自身の友情から生まれた、笑って楽しめる物語
──監督ご自身の経験と想いを作品に込められたとのことですが、実際にどのような実体験が元になっているのでしょうか? また、ご自身の思い出を通して本作で観客に伝えたかった「仲間との友情」への想いをお聞かせください。
私にも小学校から現在まで長年付き合っている4人の親友がいます。高校を卒業するとき、みんなで初めて一緒に旅行に行きました。ところが、いざ済州島に到着すると宿はひどい状態。しかも旅行中、ずっと雨が降り、友達の一人は怪我までしてしまい、私たちの初めての旅行は散々なものになってしまいました。今でもその友達に会うと、当時のことを思い出して、話をします。
旅行そのものは台無しになってしまいましたが、学生時代には世界の誰よりも大切だった友達との思い出を振り返りながら、この映画を作ることにしました。

──「観客を笑わせ、楽しませる作品を作りたい」と志してきた監督ですが、ナム・デジュン監督にとってコメディ作品を手掛ける上で最も大切にされている演出上の哲学や信条は何でしょうか?
誰かを不快にさせるようなコメディは、できる限り避けるよう努力しています。特に「自分の隣にいる人に笑顔や笑いを与えられないのなら、大勢の観客に笑いを提供しようとすること自体が偽善だ」という考えを持っています。
そのため、作品を一緒に作るスタッフやキャストに対しても楽しい現場を作り出すために、私自身が(劇中の仲間たちのように)おバカだけど面白い友達になろうと努力しています。

──劇中に登場する4人は誰もが愛すべきユニークな個性を持っています。彼らの“おバカさ”の中に秘められた「人間らしさ」や「愛おしさ」のバランスは、どのように設計・生み出されたのでしょうか?
おバカな自分自身と、私の実際の友達を大いに参考にしました。個人論として、おバカな人に悪人はいないと思っています。それこそが本当の人間味なのではないでしょうか。ファンの皆さんのためにひとつ秘密をお話ししますと、カン・ハヌルもおバカです(笑)。もちろん、私よりもはるかに優しくて人間味に溢れていますよ。

4人の俳優が生み出した、本物の友情とケミストリー
──主演キャスト4人のアンサンブルが非常に魅力的ですが、実際の友人同士のような息の合った空気感を作るために工夫されたことや、4人が揃ったことで生まれた予期せぬ化学反応について教えてください。
撮影が始まる前から、4人の俳優たちが実際に友達のように親しくなってくれることを願っていました。そのため何度か集まりを調整し、一緒にお酒を飲んだりもしながら、クランクイン前にすでにすっかり親しくなってくれていたんです。そして撮影が始まると、俳優たちは実際に劇中の友達そのものに変わっていました。
私が気を配らなければならなかったのは、俳優たちが親しくなりすぎたせいで、時々度を超えた、ちょっとやりすぎな悪ふざけをするのを止めることだけでした(笑)。
予想していなかった化学反応は、4人の俳優たちがみんな次第におバカになっていってしまったせいで、現場の全員が笑いをこらえるのが大変だった点です。

──『ラブリセット 30日後、離婚します』に続きカン・ハヌルさんと再タッグとなりました。劇中で頼もしいリーダーを演じられている彼ですが、監督からご覧になって、現場でのカン・ハヌルさんの存在感や、演出指示を超えて作品のコメディ要素を引き上げてくれた部分について教えてください。
カン・ハヌルは、これまで出会った俳優の中で最も聡明でセンスに溢れた俳優です。特定のエピソードというよりは、すべてのシーンを称賛したいほどです。
劇中でもリーダー的な役割を担っていますが、実際の撮影現場でも他の俳優たちと気さくに話し合いながら、演技ではなく、本当の友人同士のようなケミストリーを作り上げてくれたと思います。
そのおかげで、私の演技指導だけでは生まれなかったような、リアルでコミカルなシーンを完成させることができました。

