1997年の連続ドラマ開始以来、それまでの刑事ドラマとは一線を画し、警察内部の縦割り社会や上下関係、人間模様を描き、社会現象を巻き起こした「踊る」シリーズ。その最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』がいよいよ公開を迎えた。それを記念して、連続コラムを全3回にわたりお届けする。最終回となる第3回は、撮影現場の裏側をレポート。キャスト陣・スタッフ陣発のアイディアが多数取り込まれていった現場の模様をお届けする。(文・横森文)

*ネタバレ注意。一部、劇中の展開に触れる部分があります。

“現場”を動かした、キャスト&スタッフ発のアイディアたち

画像1: “現場”を動かした、キャスト&スタッフ発のアイディアたち

織田裕二の走りっぷりはタダ事ではなかった。現金を運ぶために自力で走っていた青島が、途中で和久(伊藤淳史)から提供してもらった電動のキックボードで高速を走るが、バッテリーがなくなり、たまたまスリーアミーゴスと会い、彼らにキックボードを託し、渋滞の高速を再び走って駆け抜けていくというシーン。まだリハーサルの段階から、織田は決して走るスピードを緩めない。一回目のリハでは「カット!」の声が聞こえなかったのもあってか、相当遠くまで走ってしまった。この場面だけでなく走るシーンはほぼ織田自身が全力疾走をしていた。確かに青島といえば行動が素早いイメージがあるが、それにしても実際に58歳の織田がこれだけ走り回るという肉体酷使っぷりには役に賭ける凄まじいまでの意気込みが感じられた。正直、撮影終了後もしばし織田の足には痛みが残るほどのものであったという。

画像: 本広監督(左)と織田

本広監督(左)と織田

実はこの青島が都内を走り回るというアイディアを出したのは本広克行監督。もともと亀山千広プロデューサーと脚本の君塚良一は全く違う話を進行させようとしていたが、もっとコメディ色を出した方がいいという監督のアイディアを活かし、今回のようなユニークな展開に脚本が方向転換にしたという。

さらにずっと走り回るだけでもつまらないということで織田自身がキックボードに乗るアイディアを追加。それならと、ちょうど首都高速と直結していた一般有料道路で25年4月に役割を終え、空中回廊「Tokyo Sky Corridor」として生まれ変わるため整備中の「東京高速道路(KK線)」がロケ可能と判明したため、上記のような脚本になっていった。

画像2: “現場”を動かした、キャスト&スタッフ発のアイディアたち

さらにアイディアはアイディアを呼ぶ。実際の警察がキックボードを取り入れる動きがあったため、キックボードの導入を検討していた八重洲署が、任務に駆り出された青島を助けようと手を貸す設定が誕生。さらに時を経て現在は八重洲警察署の刑事課長になった和久がボードを持ってくることに。そしてスリーアミーゴスの登場も促すことになったのだ。現在は90代、80代、70代となった湾岸署の元署長・神田役の北村総一朗、元刑事課長・袴田役の小野武彦、元副署長・秋山役の斉藤暁だが、以前と変わらぬ軽妙なやり取りを見せ、織田を圧倒させていた。またそこでは青島が被っていたヘルメットを秋山に被せるというちょっとした面白味もプラスされることになった。

撮影ではとにかく役者たちがみんな自分の意見をどんどん出していた。神木隆之介や小泉孝太郎、またMOVIE1の犯人・坂下始役の北山雅康、爆弾処理班・眉田克重役の松重豊など、過去作の出演者たちが一堂に介しているが、彼らの方から初登場時に言った台詞を言いたいというアイディアが出たそう。神木はMOVIE2で登場した黄色レンジャー(監督とスタッフが雑談でゴレンジャーの中で黄色だけ集まっていたら面白いという話をしていてできあがった)を観て「レアキャラ」とつぶやくが、神木自身からそれを言いたいと言ってきたそう。北山の「ゲームオーバー」や松重の「お前ら気合いれろ」もすべて役者側から出たアイディアだったそう。またTHE FINALで犯人側に回って逮捕された小池役の小泉孝太郎は、出所後に何をしているかという設定で道路工事の警備員役で登場した。このシーンはロケではなく、わざわざ東宝スタジオに道路工事的なセットを組んで撮影を行った。

 スタッフもメインスタッフ以外は若返っているが、それぞれの部署で過去の「踊る〜」シリーズを研究した上で新しいアイディアを投入したという。つまり織田座長を筆頭に現場でキャストもスタッフもとことん全力でアイディアを出しあった結果が本作なのだ。まさに事件は現場で起きているじゃないが、現場で作品が発展したのだ。

画像3: “現場”を動かした、キャスト&スタッフ発のアイディアたち

『踊る大捜査線N.E.W.メトロポリスを駆け抜けろ!』
大ヒット公開中
配給:東宝
©2026フジテレビジョンBSフジビー・エー・シー

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