1: 最近ヒットしたミュージカルから
メガヒット作が次々と誕生し、近年もっとも元気の良いジャンルとも言えるミュージカル映画。映画が観客に愛されたなら、劇中で歌われる曲も愛される。『グレイテスト・ショーマン』はその好例だ。ゴールデングローブ賞を受賞したキアラ・セトルの“ディス・イズ・ミー”や、ヒュー・ジャックマンの熱唱が光った“ザ・グレイテスト・ショー”をはじめ、とにかく名曲ぞろい。“リライト・ザ・スターズ”を聴くだけで、ザック・エフロンとゼンデイヤのロマンチックなシーンを思い出す人も少なくないのでは?
この映画と同じ作曲家チームが楽曲を手がけた『ラ・ラ・ランド』も同様で、冒頭の交通渋滞がめくるめくミュージカルと化す“アナザー・デイ・オブ・サン”、劇中で2度歌われ、アカデミー賞受賞を果たした”シティ・オブ・スターズ”も印象的。同じくアカデミー主題歌賞に輝いた、『リメンバー・ミー』のタイトル曲は劇中で3度歌われ、どれもアレンジが異なるが、いずれも印象度は強い。
また、ディズニー・アニメの実写版『美女と野獣』ではアニメ版で歌われた名曲に加え、エマ・ワトソンが歌った“時は永遠に”などの新たに書き下ろされた曲が観客を魅了。ミュージカル映画からは現在も名曲が生まれ続けている!
2: 有名な伝説的ミュージカル・ナンバー
クラシックなミュージカル映画の音楽は、現在も不動の人気を誇る。『雨に唄えば』で同名の主題歌は元々古いポピュラー・ソングだったが、今となってはジーン・ケリーのダンスとともに記憶される名曲。雨の中でこの曲を歌いながらタップダンスを踊る場面は、まさに映画史に残る名シーンだ。すべてのセリフが歌で語られる『シェルブールの雨傘』のテーマ曲も、映画を鮮烈に印象付けた名曲中の名曲。曲自体が独り歩きしているので、映画を見ていない人でも“聞いたことある”と思うはず。
『サウンド・オブ・ミュージック』はより多くの曲が現在ではスタンダードとして親しまれている。“ドレミの歌”“エーデルワイス”など、誰でも一度は耳にしたことのある曲のオンパレード。映画にまだ触れていない人は、ぜひ一度、映像とともに体験してみて欲しい。
ブロードウェイの伝説の振付師ボブ・フォシーが監督を務めた『オール・ザット・ジャズ』はオープニングの“オン・ブロードウェイ”から、クライマックスを彩る“バイ・バイ・ラヴ”まで、いずれ劣らぬ名曲ぞろい。フォシー関連作では、ライザ・ミネリの圧倒的パフォーマンスも忘れ難い『キャバレー』や、フォシーが舞台版での振り付けを手がけた『シカゴ』も音楽が印象的な人気作だ。
また『レ・ミゼラブル』は、元々舞台劇だったのはご存知の通り。アン・ハサウェーが歌った“夢やぶれて”を筆頭に使用曲のほとんどが舞台版から引き継がれたが、ヒュー・ジャックマンが馬車の中で歌う“サドゥンリー”は映画のためのオリジナル曲で、ファンの間で好評を博した。同じく舞台劇の映画化『マンマ・ミーア!』は、これも舞台版と同様に全編スウェーデンの世界的なポップグループ“アバ”のヒット曲で構成。ただでさえ高揚感あふれる“ダンシング・クィーン”は群舞効果で盛り上がる!
3: 映画音楽家の巨匠が生んだ永遠の傑作
映画音楽の分野に大きな足跡を残した巨匠たちは映画ファンの心にも深い感動をあたえている。5度のアカデミー賞受賞歴を誇るジョン・ウィリアムズは、その代表格。『スター・ウォーズ』を筆頭に、『E・T』『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』『ハリー・ポッター』シリーズなどで響かせた情感あふれるオーケストラ楽曲は、映画とともに一度耳にしただけで脳裏にこびりつく。
アカデミー賞3度受賞のヘンリー・マンシーニは『ひまわり』などで叙情的な音楽を創造。『ティファニーで朝食を』『ピンク・パンサー』シリーズの名曲も忘れてはいけない。
イタリア映画界の至宝ニーノ・ロータは、『太陽がいっぱい』はもちろん、『道』『ゴッドファーザー』などで哀感あふれる音楽を創造。同じイタリア出身で、クェンティン・タランティーノが敬愛するエンニオ・モルリコーネも忘れるわけにはいかず、『ニュー・シネマ・パラダイス』の美しいメロディを耳にしただけで、涙腺が緩んでしまうファンも多いのでは?
現代の名匠では『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『アベンジャーズ』のアラン・シルヴェストリのドラマチックな楽曲作りが光る。
4: 一度聴いたら忘れないテーマ曲もの
勇壮なオーケストラに乗ったテーマ曲は、映画の力強さと相まって見る者のハートをガッチリつかむ。エルマー・バーンスタインによる『荒野の七人』のテーマ曲は、マールボロのCMでも使われたことでもおなじみだが、メリハリの効いたオーケストレーションが魅力。ジョン・バリーの編曲があまりに有名な『007』シリーズの“ジェームズ・ボンドのテーマ”は、ギターのフレーズからスイングするホーンの響きへとなだれこむ転調にカタルシスを覚える人も多いのでは?
トランペットのファンファーレ風の響きも風格満点なビル・コンティーの『ロッキー』のテーマも、胸を熱くするに十分。また、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲の、たたみかけるようなドラマチックなフレーズの連打もアドレナリンをかき立てる。いずれの楽曲にも通じるのは、管楽器の勇ましい響き。映画で描かれる冒険心やガッツを象徴するようで、聴いているだけでグッとくる!
5: 映画のヒットから火がついた主題歌
映画の感動とともに心に残る主題歌の代表格は、やはり『タイタニック』の“マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン”。セリーヌ・ディオンの圧倒的な歌唱で映画の感動は、より強く印象づけられた。『アルマゲドン』のエンディングを彩ったエアロスミスの“ミス・ア・シング”も同様だ。ドラマチックな映画には、スケールを感じさせるバラッドがよく似合う。
これらの映画のために作られたオリジナル曲に対し、既成の曲を使用した場合でも、映画のインパクトを決定づけることがある。『小さな恋のメロディ』のビージーズ“メロディ・フェア”は元々は彼らのオリジナルアルバムに収録された一楽曲に過ぎなかったが、今ではヒロイン、トレーシー・ハイドの初々しい姿と一体になった感がある。『スタンド・バイ・ミー』の主題歌になったベン・E・キングの同名曲も、これが流れないラストは今となっては想像できない。また、『ベイビー・ドライバー』ではビートがアクションのリズムと一体化した、ミュージカル的な楽曲の起用にオリジナリティを感じさせる。