ハリウッドの頂点に立ち続けるトム・クルーズ。その驚異的なキャリアは、数々の名監督たちとの出会いと挑戦によって作られてきました。無名時代のオーディション秘話、巨匠キューブリックとの過酷な1年以上、スピルバーグとのタッグの裏側まで──。映画史に名を残す名匠たちが、トムの才能をどう見出し、彼がそこから何を学んだのか。13本の代表作と監督たちとのエピソードを通して、トムの魅力に迫ります!(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)
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才能を見抜き、狂気を愛した巨匠コッポラが灯した、トムの原点
フランシス・フォード・コッポラ

画像: フランシス・フォード・コッポラ監督 Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

フランシス・フォード・コッポラ監督
Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『ゴッドファーザー』と続編の『ゴッドファーザー PART Ⅱ』がともにアカデミー賞作品賞を受賞するなど、ハリウッドを代表する監督になったコッポラが、大人気の原作を映画化するにあたり、数多くの若手俳優をオーディション。彼らはステージでさまざまな組み合わせで演技を行い、当時18歳だったトムが獲得したスティーヴは若者グループの中でも小さめの役だった。それでも現場で全力の演技で挑んだトムをコッポラは高く評価。その次の、やはり青春映画『ランブルフィッシュ』でも起用しようとしたが、トムは次回作『卒業白書』が決まっていて出演が叶わなかった。この『アウトサイダー』のオーディションでのトムの映像は、コッポラが2024年にインスタで公開。

トムの出演作はコレ!
『アウトサイダー』(1983)

オクラホマ州の町で、2つの若者グループの対立と、切実な運命、熱い友情や恋を描いた青春映画の金字塔。1980年代、若手スターたちが次々と誕生。彼らはブラット・パックと呼ばれたが、その先駆けとなった作品。

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『アウトサイダー』の撮影中、コッポラ監督得意の腕相撲をしていたら…相手はなんとトムだった…!(フランシス・フォード・コッポラのInstagram)

運命の幻影に導かれ巨匠と若きスターの伝説の交差点
リドリー・スコット

画像: 『レジェンド/光と闇の伝説』撮影中のリドリー・スコット監督 Photo by: Marka/Universal Images Group via Getty Images

『レジェンド/光と闇の伝説』撮影中のリドリー・スコット監督
Photo by: Marka/Universal Images Group via Getty Images

『エイリアン』、『ブレードランナー』と立て続けに後世に残る名作を送り出したリドリーが、その次となる大作で、スターとして人気上昇中のトムにアプローチ。作品のイメージを具現化し、彼を説得したという。しかしこの『レジェンド』は批評的、興行的にも失敗。

リドリーの監督のキャリアを停滞させてしまう。それでもトムは本作の現場で、“ビジュアリスト”として名高いリドリーから多くの知識を学んだとされる。カメラや照明に対して、どう演技すればいいのかという、映画俳優としての大切なメソッドを体得。水中撮影も初めて経験した。監督から弟のトニー・スコットを紹介され、その縁が後の代表作につながったわけで、俳優人生では大きな意味を持つ一作に。

トムの出演作はコレ!
『レジェンド/光と闇の伝説』(1985)

ユニコーンの角に触れたことで、呪いをかけられた王女を救うため、一人の若者が闇の魔王に立ち向かう。北欧神話をベースにした冒険ファンタジー。幻想的な美術、特殊メイクによるクリーチャーなどビジュアル面が重視された一作。

トムの最も危険で最高な姿を捉え世界を熱狂させるアイコンへと変えた魔術師
トニー・スコット

画像: 『デイズ・オブ・サンダー』撮影中のトニー・スコット監督 Photo by Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『デイズ・オブ・サンダー』撮影中のトニー・スコット監督
Photo by Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

現在に至るアクションスターとしてのトムのスタンス、およびメジャー級の人気、その礎を作ったのがトニー・スコットとの2作。『トップガン』での撮影を契機に飛行機の操縦ライセンスを取り、『デイズ・オブ・サンダー』でレースカーのテクニックを身につけたことが、後のキャリアでも生かされた。

何より、トムのスターとしてのオーラ、カッコよさを最高レベルで映像に収めたのも、トニーの功績。トニーにとっても、トムとの2作でトップ監督としての地位を確立し、まさにウィンウィンの関係に。トニーとの2作は、長い時間を空けて続編が製作(『デイズ~』は現在、進行中)。改めてトニーが2018年に亡くなってしまったことが惜しまれる。

トムの出演作はコレ!
『トップガン』(1986)

若き海軍飛行士の成長と恋、ドッグファイト(空中戦)を描き、日米ともに年間1位のヒットを記録。36年後に続編『トップガン マーヴェリック』が完成し、特大ヒットした。

画像: ︎『トップガン』撮影中のトニー・スコット監督とトム Photo by Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

︎『トップガン』撮影中のトニー・スコット監督とトム
Photo by Paramount Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『デイズ・オブ・サンダー』(1990)

天性の才能を持ったカーレーサーが、レース中の事故などを経験し、念願だったデイトナ・レースの舞台に立つ。本作の共演がきっかけでトムはニコール・キッドマンと結婚。

ビリヤード台の上のプライドと苦闘!トムに役者としての血肉を与えた名匠
マーティン・スコセッシ

画像: 1986年、『ハスラー2』プレミア会見に出席したスコセッシ監督とトム Photo by Frank Edwards/Fotos International/Getty Images

