これまで数々のヒット作、話題作、インディーズ系秀作を生み出してきたガス・ヴァン・サント監督ですが、彼の作品には独自の作風があり、そこがファンに長く愛される理由のようです。そんな彼の知っておきたいキーワードをいくつか厳選してみました。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
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1)ポートランドでの撮影にこだわる

デビュー作『マラノーチェ』から第2作『ドラッグストア・カウボーイ』、続く『マイ・プライベート・アイダホ』までの3作は「ポートランド3部作」と呼ばれる。いずれも監督の高校時代のホームベース、米北西部のオレゴン州ポートランドを舞台に撮影された作品で、自身にとって原点となる、ガス・ヴァン・サントという監督を語るうえで欠かせない3作。そのポートランドという土地柄は、昔はヒッピー文化などで知られ、いまも個性的なものを愛する文化ということで変っていない様子。そんな故郷を愛する監督は、さらにその後も『エレファント』『パラノイド・パーク』『ドント・ウォーリー』など度々この地で撮影を行っている。

ポートランド3部作の第1弾『マラノーチェ』
© mk2/WISEPOLICY2007

2)トレードマーク映像は雲?

一部で知られているのがガス・ヴァン・サント映画のトレードマーク的な描写として、空を流れる雲の映像を挿入する傾向がある。『マイ・プライベート・アイダホ』『エレファント』『ジェリー』『プロミスト・ランド』などで、その描写がたびたび目撃できるはず。これはフランシス・フォード・コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』からの引用だとか。ちなみにこの映画の主演は『ドラッグストア・カウボーイ』(この作品でも雲のショットが登場)のマット・ディロンということも何か因縁があるのだろうか。

3)好きな映画・監督は?

ガス・ヴァン・サントが好きな監督として挙げられるのが、まずスタンリー・キューブリック。『時計じかけのオレンジ』の照明方法(一般的な映画のライティングでなく、実際に存在する明かりを利用する)を絶賛し、その大きな影響は『エレファント』などに見られるという。

また敬愛するアルフレッド・ヒッチコック監督の名作『サイコ』を、白黒映画を色彩映画にする以外は、脚本もカット割りもオリジナル版のままにリメイクするという究極のオマージュを実行したことでも有名。何故そんなことをしたのか問われた彼は「往年のヒット作をそっくりそのまま作りなおしたら、同じ反響を得られるか実験したかった。うまくいかなかったけどね」と語っている。

ちなみにお気に入りの映画としてオーソン・ウェルズの『市民ケーン』やタル・ベーラの『サタンタンゴ』などを挙げている。

ヒッチコック監督の名作をそのままリメイクした『サイコ』(98)

4)低予算の方が映画を作りやすい?

ガス・ヴァン・サントを「アート系とハリウッド系の合間で映画を撮る監督」と称する人も少なくない。ただハリウッド系であってもビッグバジェット作品は手掛けず、どちらかと言えば低予算作品といえるものが多いことはフィルモグラフィーを見ても分かるだろう。

本人曰く「映画のために300万ドル出してもらうというのは相手(製作者)にとっても好条件で、彼らからの要求もそれほど多くありません。でも3000万ドルになると、有名俳優を使えとか投資額に見合うヒット要素を入れろとか、もっと要求が増えるでしょう。ただ低予算作品は大規模公開されない傾向にあります。それでも映画に力があれば口コミで観客に届いてくれるはずです」と、自分のやり方を説明している。

『デッドマンズ・ワイヤー』もたった19日の撮影期間でクランクアップしているが、それも予算とスケジュールの都合に合わせたそうだ。

『デッドマンズ・ワイヤー』もたった19日で撮影したという
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5)映画監督以外でも活躍

ヴァン・サントは、映画監督以外にいくつかの顔を持っている。まずミュージシャンとしては「Gus Van Sant」「18 Songs about Golf」という2枚のアルバムをリリースしている。

また親交のある“レッド・ホット・チリ・ペッパーズ”のアルバム「ブラッド・シュガー・セックス・マジック」のすべての写真、絵画、美術監督を担当。さらに写真家として「108 Portraits」という写真集を出版している。作家デビューもしており、ウィリアム・S・バロウズとの共著の他、処女作「ピンク」は中年の映像作家が若者2人組に出会うが、彼らは異次元からのメッセンジャーだったという物語。これは急死したリヴァー・フェニックスへ捧げたものだったという。

画像: ベルリン国際映画祭で愛用のカメラを構える

ベルリン国際映画祭で愛用のカメラを構える

6)忘れられない故リヴァー・フェニックス

監督にとって、『マイ・プライベート・アイダホ』で一緒に仕事をした故リヴァー・フェニックスは、特別な存在のようだ。最近のインタビューでも「今もリヴァーの写真を壁に飾っているし、いつも彼のことを考えている」と発言。古くからのファンなら『マイ…』の宣伝でリヴァーと監督が揃って仲良く来日したことを覚えている人もいるだろう。同じインタビューで「彼は9歳まで冗談ということを知らなかったせいか、あまり満面の笑みを見せることがなかったが、彼自身は面白い人で、笑える話を語ることが好きだった」と述懐している。

後年映画化した『ミルク』にもリヴァーに出演してほしかったそうだ。ちなみにリヴァーの妹レインとは『カウガール・ブルース』で組み、弟ホアキンとは『誘う女』で組んで、さらに『ドント・ウォーリー』では主演を委任している。フェニックス家との繋がりはまだ続いているようだ。

『マイ・プライベート・アイダホ』でリヴァーと一緒に来日

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