成田陽子
ロサンジェルス在住。ハリウッドのスターたちをインタビューし続けて37 年。これまで数知れないセレブと直に会ってきたベテラン映画ジャーナリスト。本誌特別通信員としてハリウッド外国人映画記者協会に在籍。
父親がスピルバーグ監督の会計士だったというかなりうらやましい環境で育つ
日本語表記はオールデンとハツオンしているようだが、実際にはアとオの中間でほとんどアルデンに聞こえるとまず現地から説明しておこう。
「フィールド・オブ・ドリームス」の監督、フィル・オールデン・ロビンソンが家族の友人だった事もあって両親がオールデンという名前を受け継いだという様に、彼の家庭はかなりハリウッドにどっぷり浸っている。
まず父親がスティーヴン・スピルバーグの会計士だったせいで、オールデンが14歳の時にバーミツバ(ユダヤ教の成人式)で上映した彼の小作品がちょうど出席していたスピルバーグに認められて、以来スピルバーグの作品に顔を出したりフランシス・コッポラの映画に抜擢されたり、ソフィア・コッポラ監督のディオールのCMにナタリー・ポートマンと出演したり、ウッディ・アレンの「ブルージャスミン」(2013)では、ケイト・ブランシェットの義理の息子役とコネクションの全く無い俳優志望にとっては何とも羨ましい環境に育ったと言えよう。
初めてオールデンに会ったのは「ヘイル、シーザー!」(2016)で、デリケートな監督(レイフ・ファインズ)に教えられたセリフが全く言えない西部劇の若手スターを演じた時。
『正直な話、僕にとっては馬に乗ったり、ロープ捌きをする方が長いセリフ回しをするよりはるかに難しかったんだ。僕は母にハリウッドの昔の映画をたっぷり見せられて育ったからこういう古き良き時代の映画スタジオでのドラマに出演出来てすごく嬉しかった』と実際は荒削りなアクションよりドローイング・ルーム劇(着飾った人々が高尚な会話をするドラマ)の方がやりがいがあると話していた。
次は同年の「ルールス・ドント・アプライ」(日本未公開)でやはり古き良き時代のスタジオの運転手の役をした時である。監督兼ボス役のウォーレン・ビーティからためになるアドバイスをたくさん貰ったと嬉しそうだった。オールデンは大先輩にモテるタイプなのである。
ジョージ・ルーカスやハリソン・フォードからの激励がなによりの支えだった
さてマイルズ・テラー、アンセル・エルゴート、タロン・エガートン、ジャック・オコネル、スコット・イーストウッド等が狙った若きソロ役を見事に勝ち取った「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」の会見はパサデナ(ロスから30分北)のコンベンションセンターで行われ、会場には映画に使われたセットが陳列され、チューバッカやロボットがうろうろしているというファンにとっては天国の様な場所(記者にとっては誠に不便なロケーション)で行われ、SW応援大会の様な雰囲気に煽られて張り切ったオールデンが現れた。
黒いセーターにヒゲを伸ばしてちょっと不良っぽいスタイルで登場、しかし話を始めると滑舌の良い語り口、豊かなボキャブラリー、ていねいな態度に育ちの良さが感じられる。
『2015年の10月にオーディションがあって役を得てから今日まで、映画のストーリーから細部まで完全にシークレットで家族にも友人にも何ひとつ話せず、これを守るのがかなりのストレスだった。かまをかけて聞いて来たり、巧みな誘導をしたりと色々なテクニックで迫られたからね。
1時間程ジョージ・ルーカスと話が出来たのが何よりの宝だった。ハリソン(フォード)も先日のテレビのトーク番組に突然現れて僕を激励してくれたし、撮影中も色々と助言してくれて、彼の飛行機熱にも感化されて、空を飛ぶという快感を経験したり。
今回の役作りは世界中のファンが期待するプレッシャー、ハリソンに誇らしく思ってもらいたい願望、若いソロの生意気な言動、そういう要素が集まって思ったよりはるかにハードワークになったね。でも苦労じゃなく、仕事を一生懸命するのが気持ち良かった』
オールデンを見るために用もないのにウェイター達が激しく出入りする『新スター誕生』の場を目のあたりにした気分になった。