「ミッション:インポッシブル」「トップガン」シリーズなどでアクション・スターのイメージが強いトム・クルーズが、従来の印象を覆すような役で観客を驚かせるエンタテインメント大作『DIGGER/ディガー』を携え、26回目の来日を果たしました。滞在中には、熱弁をふるった会見、3時間半もファンサービスを行なったレッドカーペット・イベントなど、相変わらず精力的に日本を魅了した唯一無二のスーパースターでした。(文・米崎明宏/写真・久保田司/デジタル編集・スクリーン編集部)

“自分自身の記念日に日本にいられるなんて皆さんに感謝です!”

DAY1 ディガーになった姿の自分を見てこれは面白いものができると思った

画像: 覚えたばかりのギャルピースを会見場で披露する2人

覚えたばかりのギャルピースを会見場で披露する2人

超ワンマンでとてつもなく強欲な石油会社のCEO、ディガー・ロックウェルが、その利益追求のための行動によって、地球の危機が訪れてしまう、という大ピンチに対処する姿を思いもよらない構成で描くエンタテインメント大作『DIGGER/ディガー』で、通算26回目の来日を果たしたトム・クルーズ。10月5日には都内の映画館で一緒に来日したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督と共にプレス会見に臨んだ。

会場に颯爽と登場したトムは、いつものように満面のトム・スマイルを見せ、リラックスした様子。

「また日本に来られたこと、そして尊敬するアレハンドロの映画に出られたことを心から光栄に思います。アレハンドロのデビュー作『アモーレス・ぺロス』を見て以来、ずっと一緒に仕事がしたいと思っていました。彼は9年もこの映画に取り組み、僕は2018年から関わったんですが、キャストもスタッフも最高のメンバーを集められました」

と挨拶の言葉を述べたトムに続き、イニャリトゥ監督も

「私の人生は東京国際映画祭で『アモーレス・ぺロス』が賞を受賞したことから変わったとも言えます。20年前には『バベル』の撮影を長く滞在して行ったことなどもあり、東京は夢の街なんです。トムが言うように『DIGGER/ディガー』では最高のキャスト、スタッフに恵まれ、リスキーな作品に賭けてくれたスタジオにも感謝したいです」

と日本に戻って来た心境を述べた。その後も2人は熱い情熱を傾けた『DIGGER/ディガー』についてユーモアも交えながら熱弁をふるってくれた。まずトムがこのディガーという型破りな人物を演じた感想を明かしてくれた。

トム「最初に脚本を読んだ時『こんな話をどこから思いついたの?』という顔でアレハンドロを見たんです(笑)。まさに彼はアーティストとして一流です。そしてこの企画に参加して、ディガーという役は製作を進める中で徐々に作り上げていったんです。そのために監督のやりたいことを細部まで全て理解する必要がありました。ディガーにはいろんな側面があるので掘り下げるには時間と労力が必要だったんです。でもこの映画を作る楽しさを1秒ごとに楽しみたかったのでセットを味わったり立ち止まったりして、何が最良かをずっと考えていました」

画像: 自信作『DIGGER/ディガー』を誇らしげに語るトム

自信作『DIGGER/ディガー』を誇らしげに語るトム

イニャリトゥは、トムも驚いたこの大胆かつ現在の社会にもリアルに通じる問題をこめた物語りづくりについて、そのきっかけを明かしてくれた。

「この物語を作り始めた9年前、我々はある種の違和感を感じていました。体験した現実とその現実を語った言葉が、切り離されていると感じていたんです。人それぞれが異なる現実を持っていて、それ自体に振り回されているという感じです。言葉が現実の認識を変えてしまう力を持つと知っているのは、作家か良きにつけ悪しきにつけ指導者たちでしょう。時に言葉は人々を励まし、良いことにも使われますが、認識を変える武器にもなる。それを使えるのがディガーで、そこから物語を作り上げていったんです」

