長編映画史上初、全編IMAX®で撮影された『オデュッセイア』。ぜひIMAX®シアターで楽しんでいただきたい一作です。IMAX®とは何か、そして本作ならではの“IMAX®映え”するシーンを紹介します。(文・神武団四郎/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:「グランドシネマサンシャイン 池袋」 IMAX Corporation

クリストファー・ノーランの最新作『オデュッセイア』が公開される。『ダークナイト』以降すべての長編監督作でIMAX®フィルムを導入してきたノーランだが、今作は全編IMAX®撮影に挑んだ意欲作だ。

一般的な35㎜フィルムの約10倍 圧倒的情報量の“IMAX®”

その魅力を紹介する前に、高品質の映像やサウンドが味わえる“ラージフォーマット”の代表格、IMAX®についておさらいしておこう。70年代にカナダで開発されたIMAX®は、ワイドスクリーン用の70mmフィルム(撮影用フィルムは65mm)の縦3コマ分を1コマに使った大型フィルムの規格。スクリーンサイズは1.43:1と正方形に近く、一般的な35mmフィルムに比べ約10倍の広さを持っている。視野を覆うような大スクリーンに映し出される高精細な映像と、巨大なサラウンドスピーカーによる迫真のサウンドがかつてない没入体験を提供したが、特殊な撮影・上映システムが必要。日本にも専用シアターが登場したが、ソフトが限られていたこともあり普及しなかった。

ところが映画がデジタル時代に突入すると、IMAX®にもデジタル規格が誕生。4.6K以上の解像度を持つIMAX®認定のデジタルシネマカメラの映像を専用シアターで上映すれば、1.90:1の縦に大きいワイドスクリーンで高品質な映画が味わえる(一般的なワイドスクリーンは2.35:1)。8月現在、日本全国にあるIMAX®デジタルシアターの数は60スクリーン超。認定カメラ以外のシステムによる作品も、IMAX®仕様にリマスターすることで高品質な映画体験が可能になる。

高精細な映像&鮮明な音響を味わえる“IMAX®シアター”

没入型映画体験をうたうIMAX®シアターの特徴は、高精細で鮮明な映像やサウンドを巨大スクリーンで味わえること。作り手の意図に合わせシーンごとに映像やサウンドをリアルタイムで調節することで、どのシアターでも最適な環境での映画体験が可能だ。近年はランプではなくレーザー光で映写するIMAX®レーザーも普及。より鮮明でシャープな4K映像が味わえるようになった。さらに最上級のIMAX®レーザー/GTテクノロジー対応シアターでは、2台のレーザープロジェクターからひとつの映像を同時に映写することで明るさ、色彩、コントラストともにより高品質な上映を実現。明るさが担保できるため、IMAX®フィルムと同じ1.43:1の縦長上映が可能になった。

『オデュッセイア』で炸裂IMAX®だからこその“縦”映え

そんなIMAX®で全編撮影された『オデュッセイア』の序盤の見せ場が、さらわれた王妃を連れ戻すため、スパルタ軍がトロイアに攻め込んだトロイア戦争。スパルタ王のもと戦場に向かったイタケの王オデュッセイアは、木馬に潜んで敵陣に入り込みスパルタ軍を勝利に導く。実写主義のノーランは、撮影にあたり10メートルもの巨大な木馬を作製した。『トロイのヘレン』(56)や『トロイ』(04)などこれまで映画で描かれてきた木馬はどれも4本の足で立った姿をしていたが、今作は後ろ足で立ち上がった跳ね馬のようなデザイン。前足を高く上げた巨大な木馬を見上げるカットは、IMAX®の縦長の画面でよく映える。

続いての見せ場は、食料を求め上陸した島で遭遇する10メートル超の一つ目巨人キュクロプスとの戦い。そうと知らず棲み処に入ってしまったオデュッセウスらは、次々と巨人の餌食にされてしまう。巨体をあらわにしたキュクロプスとその前で立ち尽くす戦士たち、背後の洞窟の壁や天井までひとつフレームに収めたスケール感はまさに圧巻!『ダークナイト』の撮影にIMAX®を取り入れた理由のひとつが高層ビルをそのまま映し出せることだったが、今作でも高さを活かした画作りが印象的だ。キュクロプス以外にも、3メートルはありそうなライストリュゴン族の兵士たちとの攻防戦、6つの頭を持つドラゴン風の怪物スキュラなど見上げるようなキャラクターがスケール感ある見せ場を作った。

眼前には戦場・冥府・魔女の家──IMAX®で、そのすべてを体感する

ワイドスクリーンの横幅のまま縦に長いIMAX®は、神話世界の中に入り込んだような錯覚を覚えるほど体感的。スクリーンの中の世界にどっぷり浸れるのもIMAX®のアドバンテージだ。次々に建物や塔が倒壊し、人々が逃げ惑うトロイア街を進んでいくオデュッセウスの主観映像は戦場の怖さにあふれ、死者たちが徘徊する霧深い冥界の暗さと威圧感は思わず背筋が寒くなるほど。そして嵐の真っただ中で翻弄される帆船や筏は、まるで荒波にもまれているような臨場感が味わえる。派手なシーンだけでなく、オデュッセイアの故郷の館や街角、巨大な女神像が飾られた神殿、庶民の粗末な家から不気味な魔女の小屋まで、どれも目の当たりにしているように体感できる。ノーランが全編IMAX®で撮ったのも納得だ。

IMAX®シアターであればこれら映像群が1.90:1の画角で楽しめるが、IMAX®フィルムで撮影された本作の画角は正方形に近い1.43:1。本作を余すことなく味わえるのは、IMAX®レーザー/GTテクノロジー対応シアターのみなのだ。東京と大阪に一館ずつと条件は限られてしまうが、可能であればぜひ足を運ぶことをお勧めしたい。なお千葉県成田市には1.75:1という独自規格のIMAX®シアターがある。こちらでの上映は不明だが、一般のIMAX®シアターより広い画角で楽しめるスクリーンであることを記しておく。

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