カバー画像:『バックルームズ』より © 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
興行的にも批評的にも大成功を収めた『バックルームズ』
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今の若い世代は
映画館に興味を持っていないという
従来の常識を覆した2作
この初夏の『バックルームズ』『オブセッション 災愛』の大ヒット現象が、ハリウッドにさまざまな衝撃を与えている。その状況を見ていこう。
まず、2作の大ヒットぶりがインパクト大。ほとんどのホラー映画の週末興収は、初登場で上位になっても、次週に急降下する。ところが、5/29全米公開の『バックルームズ』は初登場で第1位に輝き、翌週からも3位、4位、4位と上位をキープ。5/ 15公開の『オブセッション 災愛』は初登場時こそ第3位だったが、翌週から2位が3度も続く大ヒット。2作とも各配給会社の歴代興収記録を塗り替え、『バックルームズ』はA24の歴代第1位、『オブセッション 災愛』はフォーカス・フィーチャーズの歴代第1位となり、今も大ヒットを続けている。
『バックルームズ』のキウェテル・イジョフォーとケイン・パーソンズ監督
この2作には共通点が多い。まず、監督が若く『バックルームズ』のケイン・パーソンズは21歳、『オブセッション 災愛』のカリー・バーカーは27歳で、どちらもZ世代。両監督ともネットの動画配信出身で、映画が低予算のホラーなことも共通だが、もう一つ、ハリウッドに衝撃を与えた共通点がある。それは観客が「映画館に行かずにネットで動画を見ている」と言われるZ世代(1990年代半ば〜2010年代生まれの若い世代)なことだ。米映画業界紙「ヴァラエティ」はこの現象について「この2作のヒットは、今の若者は映画館に興味を持っていないという、従来の常識を覆した。Tik
Tok世代も見たい映画さえあれば、映画館に行きたいと思っているのだ」と報じた。
『オブセッション 災愛』のバーカー監督も、米映画業界紙「ハリウッド・リポーター」のインタビューで、同じ意見を表明。取材者に大手映画スタジオに理解してほしいことは何かと問われ、「彼らには、私たちZ世代が駄作にはうんざりしていることを理解してほしいと思います。私たちは、巨大なIPビジネスの映画ではなく、オリジナルな映画、いい映画を見たいんです」と語っている。
『オブセッション 災愛』公開中、パルコ、ユニバーサル映画配給
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カリー・バーカー監督
人気監督や作家も
こうした新世代監督による作品の成功を称賛
そして、ハリウッドの人気監督たちも、この2作のヒットを大歓迎。スティーヴン・スピルバーグ監督は『ディスクロージャー・デイ』プレミアの取材で「彼らの成功を心から嬉しく思う。彼らの映画は製作費が低く、『オブセッション 災愛』は100万ドル以下、『バックルームズ』も1000万ドル程度だったのに、これほど成功しているのは素晴らしい。ただただ拍手を送りたい。『バックルームズ』はこれから見るが、『オブセッション 災愛』は見て、とても気に入った」と発言。
また、『オデュッセイア』のクリストファー・ノーラン監督も、英「デイリー・テレグラフ」紙の取材で、この2作のヒットは、映画を取り巻く状況が正しい方向に向かっている証拠だと称賛。「だから私は、周囲から“若い観客の集中力は『オデュッセイア』のような3時間のギリシャ叙事詩を楽しめるほど、長くは続かない”と言われても、同意できなかったんだ。あの2作は、どちらも観客に考えさせる作品だ。『バックルームズ』の一部は、まるでデヴィッド・リンチ監督の難解な映画のようだが、若い観客たちは、ああいう映画に夢中になれるんだ」。
そして、昨今、映画化作がまた増えている人気作家スティーヴン・キングも、さっそく『オブセッション 災愛』を見て感想を「X」に投稿、「私の採点はB+だ。今もまだあの映画について考え続けている。ユーモアとホラーのミックス具合が変わってる」と高得点をつけている。
スティーヴン・スピルバーグ
クリストファー・ノーラン
「彼らは映画を作る前に
オンラインで動画作品を作る腕を磨いている」
このヒット現象は、業界人も衝撃を与え、多数の人物が発言しているが、中でもワーナー・ブラザースの共同会長兼CEOマイケル・デ・ルカのプロデューサー討論会での発言が興味深い。
彼はこの現象の理由を「この監督たちが、映画を監督する前から、オンラインで動画作品を創る腕を磨いているからだ」と分析する。監督たちは以前からオンラインで動画を配信し、視聴者は彼らに直接意見を伝えている。監督たちは、それを見て観客が好む映画を創る技術を磨いてきた、というのだ。
確かに『バックルームズ』のパーソンズ監督は、16歳だった2022年から、バックルームをモチーフにした短編動画を多数ウェブに投稿している。『オブセッション 災愛』のバーカー監督は、2 0
1 7年に、同作にも出演している長年のパートナー、クーパー・トムリンソンと一緒にYouTubeにチャンネル「That's a Bad Idea」を立ち上げ、多数の動画を配信してきた。通常の商業映画は、2、3回の試写でスタジオ重役や観客の反応をみて手直しするが、デ・ルカは「彼らは、オンラインで10億回も試写会をやっているようなものだ」と言う。
監督2人は、観客の反応を見て彼ら好みの映画を作る。そもそも監督たちは観客と同じZ世代なので、彼らの感覚が分かる。そしてネットでの観客との交流は、監督のファンを生み出し、新作映画の告知にもなる。こうして、ネット動画を楽しむZ世代が映画館に足を運ぶようになったというのだ。
スティーヴン・キング
マイケル・デ・ルカ
大手スタジオが
ネット由来の映画化企画の獲得に次々乗り出す
この分析の説得力を証明するかのように、ハリウッドでは、ネット由来の映画化企画が増加し、今や大手スタジオが映画化権の獲得に乗り出している。まず、YouTubeで人気のホラー動画シリーズ「マンデラ・カタログ」The Mandela Catalogueの映画化権をアマゾンMGMスタジオ、アンブリン、ユナイテッド・アーティスツが取得。やはりYouTubeの人気短編映画「オープン・ドア」Open Door は大手ではないがヴァイン・フィルムズが映画化を発表。また、動画ではなく、ネット由来のアイテムを映画化する企画もあり、ネットの人気キャラクター「サイレンヘッド」Siren Head はワーナー・ブラザースが、やはり人気キャラクターの「カートゥーン・キャット」Cartoon Cat はソニー・ピクチャーズ傘下のトライスターが、映画化権を取得した。
はたしてネット由来の映画の流行は続くのか。すでに2監督には新作企画が続々。『バックルームズ』のパーソンズ監督は『バックルームズ』続編と、それとは別のオリジナル映画の企画が進行中。A24は彼を手放したくないが、大手ワーナーとユニバーサルも彼に接触中だ。
また『オブセッション 災愛』のバーカー監督は、彼が主演も務めるコメディ・ホラー映画『幽霊どころじゃない』Anything But Ghosts をフォーカス・フィーチャーズで撮影済み。さらに『悪魔のいけにえ』のリブート企画がA 24で進行中で、大手ユニバーサル・フィルムズとブラムハウス/アトミック・モンスターと組む新作企画もある。
しばらくこのネット発祥映画のブームから目が離せなくなりそうだ。
『バックルームズ』のメイキング・ショット
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
『バックルームズ』のメイキング・ショット
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『バックルームズ』のメイキング・ショット
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