二つの世界戦争に挟まれた激動の時代を“普通”の男が辿る受難に満ちた物語
1979,80年に西ドイツで制作された本作は、2000年に日本劇場初公開。全14話構成のTV映画で、上映時間は14時間57分に及ぶ。デジタルリマスター版が2013年にロードショーされた。
ほか、ファスビンダー監督の作品としては、2013年『ローラ』『マルタ』『マリア・ブラウンの結婚』、2016年『あやつり糸の世界』、2018年『13回の新月のある年に』『第三世代』と近年日本での劇場公開が続き、その時代を超えるアクチュアルな主題や唯一無二の描写で、着実にファンを増
やしている。
『ベルリン・アレクサンダー広場』は、ファスビンダーの映画作家としての一つの達成であり、最重要作・最高傑作と言える作品だ。
舞台は、1920年代末ドイツのベルリン。二つの世界戦争に挟まれた不穏な時代。第一次大戦敗戦の痛手で社会は不安定を極め、失業者は日々増加し、犯罪が横行していた。またナチスと共産主義者の対立も激しさを増していた。その半面ベルリンはヨーロッパ有数の大都市として爛熟した文化が花開いた。そんな激動の時代を一人の“普通”の男、フランツ・ビーバーコップが辿る受難に満ちた物語。
ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが、ジョイス『ユリシーズ』、ムージル『特性のない男』に並ぶ 20世紀前衛文学の傑作を映画化し、批評家スーザン・ソンタグや、フランシス・フォード・コッポラ、マイケル・マン、トッド・ヘインズ、タル・ベーラなど数々の映画作家を魅了する比類なき人間ドラマとなった。
最終話の強烈なイメージの連続は、ルカ・グァダニーノ監督の『サスぺリア』(2018)にも明らかな影響を与えているとされる。物語の背景は、失業率の高まり、犯罪の増加、ファシズムの台頭、戦間期の混迷と不穏な空気に満ちた大都市ベルリン。その姿は、21 世紀の世界、私たちが暮らす「都市空間」の現在を見通すかのような、予言的かつ黙示録的な光景として立ち現れる。
ベルリン・アレクサンダー広場
2019年7月13日(土)からアップリンク吉祥寺にて2週間限定公開
配給:アイ・ヴィー・シー
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