──チャウヌさんは本作が映画初主演となります。圧倒的なビジュアルを持ちながらユーモラスな役柄を演じられていますが、監督からご覧になって、彼の存在感やコメディセンスについてどのように感じられましたか?
チャウヌの顔そのものが、もはやコメディです。彼の顔を見ると笑いがこぼれてきますし、彼は世界で一番面白い人間です。
──紅一点となるハン・ソナさんをはじめ、チェ・グィファさん、ユン・ギョンホさん、コ・ギュピルさん、知英(KARA)さんなど大変豪華なキャストが集結しています。彼らが作品にもたらした魅力や、全体のトーン&バランスを保つために演出上意識された点について教えてください。
ハン・ソナのおかげで、ややドライになりがちな男友達同士の物語が、格段に明るくなったと感じています。ハン・ソナが持つ特有の明るく陽気な雰囲気のおかげです。男友達の中にいても際立った存在感を放つことを意図していたのですが、私の意図以上に素晴らしく演じ切ってくれました。
そして、チェ・グィファ、ユン・ギョンホ、コ・ギュピルといったベテラン俳優たちが加わってくれたことで、作品の品格を引き上げてくれたと思っています。
知英(KARA)もまた、これまでに披露したことのなかった悪役としての演技で、作品にフレッシュな魅力を加えてくれました。
出演シーンの長さにかかわらず、すべての俳優たちがそれぞれの存在感を発揮できるように、しかしオーバーになりすぎないよう全体のトーンとバランスを考慮しながら演出いたしました。

笑いに満ちた撮影現場と作品を彩る音楽
──今回は韓国だけでなく海外での撮影もあったかと思いますが、撮影時の苦労やハプニングなどのエピソードはありましたか? また、キャスト陣の仲の良さやアドリブから生まれた注目の名シーンがあればぜひ教えてください。
楽しい現場だったので苦難は特になかったのですが、あえて言うなら、やはり暑さですね。暑さの中で撮影を無事に終えてくれたキャストとスタッフの皆さんに、改めて感謝の言葉を伝えたいです。
ただキム・ヨングァンはいつも人形を持ちながら演技をしなければならなかったので、大変だったはずです。それでも嫌な顔一つせず演じ切ってくれてありがたかったです。
記憶に残っているエピソードは、劇中のおバカな仲間たちが水遊びをするシーンです。実は撮影の休日に、キャストたちが実際に水遊びをしながら、お互いに悪ふざけをしている姿を私が目撃しました。それがあまりにも面白かったので、思わずスマホで動画を撮り、後でキャストたちに見せたんです。キャストたちもその映像を見ながらアイデアやアドリブを付け加え、実際の水遊びシーンの撮影に挑みました。演技なのか、本当に遊んでいるのか、区別がつかないほど、愉快で弾けた撮影になりました。

──劇中を彩るフェスの本格的なEDMサウンドや爽快な劇伴、そして主演キャストたちが自ら歌う主題歌「THE FIRSTRIDE」が非常に印象的でした。チョン・サンウ音楽監督との楽曲制作の裏側や、キャスト陣の歌唱収録時に印象的だったエピソードがあれば教えてください。
作品の主な内容が音楽に関連しているため、音楽制作には非常に気を配りました。特にチョン・サンウ音楽監督は、実際にEDM音楽に専門性を持つ実力派の音楽監督です。音楽監督とたくさんの話し合いを重ね、最新のトレンドを把握するために有名DJたちが参加するEDMフェスティバルに自ら足を運んだりもしました。おかげで、エキサイティングで洗練された音楽が完成したと思っています。
主題歌の録音もとても愉快な作業で、驚くほどキャストの皆さんが実際に歌が上手で、予想よりも早く録音が終わったほどでした。カン・ハヌルとカン・ヨンソクはミュージカル俳優でもあり、ハン・ソナはアイドル歌手出身でもあるため、実力は予想していたのですが、キム・ヨングァンも歌が上手くて驚きました。やはり芸能人は誰にもできる仕事ではないんだと思いました(笑)。

