「戦争をしてはいけない」と改めて考えさせられる作品だ。この『彼方の閃光』で、21歳で映画初主演を果たした眞栄田郷敦は、いまよりもさらに若く、キラキラしているように感じられる。
「最初に脚本を読んだ時は、理解できない部分も多かったのですが、3部構成になっていて、戦争についてのメッセージ性があり、3部を観た後に余韻がすごく残る作品になるだろうなって思いました。そこに惹かれたのと、光という役を演じたという気持ちがなにより強くて。色彩を感じられない役柄を演じるのは、難しいと思いましたが、チャレンジしたかったし、光の成長や変化にすごく魅力を感じて、やりたいと思いました」
撮影は長崎や沖縄など、戦争の痕跡が残る場所で行われた。特に沖縄の轟壕や辺野古での撮影は演技にも大きな影響を与えた。
「沖縄での撮影は、ほとんど芝居をしている感覚はありませんでした。半分自分、半分光の状態になっていたというか。事前の準備もあまりせずに、その場に行って感じたままを出していました。21歳のあの時までに得たもの、持てる全てを引き出してもらった気がします。そして2年経った今、あの時の自分を見返すと、自分はちゃんとステップアップできているんだなって実感も持てました」
戦争という言葉にリアリティーを感じられない時代。この映画を通して、眞栄田の意識の中にもちょっとした変革が起きたようだ。
「轟壕に行った時は衝撃を受けました。沖縄の避難壕であること、そこで何が起きたのか、話といては知っていたけど、実際に行って観ると、考えられないことが起きたんだって肌で感じたから。この映画のテーマのひとつである“戦争は理屈じゃなく、ダメなものはダメなんだ”というメッセージは、日本人なら誰もが持っている考え方だと思うんです。でも、それはその想いを受け継いできたから思うことで、世界にはそう思っていない人々もいるはずで。戦後78年が経ち、今は戦争をどこか他人事に感じてしまうところがあって。でもこの映画を通して、“理屈ではなく、戦争はしちゃいけない”という言葉が、初めて自分の中で本物になった気がしました」
撮影/稲澤朝博
スタイリスト/MASAYA(PLY)
ヘアメイク/MISU(SANJU)
文/佐久間裕子
衣裳/チェーンネックレス¥20,900、ネックレス¥25,300
(ともにMARIHA / untlim 03-5466-1662)
PROFILE
眞栄田郷敦 GORDON MAEDA
2000年1月9日生まれ、ロスアンゼルス出身
〈近年の主な出演作〉
映画『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(21)
映画『東京リベンジャーズ』(21)
映画『カラダ探し』(22)
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』(23)
ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(20)
ドラマ「レンアイ漫画家」(21)
ドラマ「プロミス・シンデレラ」(21)
ドラマ「キン肉マンTHE LOST LEGEND」(21)
ドラマ「カナカナ」(22)
ドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」(22)
大河ドラマ「どうする家康」(23)
〈公開待機作〉
映画『ゴールデンカムイ』(2024年1月19日公開)
『彼方の閃光』
生まれて間もなく視力を失った10歳の少年・光(ヒカリ)。光にとって世界は「音」であり、彼はカセットテープに自分の世界を録音していく。光の眼は手術をすれば視力を得られる可能性があった。母の説得により、手術を受けることを決意するが……。
20歳になった光(眞栄田郷敦)は、戦後の日本の写真界を牽引した東松照明の写真に強く導かれるように長崎へ。旅先で出会った自称革命家の男・友部(池内博之)にドキュメンタリー映画製作に誘われ、長崎・沖縄の戦争の痕跡を辿ることになる。その中で、心に傷を負いつつもたくましく生きる女・詠美(Awich)、沖縄を愛し家族を愛する男・糸洲(尚玄)と出会う。
戦争の痛ましい記憶と彼ら3人の生き様は、光の人生を大きく揺さぶり始める。灼熱の日々の中、光の眼に映るものとは──。
出演:眞栄田郷敦 池内博之
Awich 尚玄 伊藤正之 加藤雅也
原案・監督・音楽:半野喜弘
脚本:半野喜弘、島尾ナツヲ、岡田 亨
配給:ギグリーボックス
12月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開
©️2022彼方の閃光 製作パートナーズ
眞栄田郷敦さんのグラビア&インタビューは、12月18日発売の『SCREEN+Plus vol.88』にて掲載します。