1986年、『ハスラー2』プレミア会見に出席したスコセッシ監督とトム
Photo by Frank Edwards/Fotos International/Getty Images

名監督とトムの関係を語るうえで、『ハスラー2』はちょっと異色な作品かも。というのも、監督のスコセッシも、メインキャストのトムも、この企画を中心で動かしたポール・ニューマンに誘われた立場だから。

それでも本作はトムにとって“演技力開眼”になった。無敵のハスラー(ビリヤードプレイヤー)を目指す役での苦闘やプライド、覚醒の瞬間など難しい表現に、本作の6年前にロバート・デ・ニーロにオスカーをもたらしたスコセッシの指導が役立ったに違いない。スコセッシは、脚本の細部をドラマチックに演出する手腕も冴え渡り、じつはこれは隠れた名作。現場ではスコセッシやニューマンに敬意をもって接したトムの態度が語り継がれている。

トムの出演作はコレ!
『ハスラー2』(1986)

1961年の『ハスラー』の25年ぶりの続編で、前作と同じ役を演じたポール・ニューマンが悲願のアカデミー賞主演男優賞を受賞。かつてのビリヤードの名手が、自身の若い頃を思わせる青年に出会い、後継者として育て上げる。

画像: 写真は『ハスラー2』より、ポール・ニューマンと Photo by Touchstone Pictures/Getty Images

写真は『ハスラー2』より、ポール・ニューマンと
Photo by Touchstone Pictures/Getty Images

アドリブと絶妙な信頼で眠れる才能を揺り動かしトムの俳優人生をガラリと変えた名匠
バリー・レヴィンソン

画像: バリー・レヴィンソン監督 Photo by George Rose/Getty Images

バリー・レヴィンソン監督
Photo by George Rose/Getty Images

『レインマン』は監督がなかなか確定せず(シドニー・ポラックなど候補は複数)、トムの出演は先に決まっていた。レヴィンソンは後からの参加で、ダスティン・ホフマンも含め、キャストと監督が「一緒に作り上げていく」感覚の昨品となった。現場でのレヴィンソンは、タイトルの『レインマン』の意味を伝える重要なシーンをワンテイクで撮るなど、俳優の力量を信頼。

また自ら医師役を演じ、相手役のトムにアドリブを仕掛けるなど、彼の眠っていた才能も引き出した。本作の前後でトムの演技が変わったと評する人も多く、彼がオスカーにノミネートされなかった不満は今もくすぶる。トムもレヴィンソンに感謝し、またいつか仕事をしたい監督の一人に名を挙げた。

トムの出演作はコレ!
『レインマン』(1988)

サヴァン症候群を抱えた兄と、輸入車ディーラーの弟が、父の遺産をきっかけに再会し、家族の絆を取り戻すロードムービー。トムの出演作でアカデミー賞作品賞に輝いた唯一の作品。兄役のダスティン・ホフマンが主演男優賞受賞。

画像: 1989年、第61回アカデミー賞で『レインマン』は作品・監督・主演男優・脚本の4部門を受賞!画像は左からマーク・ジョンソン、ダスティン・ホフマン、トム、バリー・レヴィンソン Photo by Getty Images/Bob Riha, Jr.

1989年、第61回アカデミー賞で『レインマン』は作品・監督・主演男優・脚本の4部門を受賞!画像は左からマーク・ジョンソン、ダスティン・ホフマン、トム、バリー・レヴィンソン
Photo by Getty Images/Bob Riha, Jr.

自らの従軍経験と全幅の信頼でトムの剥き出しの魂を引き出したオスカー監督
オリバー・ストーン

画像: 『7月4日に生まれて』撮影現場にて。オリバー・ストーン監督(中央)、主演のトム・クルーズ(右)、そしてカメオ出演した原作者にして主人公のモデル本人でもあるロン・コーヴィックと(左) Photo by Universal Pictures/Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images

『7月4日に生まれて』撮影現場にて。オリバー・ストーン監督(中央)、主演のトム・クルーズ(右)、そしてカメオ出演した原作者にして主人公のモデル本人でもあるロン・コーヴィックと(左)
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ストーンは、トムにアカデミー賞ノミネートを初めてもたらした監督。ドル箱スターの座は固めていたトムにとって、次なるターゲットはオスカーで、その最初のステップをストーンが後押しした。自身は『プラトーン』ですでにオスカー監督になっていたストーンは、同じくベトナム戦争の題材に着手。

1970年代にアル・パチーノ主演での企画もあった『7月4日に生まれて』で、ストーンは、原作者で主人公のモデル、ロン・コーヴィックの協力で執筆した脚本をトムに送り、それを読んだトムは出演を決めた。ベトナム帰還兵を演じるトムが、役作りのために1年間、車椅子に乗って生活したのは有名な逸話。ベトナム従軍の経験があるストーンに全幅の信頼を寄せた。

トムの出演作はコレ!
『7月4日に生まれて』(1989)

愛国心によってベトナム戦争へ向かうも、過酷な戦場で銃弾を受け、下半身付随になった主人公。帰還兵への不遇な扱いに怒り、彼は反戦運動に加わる。実話の映画化。オリバー・ストーンは2度目のアカデミー賞監督賞受賞。

画像: 『7月4日に生まれて』 Photo by Universal Pictures/Getty Images

『7月4日に生まれて』
Photo by Universal Pictures/Getty Images

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