女性を魅了するロマンチックな魅力と社会派としての知性を併せ持つスーパースター
「シンドラーのリスト」でナチ将校を演じて注目されたレイフ・ファインズが主演、レッドフォードは監督に専念したのがアメリカで実際に起きたクイズのヤラセ事件を描く「クイズショウ」(1995年)。少女時代のスカーレット・ヨハンソンが手堅い演技派ぶりを見せる「モンタナの風に抱かれて」(1998年)は彼の主演作でもある。
守護天使のようなキャディの助けで奇跡の復活を果たすゴルフ選手を描く「バガーバンスの伝説」(2001年)……他にも「大いなる陰謀」(2008年)「ランナウェイ/逃亡者」(2013年)「もしも建物が話せたら」(2016年、共同監督)など、レッドフォード監督作に駄作はない。それでも、やはり彼は監督というより女性を魅了するロマンティックな魅力と、社会派的題材が似合う知的な存在感の両方を併せ持つスーパースターだ。
のちにレオナルド・ディカプリオ主演でリメイクされるF・スコット・フィッツジェラルドの名作文学の映画化「華麗なるギャツビー」(1974年)での彼の洗練された美しさ。その一方でウォーターゲート事件を取材したワシントン・ポスト紙の記者たち2人の手記が本になる前、校正を読んだ段階で彼自身が映画化権を買ったというアラン・J・パクラ監督の「大統領の陰謀」(1976年)のような硬派な作品も彼にはよく似合う。
70本近い出演作。監督作が9本。製作だけの作やナレーションだけ、というのもあるが珍しいのはアメコミ映画「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」(2014年)への出演。その続きで「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年)にもチラリ。これにはビックリ。何があったの?
これらのアメコミ映画を見る前にヨットで遭難する男の孤独を演じた「オール・イズ・ロスト最後の手紙」(2014年)を見ていたので、別人に会った気分だった。
1950年代終わりのアメリカ映画界に出現、大人気を誇った70年代から80年代、90年代と確かな地位は揺るがないまま21世紀でも現役。そのせいかどう考えても映画からの引退なんてありえない、と思うけど…。
「さらば愛しきアウトロー」のロバート・レッドフォード最後のコメント
『まずこれが実話ということに惹かれたんだ。最初は“ニューヨーカー”でフォレスト(タッカー)の話を読んで、彼は17回逮捕されたがアルカトラズも含めて17回脱獄していて、きっと彼は逃げることに興奮しているんだろうと思った。そこに興味を持ったんだ。生命の輝きと冒険心に溢れているとね。しかも彼は銃を持っていても誰も撃ったことがなかった。銃に弾を込めていなかったんだ。
共演者もみんな素晴らしい。ケーシー(アフレック)は実力を証明した。シシー(スペーシク)は長年見事な演技を見せている。ダニー(グローヴァー)の芸達者ぶりには感心した。それにトム(ウェーツ)は以前からファンでね。共演できるなんて神の恵みだよ。自分自身は心は30歳のつもりでも体は80歳という現実を受け入れなきゃね。まあ21歳の時から演じてきたから、もう充分だろう(笑)』
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