旅の先に待つ真実と、友情に込めた願い
──ハプニングだらけの旅の先に明かされる「隠された事実」を描くにあたり、どのような点に心を配って演出されたのでしょうか?
隠されていた事実を、意図的な「大どんでん返し(サプライズ)」のように表現したくはありませんでした。そのため、事前に展開を予想される観客の方もいらっしゃるだろうと思いましたし、それはそれで良いと考えていました。
私が描きたかったのは、観客の皆様が仲間たちの初めての旅を見守りながら、彼らの物語に少しずつ共感し、最終的にそのわけを理解していく過程を描きたかったのです。

──24年来の幼馴染による青春と友情を描いた本作ですが、監督ご自身がこの物語を通して観客に一番伝えたかった想いや、どのように映画を楽しんでほしいかをお聞かせください。
国や人種を問わず、学生時代は誰にとっても最も輝かしい時期だと思います。自分はその頃、とんでもない夢を見たり、時にはおバカなこともしましたが、愛する友達のおかげで毎日が楽しかった時代だったと感じています。
今や私も中年となり、社会の現実を経験したことで純粋さをかなり失って生きていますが、たまに友達との学生時代を思い出すと、照れくさくもあり、自然と笑みがこぼれてきます。
この作品をご覧になる観客の皆様にとっても、しばしの間、現実の辛さを忘れ、愛おしい友達や学生時代の純粋な思い出を振り返りながら、微笑んでいただけるような作品になればと願っています。

<PROFILE>
ナム・デジュン監督
韓国で大ヒットを記録した『ラブリセット 30日後、離婚します』(23)で監督を務めたナム・デジュン。「映画監督を夢見た時から観客を笑わせ、楽しませる作品を作りたいと思ってきた」と語るナム監督は、新たなエンターテインメント・ムービーを生み出した。本作を演出するにあたり、ナム監督は自身の経験と想いを作品に盛り込んだ。「かつては世界のすべてとも思えた仲間との友情を描き、ある意味恋愛にも似た感情が沸き起こった」と語る。笑いの先にある友情の輝きを描き、誰もがかつての仲間との時間を思い出し、共感を誘う一作を完成させた。
FILMOGRAPHY:『ラブリセット 30日後、離婚します』(23)、『色男ホ・セク』(19)、『偉大な願い』(16)

『ファーストライド』9月25日(金)新宿バルト9ほか全国公開!
9月25日(金)公開『ファーストライド』|本予告
www.youtube.com<STORY>
6歳の時に幼稚園で出会って以来、小中高と同じ学校に通い、ともに青春を過ごしてきた親友4人組。全国模試で1位を取るほど、一度のめり込むと恐ろしいほどの集中力を発揮する完璧主義者のテジョン(カン・ハヌル)。壊れたブレーキのように突き進む天真爛漫なドジン(キム・ヨングァン)。自分の容姿をまったく自覚していないイケメンのヨンミン(チャウヌ)。勉強が嫌いすぎて目を開けたまま寝る技まで身につけた変わり者のグムボク(カン・ヨンソク)。「誰が一番バカか」を競い合いながら、いつも4人で笑い合ってきた。
高校卒業を控えたある日、ニュージーランドへの移住が決まったヨンミンとの思い出を作ろうと、卒業旅行を計画する。修学旅行には停学処分で参加できなかった彼らが目指したのは、DJを夢見るヨンミンとドジンの憧れのDJサウスが出演するタイの音楽フェス。しかし出発当日、空港までの行き道でバスに乗り遅れ、4人の旅はお預けとなる。
あれから10年──。大人になった彼らは、あの日果たせなかった約束を胸に、ついに初めての海外旅行へ向かう。そこへオクシム(ハン・ソナ)も加わり、旅は思いもよらぬ展開に。そして波乱だらけの旅の先で彼らが向き合うのは、胸の奥にしまい込んできたある事実だった……。
<STAFF&CAST>
監督・脚本:ナム・デジュン
出演:カン・ハヌル、キム・ヨングァン、チャウヌ(ASTRO)、カン・ヨンソク
2025年|韓国|116分|シネスコ|5.1ch|原題:퍼스트 라이드|英題:The First Ride 字幕翻訳:朴澤蓉子|映倫区分:G
配給:クロックワークス
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公式サイト:https://klockworx.com/firstride



