数々の名作に主演し、監督としても一流の腕を持つハリウッドのレジェンド・スター、ロバート・レッドフォード。彼の俳優引退作といわれる『さらば愛しきアウトロー』が間もなく公開。超美形男優として1970年代から絶大な人気を誇り、一方でサンダンス映画祭を立ち上げた硬派な面も持つレッドフォードとは一体どんな男なのか?これを機に振り返ってみましょう。(文・渡辺祥子/デジタル編集・スクリーン編集部)

「明日に向って撃て!」「スティング」や名匠ポラックとのコンビ作で大スターに

1961年ブロードウェイのヒット芝居『裸足で散歩』で注目されて、のちの映画化(1967年)では同じ役を演じた。1962年に日本ではTV放送されただけの『戦場の追跡』で映画デビュー。このときの共演で親友になったのが、やがて監督としてレッドフォードを多くの自作で起用するシドニー・ポラック(1934〜2008年)だった。

「雨のニューオリンズ」でシドニー・ポラック監督(右)と初コンビ

ポラックは「いのちの紐」で監督デビューした後、2作目の「雨のニューオリンズ」(1966年)でレッドフォードを初めて起用した。以後、若い日の彼の持ち味がいきる映画を撮りながら、自らもハリウッドの巨匠への道を歩んで行く。

ポラック監督、レッドフォード主演の第2作は文明を逃れてロッキー山中で猟師として生きる男を描く「大いなる勇者」(1972年)。レッドフォードのお気に入りで彼のライフスタイルにも影響を与えている。

画像: 大ヒットした「追憶」もポラックとのコンビ作

大ヒットした「追憶」もポラックとのコンビ作

大学時代に出会い、愛し合いながら進む道の違いで別れざるを得なくなったカップルを描く「追憶」(1973年)はレッドフォードの輝くばかりの美しさが話題を呼び、バーブラ・ストライサンドが歌うテーマ曲も大ヒットしたことで知られるコラボ3作目。

CIAの情報分析員のレッドフォードがCIA内部に巣食う悪を暴いて危機が迫る「コンドル」(1975年)が第4作。ロディオ・チャンピオンからCMタレントになった男の悲哀を語るのが5作目の「出逢い」(1979年)。もうこの頃になるとレッドフォードは1970年代を代表するハリウッドのスーパースターの地位を確立していた。

人気がブレイクしたのはジョージ・ロイ・ヒル監督、大スター、ポール・ニューマンと共演で実在の列車強盗、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの犯行と逃亡を軽妙に描くモダンな西部劇「明日に向って撃て!」(1969年)が大ヒットしたとき。主題歌『雨に濡れても』も大人気だった。

画像: ポール・ニューマンと組んで大成功を収めた「明日に向って撃て!」

ポール・ニューマンと組んで大成功を収めた「明日に向って撃て!」

この出演料でユタ州のコロラド山中に土地を購入、演じたサンダンス・キット役からその名をとってサンダンスと名付け、やがてこの土地を舞台にアメリカ映画に新しい世界を生み出すサンダンス映画祭が誕生する。

画像: ユタ州に広大な土地を買いそこでサンダンス映画祭を始めた

ユタ州に広大な土地を買いそこでサンダンス映画祭を始めた

4年後にはロイ・ヒル監督、ポール・ニューマンと再度組むことになった「スティング」(1973年)が誕生。スコット・ジョプリンの歯切れのよいピアノの調べに乗って大掛かりな詐欺が仕組まれる。

画像: ロイ・ヒル監督、共演ニューマンと再タッグの「スティング」はオスカー受賞

ロイ・ヒル監督、共演ニューマンと再タッグの「スティング」はオスカー受賞

メリル・ストリープとアフリカを舞台に共演、恋に落ちる男をレッドフォードが演じて女性ファンの胸をときめかせた「愛と哀しみの果て」(1985年)はポラック監督と組んだ6作目。ポラックはアカデミー作品賞と監督賞を受賞している。続くキューバ革命前夜のハバナが舞台の「ハバナ」(1990年)は7作目。

スーパースターのレッドフォードは、最愛の長男を亡くした母が生き残った次男につらく当たって苦しめる「普通の人々」で監督に進出、デビュー作でアカデミー賞の監督賞を受賞した。この映画が生まれた時期のアメリカは、離婚が増え、家族の関係が希薄になりつつあった時代。レッドフォードは社会の動きを見逃さなかった。

監督第2作「ミラグロ奇跡の地」(1988年)は前作とは違って温かな人間味がたっぷり。町の新開発に土地の人間が悠然と水をさす。監督第3作目の「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992年)では、やんちゃな弟が理解できなかった生真面目な兄の悔恨と悲しみを描く。弟役がレッドフォードの若い日を思わせる美しさを持ったブラッド・ピット。彼らがよく似ていることをあらためて思い出したのが、何年もののちに二人が共演したトニー・スコット監督の「スパイ・ゲーム」(2001年)のときだ。

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