( )内の数字は劇場初公開された年度です
土地柄のせいか周辺の買い物や食事とセットで
映画鑑賞するファンが目立つ
この劇場の近年の動きに関して桑原啓支配人に少しだけ電話で話を聞くことができた。桑原支配人は19年7月より支配人となった。就任後すぐにコロナ騒動があり、政府から緊急事態宣言が出た時は、約2か月、映画館も休館となった。現在はあの騒動が嘘のように落ちついた日々が戻ってきたが、支配人の話によると、劇場の観客は年配層が中心ながら、コロナ後は若い層も増加傾向であったという。
「実はいま、『マイ・プライベート・アイダホ』(26)のリバイバルを上映中ですが、けっこう若い方に来ていただいています」とのコメントが返ってきた。
近年の映画で特に大ヒット作となったのは山崎エマ監督のドキュメンタリー『小学校〜それは小さな社会』(24)で、2024年12月から翌年の4月まで4カ月半の上映となった。
「この映画は12月の公開後にされたのですが、この作品の短編版でもある作品のアカデミー賞へのノミネートが1月に報じられ、3月の受賞式のタイミングでもメディアで大きく取り上げられました。賞絡みの2回の露出の影響もあってロングランとなりました。実際の動員が一番多かったのは9週目で、異例の興行収入の推移となりました」
小学校の1年生から6年生まで日本の生徒たちのあり方を映し出した作品で、その教育や生活態度が海外でも注目を集め、日本在住の外国人も来場したという。また、25年には呉美保監督の『ふつうの子ども』(25)も3か月半の上映。10歳の少年の日常を見つめた作品だ。沢田研二主演の料理と生活をモチーフにした『土を喰らう十二カ月』(22)も22年から23年にかけて4カ月の上映。料理がテーマの映画にはトラン・アン・ユン監督、ジュリエット・ビノシュ主演のフランス映画『ポトフ 美食家と料理人』(23)もあり、23年から24年にかけて5カ月のロングランとなっている。このヒットで分かるようにフランス女優の主演作も安定した支持を得ていて、ジャンヌ・モロー主演の『クロワッサンで朝食を』(13)も大人の女性層に好評を博した。
「最近の映画ではインド映画の『ツーリストファミリー』(26)も好調でしたし、『かもめ食堂』のリバイバル上映も人気がありました」と支配人は語る。
『ツーリストファミリー』はスリランカからインドへ密入国した4人の家族の物語で、身分を偽り、言葉によって素性がばれないように心がける一家の生活を描いた作品だ。再映の『かもめ食堂』も不滅の人気を誇っているようだし、家族や絆、料理や生活という日常的な題材をテーマした作品では、この劇場の強みが生きるようだ。ミニシアターによってはシネアスト的な凝った作品が集客率につながるところもあるが、シネスイッチの場合、銀座のど真ん中という土地柄も大きいようで、周辺での買い物や食事とセットで映画を楽しむ大人の観客も目立つという。
「家庭的な映画が得意で、劇場そのものにも、家庭的な、なごめる雰囲気がありますね」と質問したら、「ありがとうございます。実は女優の岸井ゆきのさんも、ある雑誌の記事で好きな映画館としてあげて下さったんです」と支配人は語っていた。好感度が高く、人々に愛され続ける温かい劇場。それがシネスイッチのイメージだった。
昨今のインバウンドの影響は特に大きくないようだが、「海外の方が見えると字幕用にタブレットを貸し出したこともあります。スマホで見ることもできるので、さきほどの『小学校』の時は活用していただいたこともあります。また、中には海外のお客様を意識して英語字幕版の上映も行なった作品もあります」と支配人はふり返る。
銀座という街との向き合い方に関しては「銀座の駅にいらしたら、そこから迎えるという気持ちでやってきました」。おそらく、そのおかげでほっとできる劇場の雰囲気も生まれていたのだろう。閉館前の最終作品としては中学生にタイムスリップすることで人生を考え直す中年男性を描く錦織良成監督の『遥かな町へ』(26)、ひきこもりを見守る女性を軸にした深川栄洋監督の『あなたの息子ひき出します!』(26)などが上映される。銀座文化時代から含めると、今年で71年。銀座の“小さなオアシス的な劇場”でもあったシネスイッチ銀座。映画との思い出深い日々に心から“ありがとう”。
第2位のヒット作『ライフ・イズ・ビューティフル』
歴代ヒット作は?
シネスイッチ銀座の歴代ヒット作というと、やはり1位は『ニュー・シネマ・パラダイス』(89年12月15日〜90年9月20日上映。91年11月には完全版も上映された)で、これに続いて『ライフ・イズ・ビューティフル』(99年4月17日〜99年10月29日上映)、『リトル・ダンサー』(01年1月27日〜01年6月29日上映)と洋画の感動作が並ぶ。日本映画では『木村家の人びと』(88年5月13日〜88年7月28日上映)がトップ。
劇場の初期のパンフレットは、ペーター佐藤氏のイラストを表紙にした独自のものだった
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