人生で一度しかない〝その夏〟を描いた傑作
地球温暖化のせいで季節というものをいつまで体感できるかわからない昨今ではあるけれど、夏という季節は、それでもやっぱり毎年めぐってくるのだろう。毎年めぐってくる夏。それなのに〝その夏〞は人生に一回しかない。〝その夏〞を一緒にすごした仲間、友だちは、その後の進路でばらばらになって、たとえ〝その夏〞を最後に会わなかったとしても、死ぬまで一生、きっと忘れることのできない存在となる。そんな少年たちの夏を描いたのが『スタンド・バイ・ミー』だ。
青春映画の金字塔、というには、主人公たちが若すぎるような気もする。青春一歩手前の少年たちを主人公に〝その夏〞を描いたロブ・ライナーは、『スパイナル・タップ』、『シュア・シング』からはじまって数多くの佳作を未だに作り続けている名監督。なかでもやっぱり『スタンド・バイ・ミー』はライナー監督の最高作品で代表作といってもよいのではないか。
まずは主人公の4人の少年が本当に楽しそうで、ツリーハウスでゲームをしたりバカ話をしたり、夏ってこういうものだよね、が誰の心の記憶もくすぐるような形で描かれていく。が、すぐに、彼らひとりひとりが幼い肩に大きな問題を抱えていることがわかる。彼らの見た目があまりに無邪気で可愛らしいのが、よけいにつらい。
スティーヴン・キングの原作『死体』も傑作で、〝四季の物語〞の、これは本当は〝秋〞の物語。感覚でいうと〝晩夏〞か、少年の時代が終わり、青年へと成長する、そんな季節の物語。傑作小説の映画化はむずかしいものだけれど、見事な成功例といえる。
『スタンド・バイ・ミー』に代表される優れた青春(少年)映画には、彼らの周りの大人たちの事情も実にうまく描きこまれているもの。だからこそ、若いときに観て、大人になって観たときにまたあらためて、さらに大きな感動を味わえる。それが『スタンド・バイ・ミー』のすごさだと思う。
「スタンド・バイ・ミー」がお手本!? 名作青春映画つの条件
〜「スタンド・バイ・ミー」を想起させる2010年代の青春映画も合わせてチェック!〜
01: 主人公は少年たちである
たまに女のコがまじることもあるけれど、なにより気がおけない男のコ同士、仲間ですごす時間は、人生の宝物だ。今年公開された『サマー・オブ・84』の主人公も4人の少年、『スタンド・バイ・ミー』へのオマージュか。
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02: 少年たちには秘密がある
秘密がなければ始まらない!親や兄弟にも言えない秘密があれば最高。周囲(特に大人)に知られないからこそ結束もますます固くなる。『ストレンジャー・シングス』などのTVシリーズものにもこうした設定が。
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Netflixオリジナルシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」シーズン1~3:独占配信中
03: それはいつでも夏である
青春映画、少年映画の傑作は、9割が夏の物語かと思えるほど。長い夏休み、友だちと一緒にすごす時間はいやというほどある。『キングス・オブ・サマー』というタイトルからもわかるように、夏は少年たちの季節なのだ。
\80‘s Taste Movie /
04: 出身は郊外の小さな町である
少年たちはたいがい小さな町に住んでいる。冒険から戻った彼らの目に、生まれ育った町は小さく映る。町が小さくなったのか、彼らが大きくなったのか。『SUPER 8』の少年たちは町を出ないが、成長は間違いなく見てとれる。
\80‘s Taste Movie /
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「スタンド・バイ・ミー」4K ULTRA HD
2019年10月9日(水)発売
¥4743円+税
特典:未公開シーン(8種)
販売:ソニー・ピクチャーズ
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