
「(朔は)共感はできないですが、理解はできましたね」

――映画『消滅世界』の原作や脚本を読まれた時の感想をお聞かせください。
原作を読んだときは、最初は都市伝説っぽい怖さを感じました。単純に読み物としてスリルもあって面白いなと思っていました。実際に今、世界が進んでいる方向性を考えると、こちらの方向に進んでいて、都市伝説じゃ終われないリアルさを帯びてきて、より怖さを感じます。
――実際に出来あがった映画をご覧になっていかがでしたか?
原作は2時間で終わらせるのが難しい小説だと思うんですよ。いろんな要素があり、人間関係も一つひとつが切れるわけではない。その中でもリズムよくストーリーが進んでいましたし、雨音にフォーカスすることで上手くまとまっている作品だと思います。川村監督の独特の世界観が映画に落とし込まれているなと感じました。
――映画を拝見し、私たちの価値観とは違う世界が淡々と当たり前に描いています。栁さん演じる朔は、登場人物の中でいちばん環境適応能力が高いと感じました。「なんでも受け入れるじゃん!」っていう驚きを感じます。
向こうの世界では、疑問も持たない人間がたくさんいるんでしょうね。
――雨音はだんだん思うところが出てくるのですが、その一方で朔は発展的な人間なだけに怖さを感じました。
取り返しのつかない怖さというか、朔は戻れないところに行っていると思うんです。常人の感覚では、雨音視点だと思うんですが、朔は淡々とヤバい思考も受け入れるロボット的なところはありますよね。
――朔ってどういう人物だと捉えていましたか?
何でも受け入れるピュアさはあると思います。ただ、自分が朔に疑問をもちはじめると演じられなくなってしまうので、あまり自分の感情は生かさずに役に挑みました。何の疑問すら感じない人物なので、自分の感情を持たずに書かれている一語一句を間違えずに正確に演じることを意識しました。
――監督からはアドバイスはありましたか?
芝居中に普段の自分を落とし込まないように気をつけていたものの、体が動いたり自分の感情が出て反応しちゃうこともあったんですよね。そこは「栁くんとして動いているので、朔はそこに何も感じていないんだよ」と動かないように指示されたこともありました。制御をかけるのが難しかったですが、逐一、監督に声をかけていただきました。
――朔を理解できる部分はありますか?
共感はできないですが、理解はできましたね。この環境だったらそうすると理解はできる部分が結構ありました。否定はできないです。
――興味深い人物でしたか?
すごく女々しいところもあるんですよ(笑)。すぐ「俺はダメだ~」ってなるし、そこは少し人間っぽいと感じました。確かにあの環境でこういうある意味純粋な人間だと打たれ弱くなるかもしれませんね。

