「ひつじのショーン」が“怪物”と対峙する『映画 ひつじのショーン かぼちゃ畑の怪物!』。ハロウィンを題材に、ホラー映画のオマージュを散りばめながら、「ショーン」らしいユーモアと温かさを描いている。アードマン・アニメーションズ設立50周年、「ひつじのショーン」誕生30周年という節目の作品で、どのように新たな表現を切り拓いたのか。スティーブ・コックス監督とマシュー・ウォーカー監督に制作の舞台裏を聞いた。(取材・文/ほりきみき)

「怖さ」と「笑い」をどう両立させるか

──本作は1930~40年代のユニバーサル・モンスター映画から80年代のスラッシャーホラーまで、さまざまなホラー映画の要素が盛り込まれています。一方で、作品そのものは「ショーン」らしいユーモアに満ちています。これまでのショーンの世界にホラーを持ち込む上で、「怖さ」と「笑い」のバランスは、どのように設計されたのでしょうか。

マシュー・ウォーカー監督

そうですね。僕たちは最初から、そのバランスをとても意識していました。というのも、企画の初期段階から、この作品を「ホラー映画」というより「ハロウィン映画」として捉えて話を進めていたんです。もちろん、ストーリーを練り上げていくなかでは、ホラー映画のお決まりの展開も取り入れていきましたし、「ショーン」でハロウィン映画を作ること自体に、とてもワクワクしていました。

ただ、おっしゃる通り、常に適切なバランスを見つけるよう、かなり気を配っていました。幼い子どもたちも、「ちょっぴり怖い」くらいのスリルは好きだと思うんです。だからこそ、行き過ぎない範囲を見極めながら、ハッと驚くようなジャンプスケアや緊張感は残したいと考えていました。

とはいえ、決してやりすぎない。その恐怖感を、上質なコメディで和らげることを常に意識していました。

もちろん、そのバランスを見つけるのは簡単ではありませんでした。初期のバージョンには、少し刺激が強すぎる、つまり怖すぎるシークエンスもいくつかあったんです。そこで、ちょうどいいレベルに落ち着かせるために、表現を少し抑えたりもしました。

スティーブ・コックス監督

それに僕たちは、かなり早い段階で「この怪物は、結局のところ、それほど怖い存在ではない」ということを明かしています。むしろ、愛着の湧くキャラクターなんです。

それに、ショーンや群れの羊たちの視点と、怪物の視点を何度も切り替えることで、彼が羊たちにとって本当の脅威ではないことが観客にも伝わるようにしました。

ですから、作品全体を通して、そのバランスはとても意識していました。

画像1: 「怖さ」と「笑い」をどう両立させるか

──ちなみに背景の隠しネタは何個くらいありますか。

マシュー・ウォーカー監督

間違いなく、たくさんありますね! アードマン作品は繰り返し観ることで新しい発見があることで有名ですし、背景に散りばめられた細かいディテールにも、毎回新しい発見がありますから。

実は僕たち自身も、制作期間があまりにも長かったので、背景に入れた細かいネタのいくつかを忘れてしまっているくらいなんです(笑)。はっきりした数を挙げるのは難しいですが……少なくとも20個以上はあると思いますよ!

スティーブ・コックス監督

うーん、正確な数字があるかどうかは分かりませんが……。最初の15分間だけでも、それくらい、20個以上はあるかもしれません!

というのも、こうした隠し要素は、制作のあらゆる段階でどんどん追加されていくんです。脚本の段階で組み込まれるものもあれば、絵コンテやアニマティクス(動画コンテ)を作るときに加えられるものもあります。さらに、アート部門がセットを作る際に追加することもありますから。

特に街のシーンに登場する背景のギャグや、お店の名前などは、アートチームが追加しているんです。撮影セットで、現場のアニメーターたちが独自に加えることだってあります。僕たち監督にいちいち許可を取らずに入れていることすらありますからね(笑)。

画像2: 「怖さ」と「笑い」をどう両立させるか

──新キャラクターの「獣医さん」は、動物たちに対してタフでありながら愛情深く、とても魅力的な存在です。牧場主とは対照的な一面を持ちながら、実は共通する部分もありますが、彼女のキャラクター造形では、どんなことを意識されたのでしょうか? また、牧場主との関係性の見どころについても教えてください。

スティーブ・コックス監督

ありがとうございます。彼女を気に入っていただけて嬉しいです。僕たちは、彼女と牧場主の間に「対比」を作りたかったんです。温かみのある関係性を描きながら、コントラストを持たせつつも、どこか共通する部分もある。そんな二人にしたいと考えました。

対比のひとつが、「エネルギーの高さ」です。牧場主はどちらかというと怠け者で、いつも仕事をビッツァーに押し付けていますよね。だから、羊たちをテキパキと扱える、とてもエネルギッシュで身体能力が高く、アクティブなキャラクターを求めていました。彼女は、とても自立した女性なんです。

その一方で、人付き合いは少し不器用です。そこが牧場主との共通点なんですね。牧場主も人間を相手にすると不器用で、牧場で動物たちと一緒にいるときが一番リラックスできます。獣医さんも動物の扱いには慣れていますが、もっと広い社会の中では少し不器用で、ちょっとオタクっぽいところがある。だからこそ、二人はその部分で心を通わせることができるんです。そこが、とても微笑ましいところですね。

それに、獣医というキャラクターを登場させるのは、ストーリー上もとても自然な流れでした。牧場主が新しい人と出会うとしたら、誰かが牧場を訪ねてくるという形が自然だからです。彼は自分から外の世界に出ていって、人と出会うようなタイプではありません。だから、牧場に来てくれる存在として「獣医」という設定がぴったりだったんです。

マシュー・ウォーカー監督

デザインについても、彼女らしさを出すためにいろいろと工夫しました。診察用の白衣を着ているのですが、そこにスカーフやヘッドスカーフ、ピンクの靴ひもといった個人的なこだわりを加えることで、彼女らしさを表現したかったんです。

画像3: 「怖さ」と「笑い」をどう両立させるか

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