主演と脇役、悪役と善人。メジャーとインディーズ、映画とドラマ。これら対極にみえるものを軽やかに行き来する俳優マッツ・ミケルセン。どんな役を演じても、見る者を惹きつけてやまない彼が歩んできた道とは──(文・清水久美子/デジタル編集・スクリーン編集部)

【45歳】賞レースに顔を出す人気スターへ

画像: 見ているのもつらくなるほど繊細な演技が評価された「偽りなき者」

見ているのもつらくなるほど繊細な演技が評価された「偽りなき者」

こうして売れっ子俳優となったマッツは、2010年にはデンマーク女王からナイトの称号を授与され、2012年の「偽りなき者」ではカンヌ映画祭で男優賞を受賞し、“北欧の至宝”として輝きを増していく。「偽りなき者」では幼稚園の教師として働く主人公が、幼い女の子の何気ない嘘によって人生を破壊される姿を演じ、その秀逸な演技で観客をうならせた。本作はアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたが、その前年度にはアリシア・ヴィカンダーと共演した「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」も同賞にノミネートされるなど、マッツの実力は世界規模となっていく。

画像: 「ロイヤル・アフェア」では王妃と道ならぬ恋に落ちる医師を色気たっぷりに熱演

「ロイヤル・アフェア」では王妃と道ならぬ恋に落ちる医師を色気たっぷりに熱演

演技力抜群の国際派俳優としての知名度が高くなる一方、ジャージ姿があちこちで目撃されるなど(カンヌ映画祭でも!)、お茶目な一面でもファンを増やしていく。ブルース・リーが好きだというマッツ。ジャージを着ている理由を聞かれると、「いつどこでブルース・リーのような動きを求められるか分からない」「スポーツが大好きだから、いつでもどこでもできるように準備しておきたい」などの回答をしており、あまりにもチャーミング。出演作のPRで数多くのインタビューを受けるマッツは、インタビュアー全員に自ら握手し、こういった楽しい答えで場を和ませる。

公の場でも度々ジャージ姿が目撃されている(写真は昨年のカンヌ国際映画祭)
Jacopo Raule/GC Images

演技に関する質問には、彼が仕事に対して常に真摯に向き合い、監督からどれほどクレイジーな要求をされてもそれに応じようとしていることがよく分かる答えが多く見られる。非常にクレバーな紳士だが、決して嫌味にならない受け答えが素晴らしい。知的でありながら時にキュートで、ユニークで、出会った誰をも引き付ける。

画像: TVシリーズ「ハンニバル」のレクター博士でファンを拡大。殺人鬼さえも上品に見える

TVシリーズ「ハンニバル」のレクター博士でファンを拡大。殺人鬼さえも上品に見える

「007 カジノ・ロワイヤル」で悪役の底力を世界に知らしめたマッツだが、2013年から3シーズン放映されたTVシリーズ「ハンニバル」でレクター博士に扮して、さらにファン層を広げることに。ハンニバル・レクターと言えば人間を食べる殺人鬼なので、これ以上の悪はないくらいのキャラクターだが、マッツは非常に高貴にスマートに博士を怪演し、その美しさで世界中のファンを魅了。高級スーツに身を包み、マナーを重んじる悪の主人公を演じ続けた。

画像: 「悪党に粛清を」のプロモーションで初来日

「悪党に粛清を」のプロモーションで初来日

私服のジャージ姿とのギャップが大きいほど、彼に心を奪われるファンが増えていき、大ヒット作となった。2014年の「悪党に粛清を」は、マッツが好きだという「七人の侍」の黒澤明監督からインスパイアを受けたという西部劇。2015年には本作のPRで初来日を果たし、日本のファンを熱狂させた。

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