(文・杉山すぴ豊/写真・野口貴司(San Drago)/スタイリスト・杉本学子(WHITNEY)/ヘア・Kohey(HAKU)/メイク・朴ミキ/デジタル編集・スクリーン編集部)
ブレスレット¥696,300、リング(右手人差し指¥300,300、右手中指¥104,500、左手人差し指¥300,300、左手中指¥300,300)/全てクロムハーツ(クロムハーツ トーキョー)
大森元貴 プロフィール
1996年生まれの音楽家。バンドMrs. GREEN APPLEのフロントマンであり、全楽曲の作詞/作曲/編曲、さらに作品のアートワークおよびミュージックビデオのアイデアまで、楽曲に関するすべてのクリエイションとプロデュースを行っている。
Mrs. GREEN APPLEは2015年にミニアルバム『Variety』でメジャーデビュー。以降、毎年オリジナルアルバムのリリースと着実なライブ活動を重ね、日本を代表するバンドに成長。
レコード大賞3連覇を果たし、3年連続出場となった紅白では白組トリを務め、IFPI発表の2025年世界最多売上アーティストで13位、ベストアルバム『10』も世界最多売上アルバム10位にランクインし、世界規模でのセールス実績も示した。
ソロアーティストとしても今年2月に1stミニアルバム「OITOMA」をリリースするなど活躍の幅を広げる傍ら、俳優としても活躍。2025年に公開された映画『#真相をお話しします』ではデビュー作にして、初主演を務め、NHK連続テレビ小説『あんぱん』にて、いずみたくをモデルとした作曲家・いせたくや役として出演。多くのエンタメショーや冠TV番組『テレビ×ミセス』のMCを務めるなど、幅広くエンタテイナーとして活動を展開中。
大のスパイダーマン好き、マーベル好きを公言しており、今回の『スパイダーマン ブランド・ニュー・デイ』のタイアップ曲「Brand New」を手掛けた。
ケヴィン・ファイギ氏との会話で気付いた、
スパイダーマンならではのキーワード
──「BrandNew」、曲を聴かせていただき、また歌詞も読みこんだんですが素晴らしい曲でした。もちろん歌としても素敵なんですが、“スパイダーマンの歌”としてふさわしい。仮にいまスパイダーマンが特撮ドラマかなんかで放送されていたら、その主題歌とかになってもいいぐらいこのヒーローのことを語っているなと。
大森:ありがとうございます! それはすごくうれしいですね! スパイダーマン・ファンの方にどう受け入れられるか?が一番のポイントなので。自分が大好きなスパイダーマンに、そして今回このようなチャンスをくださった方々にどう愛情で返すかというつもりで作りました。
── 歌詞全体に“スイング”とかスパイダーマンをイメージさせる言葉を散りばめつつ、「犠牲を払って何を救う」「君を救う。それはつまり僕を救う」というフレーズに、本当にスパイダーマンというかピーターの物語やテーマが盛り込まれていますね。
大森:自分の中にあるスパイダーマンについての思い出や記憶をひっぱりだしながら作りました。実はこの曲を作る前にケヴィン・ファイギさん(註:マーベル・スタジオの社長でMCU/マーベル・シネマティック・ユニバースのプロデューサー)、エイミー・パスカルさん(註:スパイダーマン映画のプロデューサー)とロサンゼルスでミーティングしたんです。業務的な打ち合わせというより、スパイダーマンってなんだろうね?みたいなことをみんなでワイワイ語る場になって。そのときケヴィンさんが「自己犠牲」という言葉を何度もおっしゃっていたのが印象的でした。僕もスパイダーマンって自己犠牲のヒーローと思っていたのでここが曲作りのヒントになりました。
── ケヴィンさんと大森さんたちのミーティングの様子をビデオでみましたが、皆さん本当に盛り上がってましたよね。
大森:あの時ケヴィンさんたちが僕らを温かく受け入れてくれたのがすごく嬉しかったし勇気になりましたね。スパイダーマンというのはとてつもなく大きい存在だから、その輪に入れたといいますか。先ほどどう愛情で返すか、みたいな言い方をしましたが、ケヴィンさんたちにもこの曲で恩返したいと思いましたね。
日本のミュージシャンとして大きなスパイダーマンに携わる以上、やはり“大いなる責任”を感じるわけです。自分はスパイダーマンの大ファンでもあります。だからこそ「どういう曲だったら(ファンは)許せるのか」「(この曲は日本語吹替版のエンディングで流れるので)鑑賞後の余韻を邪魔しない曲にどうするのか」と考えながら作りましたね。あとスパイダーマンって軽妙なアクション・エンタメであると同時にピーターの心の葛藤を描くドラマですよね。だから曲自体は明るく、でも歌詞の方は、スパイダーマンの物語に皆が感じる、こうした“共通項”で組み立てました。
スパイダーマンは
すでにいて当たり前のヒーローのヒーローだった
── 大森さんのスパイダーマンへの思いが伝わってきます。もともとスパイダーマンを知るきっかけ、好きになるきっかけはなんだったんですか?
