小学生時代から子役として活躍し、現在は舞台・ミュージカルなど活動の幅を広げ活動している20歳の渡邉蒼。昨年11月に1Digital SG「歪な春」をリリースし本格的に音楽活動を開始した。10代の頃に録りだめていたデモ曲たちを収めたEP『ボーイズ・イン・ミステリー』を7月23日(水)にリリース。青さ・歪さ・儚さが詰まった1枚を本人の音楽スタイルとともにレビューしていただきました!
(撮影・取材・文/SCREEN+Plus編集部)
画像: ――アイデンティティを見直したということ?

――2曲目の「3mg」、これもまた大人な歌詞だと感じました。タバコですよね?

ラブソングを書いてみたかったんですが、切なさとか幸せなラブソングが自分のボキャブラリーの中になかったんですよね(笑)。世の中、危険な匂いが渦巻いていて、選択を間違えることがすごくありふれていると思うんです。だから、恋愛とか関係なく、気づいたら「ちょっと間違えた」道を進んでいるかもしれないとふと思うことがあるんです。あの分かれ道で間違えていたのかな?と急に我に返って不安な気持ちになったり喪失感に襲われたり。そんな気持ちなら、投影できてラブソングが書けると思ったんです。自分の中では退廃的なイメージのタバコをテーマに選びました。

――収録されている中で唯一のラブソングですが、歌詞の男の子は彼女に未練もないんですよね。思い出の一つというか切り傷というか……。ちょっと苦い思い出くらいで切り離している感じに受け止めました。

立ち直るための楽曲として、受け止めていただいてもいいなと思いました。

――でもそんなに恋の重さもないし説教臭くもないというか。失恋ソングでも耳心地が良く聞けました。

恋愛した時って、その人の生活の中にお邪魔するという感覚があると思うんです。その人の好きな音楽、映画、その人の飼っている犬とか……。

――歌詞の彼女の場合はタバコだったと。

彼女は煙草を吸っていて、男の子は吸っていなかった。でも、その人の生活がぱっと二つに分かれた瞬間に生活が一変すると思うんですよ。彼女が全部を持って行っちゃうというか。すべてがなくなった瞬間に、匂いとか感情とか沁みついて残ったものがあると。何もないはずなのに、目に見えないものがちょっと残っちゃうという歌なんですよね。未練もないし、めっちゃ忘れてるし、次に歩き出しているのに、何度洗ってもキレイにしても捨てきていないものがあるという。微妙な人間のいじらしさを描いた楽曲です。

――3曲目の「拍拍」(ばくばく)。この曲はいつ頃作りました?

17歳頃に作りました。韓国から日本に帰ってきた直後の曲です。自分がいろいろやってみたいものが見つかってもそれがゴールではないと感じていた時期です。貫き通すためには勇気が必要でした。僕をどうにか普通の枠に収めさせようと、いろいろな手が伸びてくる。そういう中で、自分を貫き通すにはどうしたらいいか?と悩みを歌った曲です。

――普段の作詞スタイルを伺いたいです。

日記みたいなものを書いたり、日々感じた強い感情をメモっておいて、歌詞先行でメロディをつけていきます。だから、数カ月前に感じたことがそのまま曲になっていることがとても多いです。

――メロディは楽器を弾いて作っているの?

基本、パソコンです。キーボードでちょっとコードを弾くぐらいです。

――メロディはどんな時に浮かびます?

日記を読み返してみて、どんな楽曲が合うだろうと考えているうちに「これかも!」と思ったメロディを録音して、パソコンに取り込んでアレンジしていきます。

――「拍拍」についてはアレンジはモノンクルの角田隆太さん。他の収録曲とは違った印象です。

天才プロフェッショナルさんです! 僕がお願いしたことを全部形にしてくださって、シンプルに楽しかったです! 今まで1人で作業してきたので、誰かの知識を借りるのがこんなに楽しいのかと感動しました。

――この楽曲を経験し、次にチャレンジしたくなったことはありますか?

角田さんもパソコンで作ってらっしゃるんですけど、すごく生の熱がそのまま入っている編曲をしてくださいました。角田さんのバンドのサウンドもそうなんですけど、たとえイヤホンで聴いていても、人間が弾いている音という感じがすごくするんです。想いとかグルーヴ感がそのまま伝わってくる。パソコン上で、クオンタイズという機能があるんです。ボタンを押すだけで弾いた楽器のリズムが揃えられる機能なんです。クオンタイズをかけると曲のズレがなくなって、すごくキレイになる反面、曲に血が通わない。“人間らしさ”というのがちゃんと詰まっているんだなと分かりました。決まりにのっとったり、常識的な感覚というのが、楽曲のよさをすごく奪ってしまう場合もあるんだなと知りました。もっと自分の熱とか想いをそのまま配信するという術を角田さんからこれからも学ばせてもらいたいなと思っています。

――そして「〈新〉地動説」もご自分で作られた楽曲ですね。

これは19歳の、いちばん最近書いた楽曲です。

――季節は夏ですよね。

ちょうど、1年前の今頃に書いた曲です。

――目の前に見える情景がそのまま描かれていると感じました。

自分は緑がたくさんある場所に住んでいたんですけど、すごく暑い中で子供たちが遊んでいるのを見たんです。底知れぬ子供の体力を目の当たりにしまして(笑)。表情とか、遊んでいる子供たちの関係性を見ていると、とんでもなく輝いていて。大人は持っていない尊いものを感じました。子供の時に感じた「何かを一目見て、感じたまま言葉にできる心」って、大人になった今だからこそ思い出さないといけないのかなと。そういうのをご近所のお子さん方から学んで書いた楽曲です。

――生命力を感じますよね。

そのまんま、パワーをもらって、光景を歌にしました。

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