本作のもととなったのは、1978年に街で唯一採用された黒人刑事が、白人至上主義の過激派団体<KKK>(クー・クラックス・クラン)に入団し、悪事を暴くという大胆不敵なノンフィクション小説「Black Klansman」。
まずなんと言っても驚くのが、潜入捜査をした張本人がノフィクション小説を書いたという事実。
原作者のロン・ストールワースは警察署を退職してから自身の経験を回想録として執筆し、2014年に「Black Klansman」として出版したという。
そんなロンを演じるのは名優デンゼル・ワシントンを実父にもつジョン・デヴィッド・ワシントン。無鉄砲で怖いもの知らずの黒人刑事を魅力的に演じている。そしてロンの相棒となる白人刑事フリップ・ジマーマンを、『スター・ウォーズ』シリーズ新3部作や『沈黙 -サイレンス-』、『パターソン』など幅広いジャンルで圧倒的な存在感を放つアダム・ドライバーが演じている。
物語の舞台は1970年代半ばのアメリカ・コロラド州。コロラドスプリングス警察署では初の黒人刑事としてロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)が採用され、情報部に配属される。ある日、新聞広告に掲載されていた過激な白人至上主義団体“KKK=クー・クラックス・クラン”のメンバー募集に電話をかけたロンは、黒人でありながらも徹底的に黒人への差別発言を電話越しに繰り返し、結局KKKの入会の面接を受けるという展開に……当然のごとく警察署内は騒然となる。そこで、電話での応対はロン、KKKとの直接対面はロンの同僚の白人刑事フリップ・ジマーマン(アダム・ドライバー)が担当し、二人で一人の人物を演じて潜入捜査を試みることになるが…という前代未聞の話である。
人種差別を扱った作品ではあるが、さすがはスパイク・リー監督、KKKへの潜入捜査をコミカルなタッチで描き、またKKKのメンバーとフリップやロンとの緊張感のあるやり取りをバランスよく見せることで、ハラハラドキドキのサスペンスムービーとしても成立させているのだ。
ロンのユーモラスな性格を茶目っ気のある芝居で体現してみせるジョンと、徹底的に白人至上主義者になりきるフリップをクールに演じるアダムとの対比も素晴らしく、きっと誰もがこの二人を好きにならずにはいられないだろう。
また、スパイク・リーが監督、脚本、製作を務めたほか、『セッション』や『パラノーマル・アクティビティ』シリーズを世に送り出したジェイソン・ブラムや、『ゲット・アウト』のジョーダン・ピール監督が製作に名を連ねているのも興味深い。
第71回カンヌ国際映画祭では最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』の次点となるグランプリを受賞したことも大きな話題となった本作を是非劇場でご覧頂きたい。
(文/奥村百恵)
『ブラック・クランズマン』
監督・脚本:スパイク・リー
製作:スパイク・リー、ジェイソン・ブラム、ジョーダン・ピール
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー
トファー・グレイス、アレック・ボールドウィンほか
TOHOシネマズ シャンテほか全国公開中!
配給:パルコ
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