テーマはどんどん複雑になり、完成までに9年もかかったという。そんな情熱を持つイニャリトゥをトムは心から尊敬する。

トム「若いころから多くの最高の監督たちと仕事をしてきましたが、アレハンドロも間違いなくその一人です。彼が生み出すものを毎日現場で観られたことは、言葉で言えないほど素晴らしいものでした」

それに応えて監督もトムの印象的なエピソードを明かし、

イニャリトゥ「この映画はリハーサルを重視していて、何度も行ったんですが、動きなども必要だったので、そのたびにトムはあのメイクに5〜6時間かかるディガーのぽっちゃりした老紳士の扮装で現われて──その待ち時間も大変だったんですが(笑)──みんなディガーの姿をした“テキサス訛りの面白いおじいさん”に慣れていたんです。でもスケジュールの都合でトムがメイクなしで現れた時、『なんであの大スターがここにいるの!』といきなりその場の空気が変わってしまったんです(笑)」

と笑わせてくれた。そんなディガーという人物をトムはどう作り上げたのか。

トム「最初にディガーの扮装になった時から楽しんでいましたね。初めて鏡で見た時から面白がっていました。『これは面白いものになる』と撮影が待ちきれませんでした。メイク室でいろんなファット・スーツを試したり、適切なメイクを試行錯誤しました。ただあのメイクはとても暑いんです(笑)。僕はもともと人を観察するのが好きなんです。いつも人を見つめ、人生と向き合っているうちに自然と役作りが始まります。そしてまずリズムを見つけようとします。コメディとドラマではリズムが違う。役によって異なる動き、異なる声があるもの。さらにメイクした後で微調整したりしながらその人物を見つけていくんです。言葉で説明するより、実際アレハンドロの前で考えたことをやってみせると、彼がそれを元に演出してくれます」

監督もトムのそのやり方に驚いたそうで、こう説明してくれた。

イニャリトゥ「まるで魔法を見ているみたいでした。例えば人間が歩くことは自然ですが、『あなたはどうやって歩くことができるの?』と説明を求めても答えが難しいように、トムに『その演技をどうやったの?』と聞いてもたぶん同じことなんです。彼はその難しいことを身体に一体化させているんでしょう」

そんなトムの演技で今回、大きな見どころの一つが10分にも及ぶ長いスピーチをワンカットで行うシーンだ。

トム「実はセリフを覚えるのは一番簡単な作業です。ただ暗記すればいい。セリフはひたすら繰り返して、読みながらいろいろリズムを変えたり、セットを歩き回って構成を考えたりしますが、ある程度まで行くともうセリフのことは考えなくなります。今回はとても身体的な演技でした。あちこち動きまわっていると監督が正しい位置の指示を出してくれたりして楽しかったです。もう一回演じたかったけど『もう撮れたから終わり』と言われ、残念でした(笑)。でも確かに長かったですね』

画像: イニャリトゥ監督はトムを称賛

イニャリトゥ監督はトムを称賛

そんなトムの前向きさを監督は称賛する。

「トムはほぼ全てのシーンに登場するので、セット全体の雰囲気を決める存在でした。彼はよく笑うんです。自分自身も笑いの対象にしてしまいます。セットにはいつも笑いがあり、それが“人生のオリーブオイル”のようなものというか、トムの懐の深さが感じられました。誰よりプレッシャーを感じているはずのトムが笑いを発していたんです」

互いに尊敬しあう2人は、日本の観客に向けて本作のアピールをしてくれた。

トム「日本の皆さんにはこの映画にある美しさやプロの素晴らしい技術を評価してもらえると思います。そして作品についていろいろ語り合ってもらえるとも思います。それが映画の素晴らしいところ。対話が生まれるという体験を楽しんでください」

イニャリトゥ「できれば事前にあまり情報を入れずに見ていただければ。観客が物語を語る一人になるようにも作っているんです。これは“物語を語ること”“物語の中の物語”について描いた作品です」

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