また、劇伴を手掛けるのは初となるレディオヘッドのトム・ヨークが音楽をプロデュースし、公開前から大きな話題となった。
今作のプロモーションで来日したルカ・グァダニーノ監督のインタビューを2週に渡ってお届けする。第1弾では、監督が大きな影響を受けた作品や敬愛している大島渚監督への想いなどを語ってくれた。
大島渚監督の『御法度』はこれまで観た中で最も素晴らしい映画
ーー今まででご覧になった中で最も大きな影響を受けた作品を教えて頂けますか?
「幼い頃から今までに観た映画全てに感化されているので選ぶのは難しいですが、『アラビアのロレンス』や『サイコ』、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督作品、大島渚監督作品からは大きな影響を受けていると思います」
ーー日本映画も沢山ご覧になっているそうですね。
「先ほどもお話したように大島渚監督の大ファンで作品はほぼ観ていますし、他にも小津安二郎さん、溝口健二さん、鈴木清順さん、押井守さん、宮崎駿さんの作品は観ています」
ーー大島渚監督作品のどんなところがお好きなのでしょうか?
「ファスビンダー監督作品と通ずるところがあると思っていて、それは何かというと“葛藤”を感じさせてくれるところ。それから映画を通して社会を描いているところも。『太陽の墓場』や『青春残酷物語』なんかは特に当時の“社会”が鋭く描かれていますし、『愛のコリーダ』もそうですよね。彼の美意識の深さは無限であり、映像に対する倫理的な強さは僕にとってとても良いお手本になっています。もうこの世にいないことがとても悲しい…。ちなみに遺作である『御法度』はこれまで観た中で最も素晴らしい映画だと思っています」
ーー監督の『君の名前で僕を呼んで』は私にとって最も素晴らしい映画なので、お会いすることができて光栄です。
「ありがとうございます。ただ、ひとつ言えるのは自分の作品は大島作品と同じ棚には並べられないということ。話は少し逸れますが、最近チューリッヒの大学の学生を相手に2日間マスタークラスを行いました。彼らは当然映画に詳しいだろうと思っていくつか映画に関する質問をしたのですが、何もわかってなくて驚きました。大島渚監督のことを知らない生徒も大勢いてショックを受けたんです。だから大島作品の中でも比較的わかりやすい『戦場のメリークリスマス』を観せたんですけど、彼らは大きな衝撃を受けていましたよ。『戦場のメリークリスマス』を観たことで映画監督になりたいというクレイジーな考えはやめてくれるといいけど(笑)。というのは冗談で、大島監督作品から得た知識を水のように飲み込んで、彼らが大きな目標を持って映画の道を歩き続けてくれることを願っています」
ーーこれから映画業界を志す人達に向けてメッセージを頂けますか?
「映画業界で働きたいなら映画に関する知識と自己規律が必要です。それから『御法度』の最後で北野武演じる土方歳三が桜の樹を斬るときのような覚悟もいりますね。成功することを追求せずに意味のある作品を撮るには大きな犠牲を伴います。だから簡単な仕事ではないですよ。それでも目指すというのであれば心から応援します」
『サスペリア』の製作秘話やオリジナル版の主演を務めたジェシカ・ハーパーとのエピソード、トム・ヨークが手掛けた音楽について語ったインタビュー第2弾は来週お届けする。
(取材・文:奥村百恵)
サスペリア
監督:ルカ・グァダニーノ
脚本:デビッド・カイガニック
音楽:トム・ヨーク(レディオヘッド)
出演:ダコタ・ジョンソン、ティルダ・スウィントン、ミア・ゴス、ルッツ・エバースドルフ、ジェシカ・ハーパー、クロエ・グレース・モレッツ
配給:ギャガ
1月25日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
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