大森:これは難しい質問ですね。というのもスパイダーマンというのはすでに当たり前に存在しているヒーローだったんですよね。だから特別なきっかけというか思い出が浮かばないんですが、あえて自分の中で一番古い記憶は、父と家でスパイダーマンの映画を観ていたなと。TV放送かVHSだったかはわからないんですが、サム・ライミ版でした。ヒーローとしてかっこいいし、キャッチーですよね。その一方でピーターの悩みを描いている。なにかを得る一方でなにかを失う。こういう誰もが感じるもの、特に青年期に人が感じるものを彼を通して見る、みたいな感覚でした。それが心に刺さったんだと思います。
── 以来、スパイダーマン映画をずっと見てらっしゃるわけですが、歴代スパイダーマン映画で一番好きなシーンとか印象に残っているところありますか?
大森:どの映画にも好きなシーンがあるんで選べないですね。でも例えば『スパイダーマン2』の冒頭のピザのシーンとか面白いですよね。ああいうのがスパイダーマンらしいなあと思います。げっ!となったのはトビー・マグワイアのピーターの指から無数の小さな毛、触手?みたいなものが生えてくるところ。ゾワ!っとしました(笑)。あのおかげでスパイダーマンが壁に登れるんだっていうのがよくわかるので、いいシーンではあるんですけどね。壁にひっつく力は欲しいけれど、あの触手は苦手です(笑)
──(笑)。スパイダーマンの能力で他に欲しい力ってあります?
大森:スパイダーセンスですね。危険を事前に察知する力ってやっぱり便利です。トム・ホランドのスパイダーマン映画では、スパイダーセンスが重要な役割を果たすシーンが多い。蜘蛛糸発射のウェッブシューティングですが、昔これのおもちゃ持ってたんですよね。で、家でやってたんですけどウェブは発射した後は片づけが大変だなって(笑)
── サム・ライミのスパイダーマンの話が出ましたがアンドリュー・ガーフィールドのスパイダーマンはどうですか?
大森:アメスパ(『アメイジング・スパイダーマン』)ももちろん好きです。サム・ライミ版は、最初の大型映画化だったから、あのサム・ライミがスパイダーマンをどう撮るか、みたいな見方をされてたと思うんです。一方、アメスパは、よりコミックとかのスパイダーマンの物語・描き方に忠実なんじゃないかな。すごく明るい感じで物語が進むんですけど『アメスパ2』の最後にはとんでもない悲劇が待っていたりして。スパイダーマンってどっか浮足立ってるけれど、結局足元をすくわれるみたいな。こういう軽快さと重厚さがあるのがスパイダーマンの特長で、アメスパは特にその均衡がいいなと思います。あと『アメスパ2』に出てくるマックス。マックスにとってスパイダーマンは“特別な人”ですが、スパイダーマンにとって彼はいつものノリで助けた“数ある市民の中の一人”でしかない、このギャップがマックスのヴィラン(註:エレクトロ、電気を操る怪人)化に拍車をかけるし。こういうリアルさがアメスパの魅力ですかね。
── エレクトロの話が出ましたが、スパイダーマン映画のヴィランで他に印象に残っているのは誰かいますか?
大森:サンドマン(註:『スパイダーマン3』のメイン・ヴィランの一人)ですね。体が砂になっちゃうなんてすごく怖いし、同時にすごく哀しい。大事なものもつかめない。基本的にスパイダーマンのヴィランって、もれなく被害者というかかわいそうな人が多い。だから憎めないし、感情移入しちゃいますよね。
── 被害者でありヴィランという言葉が出たんですが、僕は去年大森さんが主人公“鈴木”役で出演された映画『#真相をお話しします』がすごく好きです。あの “鈴木”も被害者でありヴィランですよね。だからラストの凄みとかすごく怖かった。大森さんはヴィラン役とか向いてるなあと思って。もしケヴィン・ファイギ氏からこれが縁で映画やドラマの方のオファーも来たらヴィラン役どうですか?
大森:(笑)そんなオファー来たらどうしよう⁉ ただ僕は確かにヴィランの方に共感しちゃうんですよね。「鬼滅の刃」も鬼の方に同情しちゃうし。ケヴィンさんから出演依頼あったら嬉しいですけどね。ただケヴィンさんには「ロスに住まないか?」って言われたんですよね。逆に僕はケヴィンさんに「『テレビ×ミセス』(註:Mrs.GREEN APPLEがMCをつとめるバラエティ番組)に出ませんか?」と冗談でお誘いしたんですが(笑)
※全文はSCREEN2026年9月号に掲載
インタビューを終えて
楽しいインタビューでした。忙しいスケジュールをぬって1時間もこのインタビューのために時間を割いてくださいました。大森さんがスパイダーマンを本当にお好きでスパイダーマン・トークになりました。このインタビュー記事でもわかるとおりスパイダーマンに対しての解釈・とらえ方が鋭い。そしてなによりも愛があります。
ピーターはスパイダーパワーで人々の笑顔を守るヒーローですが、Mrs. GREEN APPLEは音楽というスーパーパワーで人々の笑顔を作るヒーローです。
Mrs. GREEN APPLEのコラボソング「Brand New」は『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本版主題歌として吹替版のエンドロールで流れます。(杉山すぴ豊も本作の吹替版の監修をつとめさせていただきました)『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』はぜひ日本語吹替版でもお楽しみください。本当にスパイダーマンの映画の最後にピッタリの曲です。


