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「既視感のある領域を歩きたくない。
自分が面白いと思うものを作る。
それが映画作りの本質だ!」
映画体験の原点は
『明日に向って撃て!』
「僕の物語は、基本的に街の詐欺師の話だ。それが得意分野なんだ」
これは、ガイ・リッチーが『アラジン』(19)を監督したときに語った言葉だ。この言葉通り、30年近くに渡って一癖ある男たちが繰り広げる痛快エンターテインメントを送り出してきたガイ・リッチー。ここでは、その作品の魅力を探ってみたい。
映画監督としてのリッチーの原点に当たるのが、幼少期の映画体験だ。1968年に生まれた彼は、翌69年公開の『明日に向って撃て!』を観て、映画監督を志す。本誌読者には説明不要だろうが、『明日に向って撃て!』は、西部開拓時代のアメリカを舞台に、2人組の強盗ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)&サンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)の波乱万丈な生き様を描いたアメリカン・ニューシネマを代表する一本だ。改めて振り返ってみると、裏社会に生きる主人公、スタイリッシュな演出、鮮やかな幕切れなど、後のリッチー作品に通じる要素が満載で、「原点」と呼ぶにふさわしい。この出会いがきっかけとなり、映画監督への道を踏み出したリッチーだが、15歳で学校を中退すると、映画学校に入学するのかと思いきや、「映画学校卒業生の作品は退屈だ」と、なんと雑用係から映画界でのキャリアをスタートさせる。この型破りな歩みも、クセ者好みのリッチーらしい。やがて、MVやCMの監督を経て20代最後の年、幼なじみのマシュー・ヴォーンがプロデューサーを務めた『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98)で、念願の映画監督デビューを果たす。
莫大な借金を背負った男たちが一発逆転を賭けて挑む強盗計画の顛末を、ギャングやマフィアなど裏社会の男たちが入り乱れつつ、ブラックユーモア満載でスタイリッシュに描いた『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』は高評価を得て、リッチーは一躍注目の存在に。その上、この作品を気に入ったブラッド・ピットが、本人からの直談判を経て監督第2作『スナッチ』(00)に出演するというご褒美までついてきた。男たちのダイヤ争奪戦を描いた『スナッチ』は、ハリウッドスターが出演(ベニチオ・デル・トロも)したことで、さらなる注目を集める。
デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』
ブラッド・ピットも出演した『スナッチ』
武道家の顔も持ち
ジェイソン・ステイサムらとアクション映画を連発
こうして、新進気鋭のスター監督となったリッチーは、演出にアニメーションを取り入れた『リボルバー』(05)、ロンドンの裏社会を舞台にしたクライムコメディ『ロックンローラ』(08)で、その手腕に磨きをかけていく。
そして、名探偵シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニーJr.)と相棒ワトソン(ジュード・ロウ)の活躍を描いたハリウッド大作『シャーロック・ホームズ』(09)で“バディもの”を開拓すると共に、アクションがグッとスケールアップ。従来の“ホームズもの”の常識を打ち破ったこの作品は、リッチーの個性と痛快なアクションの相乗効果で大成功を収め、続編『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(11)も製作された。スケールアップしたアクションを交えたバディものは、往年の人気スパイドラマをリメイクした次作『コードネーム U.N.C.L.E.』(15)でさらに進化。主人公のエリートスパイ、ナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンが共に脛に傷持つ身という設定は、いかにもリッチーらしい。さらにこの路線は、『コヴェナント/約束の救出』(23)で「戦争映画」という新境地に辿り着く。今までのリッチーにはなかった迫真の戦場描写に目を奪われるが、アフガニスタンに派遣された米軍兵士と現地通訳の絆を描いた物語には、紛れもないリッチーの刻印が打たれている。
『シャーロック・ホームズ」
『シャーロック・ホームズ』デジタル配信中
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©2009 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.
『コードネーム U.N.C.L.E.』
『コードネーム U.N.C.L.E.』 デジタル配信中
権利元:ワーナー ブラザース ジャパン
ブルーレイ&DVD発売元/販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©2015 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
空手や柔道、ブラジリアン柔術黒帯という武道家の顔も持つリッチーは、自作にも肉体派のスターを好んで起用。その代表的な存在が、ジェイソン・ステイサムだ。飛び込み競技の英国代表として活躍した経歴と独特のユーモアセンスを兼ね備えたステイサムは、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』で俳優デビュー。以後も『リボルバー』、『キャッシュトラック』(21)、『オペレーション・フォーチュン』(23)などで、リッチーとすでに5度のタッグを組み、製作中の『Viva La Madness(原題)』の主演も決定している名コンビだ。ほかにも、『ロックンローラ』のジェラルド・バトラー、『キング・アーサー』(17)のチャーリー・ハナムなどがいる。
『アラジン』のイベントでウィル・スミスと

『リボルバー』のプレミアでジェイソン・ステイサムと
タフな女性が登場するのも
リッチー作品の特徴
その一方で、実はタフな女性が活躍するのも、リッチー作品の特徴だ。2000年に“クイーン・オブ・ポップ”マドンナと結婚すると、彼女の主演で『流されて…』(74)をリメイクした『スウェプト・アウェイ』(02)を撮る(マドンナとは08年に離婚)。『シャーロック・ホームズ』では、ホームズのライバルとして女泥棒アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)が登場。『アラジン』では、王になることを目指す王女ジャスミン(ナオミ・スコット)の活躍を描いて見せた。そして、トム・ハーディ主演のドラマシリーズ「モブランド」(25)では、ギャングのボスの妻に扮したヘレン・ミレンが、ゴールデングローブ賞ノミネートを果たし、着実に女性の存在感が増している。
『スウェプト・アウェイ』で組んだマドンナとは一時夫婦に
製作を担当した配信ドラマ「モブランド」のピアース・ブロスナン、トム・ハーディと
こうして迎えたリッチーの最新作が『グレイ・ミッション』だ。イギリス海兵隊“SBS”とアメリカ海軍“Navy SEALs”の元隊員が腕利きの男たちのチームを率いて繰り広げる10億ドルの奪還ミッションを、息つく間もないド迫力のアクション満載で描き出す。主演は、『コードネーム U.N.C.L.E.』、『アンジェントルメン』(24)に続き、リッチー作品3度目の主演となるヘンリー・カヴィルと、『コヴェナント/約束の救出』のジェイク・ギレンホール。その依頼人となる美貌の女性弁護士には、『アンジェントルメン』、『ファウンテン・オブ・ユース 神秘の泉を探せ』(25)に続き、こちらも3度目のタッグとなるリッチーお気に入りのエイザ・ゴンサレスが扮している。まさに、「ガイ・リッチーの集大成」といっていい。そんな『グレイ・ミッション』について、リッチーはこう語っている。
「オリジナルの物語を作ることは重要だ。既視感のある領域を歩きたくない。自分が面白いと思うものを作る。それが映画作りの本質だ」
常に挑戦を続けてきたその歩みを振り返れば、この言葉に嘘がないことが分かるはずだ。リッチーが強い意気込みを持って挑んだ『グレイ・ミッション』は、彼のキャリアを踏まえて観ると、新たな魅力が発見できるはずだ。
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最新作『グレイ・ミッション』
新作『Wife and Dog』撮影合間にベネディクト・カンバーバッチ、ロザムンド・パイク(背中を向けている)と談笑
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