徹底的なリサーチのもと制作されたある男の物語
現代米国政治史における最も謎に包まれた人物であり、“影の大統領”として悪名高きイラク戦争へと国を導いたとされる第46代副大統領、ディック・チェイニーに光を当て、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケイ監督が入念なリサーチで作り上げた実話ベースの政治ドラマ。アカデミー賞で作品・監督賞など八部門で候補になり、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。バイスには“代理”のほか“悪徳”という意味も。
チェイニーを演じたのは「ダークナイト」などのカメレオン俳優クリスチャン・ベールで、今回も20キロの増量で役に取り組んだ。共演陣も豪華で、妻リン役にエイミー・アダムス、ラムズフェルドにスティーヴ・カレル、ブッシュ大統領にサム・ロックウェルが扮している。
悪名高きイラク戦争に国を導いた“影の大統領”の衝撃の実話
2001年9月11日、ホワイトハウスで同時多発テロに対応指揮していたのは副大統領チェイニー(ベール)だった。
チェイニーは若者の頃はうだつが上がらなかったが、恋人リン(エイミー)を失望させないため一念発起、1968年には連邦議会のインターンシップに参加してラムズフェルド下院議員(カレル)と出会い、政治家として指導される。ニクソンがウォーター事件で失脚した後はラムズフェルドと共にフォード大統領のスタッフとなり、レーガン、ブッシュ政権でも重用。
そしてブッシュ・ジュニア(ロックウェル)が大統領選に出る時、チェイニーに副大統領候補になって欲しいと要請する。副大統領は閑職だが、チェイニーはブッシュ・ジュニアなら操れるだろうと考える……
見どころ01:20代から70代までを演じ切ったベール
映画の舞台は1963年から2000年代にかけての40年余り。チェイニーの年齢でいうと20代から70代だ。現在40代半ばのベールは特殊メイクの力も借りてこれを一人で演じ切り、違和感を覚えさせない。
見どころ02:特殊メイクにかかったのは一回に5時間近く
映画の最大の見どころの一つがブッシュ政権の面々に扮したキャストの“そっくりさん”ぶり。「ドラキュラ」などで3度のオスカーを持つグレッグ・キャノンが毎回5時間をかけてメイクした。
バイス
2019年4月5日公開
原題『副大統領』2018年度作品。アメリカ映画。2時間12分。
ロングライド配給。