラーをどう作品に刻印するか」についてさぞ頭を悩ませたであろう。当の倉田保昭は現場では一俳優、いち素材に徹して、弟子たちが撮りたいように撮らせ、そのやり方に口をはさむことはなかった。加えて香港映画界の重鎮サモ・ハンの特別出演。「自主映画みたいなものだけど出てくれる?」という倉田の問いにサモ・ハンが「出る、倉田の映画なら出る」と何も詳細を聞かず即答したというエピソードが泣かせるではないか。
結果「夢物語 The Living Dragon」は、「夢」をモチーフにしたオムニバス娯楽作であると同時に、俳優・倉田保昭自身のドキュメンタリーでもあるようで、その生きざまや精神のありようまで覗き込むような、ほかに類を見ない独創的な作品に仕上がった。
“公開直前みどころポイント”
ここからは、長年にわたって倉田先生を慕ってきた私のような“ドラゴンチルドレン”世代、カンフー映画好きはもちろんのこと、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」で初めてアクション映画にはまった人たちにも興味を持ってもらえるように、“公開直前みどころポイント”をご紹介しよう。
「追躡」 監督:坂本浩一
あらすじ
70年代の任侠映画「残俠列伝」。そのリメイク作の殺陣師を任された畑中(高岩成二)は、新人の頃に世話になった田中平蔵(倉田保昭)をオーディションにねじ込む。畑中の愛娘・真美(谷口布実)の協力で、真夏の稽古に励む平蔵だったが…

『追躡』
倉田保昭は日本大学時代、高倉健に憧れて東映俳優養成所の研修生になった。まだ何者にもなっていなかったが、夢見る気持ちだけは強かったあの頃、をモチーフにした第1話。「残俠列伝」は架空の映画だが東映のスタジオで撮影したためか、どことなく東映の雰囲気が漂い、倉田が粋な着流しで登場する場面はとにかくカッコいい!スピード感あふれる日本刀アクションに加えて、至近距離で拳銃を使う場面もレア。「ミスター平成仮面ライダー」の異名を持ちスーツアクターとして絶大な人気を誇る高岩成二はJAC(現JAE)出身だが少年時代に「闘え!ドラゴン」を見て倉田に憧れていたとのこと。舞台挨拶で登壇したおりに「次回はぜひ一緒にアクションしたい」と願い出ていた。倉田のコミカルな芝居が見られるほか、エンドロールには撮影風景が流れ、和やかで笑いの絶えない現場だったことがうかがえる。
「ハート・オブ・ドラゴン-龍的心-」 監督:下村勇二
あらすじ
内気で不器用なOLリナ(武田梨奈)は現実逃避からカンフーアクション映画に没頭する毎日。ある夜、夢の中で憧れのアクションスター、倉田保昭と出会い、謎の男(加藤雅也)に導かれながら自分自身と闘うことになる……

『ハート・オブ・ドラゴンー龍的心ー』
3話の中で最後に撮影されたのがこの第2話。下村監督は前の2人にやりたいことをやりつくされて悩んだあげく「田中平蔵というキャラクターを外し」「他人の夢に倉田保昭本人が登場するのはどうか?」という別視点の物語を発案。倉田の場面はスタジオで撮影、ドキュメンタリー的な側面ももつ、トリッキーな作品が出来上がった。武田梨奈扮するヒロインがカンフー映画オタクという設定で、冒頭は志穂美悦子そっくりのビジュアルで登場するなど、随所に遊び心も満載。「倉田保昭に殴られた!嬉しい!」と喜ぶ場面はすべてのオタクの夢だろう。
「帰って来たドラゴン」がリスペクトムービーとして掲げられているほか、カニ拳、目隠し拳法も登場、バックに流れる「死亡遊戯」の音楽、エンドロールの映像などなど、70~80年代のカンフー映画への愛とオマージュがぎっしり。なかでも一番の見どころは、道着姿の倉田保昭が6人の弟子を相手に素手で戦うクライマックス。「もし失敗しても撮り直さない」という下村監督の宣言のもと、一発勝負で撮影されたワンカット長回し、異様な緊迫感は必見!
「不思議の国のドラゴン」 監督:谷垣健治
あらすじ
2026年、80歳になった田中平蔵(倉田保昭)は突然1973年7月20日の香港に迷い込む。それがブルース・リーの命日だと気づいた瞬間、平蔵はポケットの中の心臓の薬を握りしめ、香港の街をがむしゃらに走り出す。果たしてブルースの命を救えるのか?

『不思議の国のドラゴン』
倉田保昭といえばやはり香港。香港で活躍する谷垣健治が監督し、香港ロケを敢行した最終話。盟友のサモ・ハンが撮影所の門番役で特別出演。テニスラケットを構えるサモ・ハンVSサイ(もどき)を持つ倉田という「七福星」(1985)のオマージュが最大のみどころになっている。アクションは3話の中で最もハードで、血まみれの倉田保昭がどんなにやられても何度でも立ち上がる姿が印象的。
冒頭に出てくる喫茶店のマスターは松井哲也。かつて倉田アクションクラブの若き希望の星として、香港映画「十福星」「チャイニーズ・ウォリアーズ」、日本映画「新宿純愛物語」などに出演。現在は芸能界を引退しているが、今回は特別に顔を出した。
主題歌「友へ」を歌っているのは倉田保昭。ブルース・リーを偲ぶ歌詞を書いたのも倉田本人。もともと谷垣監督が倉田主演のTVドラマ「闘え!ドラゴン」のエンディング曲「ロンリー・ドラゴン」を使うことを切望したが叶わなかったため、オリジナルを作ることに。倉田保昭はドラゴンブームの最中、歌手としても活躍していたのは有名な話。
エンドロールには倉田保昭の人生アルバムのような写真が次々と流れる。今はもういないスターたちの顔も見え、思わず一枚一枚ゆっくり見たい衝動にかられる。
と、ここまでたくさんの見どころポイントをおすすめしてきたが、実はまだまだ、まったく書き足りない!3話すべてに登場する謎の仔犬の“正体”は? 夢物語の原点とは? ネタバレ的なものも多く含むこれから先は、映画が公開されたあとで第二弾を執筆予定。物語はまだまだ続く!
映画『夢物語 The Living Dragon』
主演:倉田保昭
特別出演:サモ・ハン
出演:武田梨奈/加藤雅也/高岩成二/谷口布実
監督・脚本:坂本浩一/谷垣健治/下村勇二
プロダクション協力:(株)B.O.S-Entertainment / (株)ACTION CONCEPT / (有)ユーデンフ
レームワークス
製作:アートポートインベスト(株)/(株)倉田プロモーション/武蔵野興業(株)
配給:武蔵野興業(株) 協賛:(株)ティファ
©2026 アートポートインベスト(株)/(株)倉田プロモーション/武蔵野興業(株)
2026年/日本/日本・広東語・英語/DCP/シネスコ/78分


