2019年最大の衝撃作「ジョーカー」。本年度のアカデミー賞でも本命視されており、アメコミ映画史上初の作品賞、ホアキン・フェニックスの主演男優賞などが期待されている。日本国内でもあれよあれよと集客を伸ばし、気づけば興収50億超え。本誌評論家が選ぶ2019年のベスト1に輝くなど、幅広く支持された。賞レースに向け、ますます注目が高まる中、ブルーレイ&DVDリリースが決定。見るたびに新たな解釈ができることができる本作、あなたはどう見る?(文・紀平照幸/デジタル編集・スクリーン編集部)

リピート不可避!“狂気の傑作”「ジョーカー」

バットマンの最大の敵である狂乱の道化師・ジョーカー。この悪のカリスマがいかにして誕生したのかを描いた作品が「ジョーカー」である。

製作・監督・脚本のトッド・フィリップスは、この世界を“アメコミとは並行世界”ととらえ、今までのよく知られた設定を無視し、まったく新たな背景を彼に与えている。そのためコミックファンの一部には不評だったが、逆に普段アメコミ映画を見ない層に熱狂的に支持されベネチア映画祭金獅子賞を受賞した他、日本でもリピーターを多数生み出すヒットとなった。

リピートポイントはここだ!

01:
“予測不能”なホアキンの演技

画像: 名優デニーロをも驚かせるホアキンの引き出しの多さ

名優デニーロをも驚かせるホアキンの引き出しの多さ

主人公はコメディアンを目指す道化師のアーサー(ホアキン・フェニックス)。彼は物語の冒頭からすでに“壊れて”いる。脳に障害があり、人前で突然笑いだす発作を起こすのだ。映画はそんな彼が、不幸の連鎖によって奈落の底に落ちていく様を執拗に追いかけていく。家族や恋人に関して信じていたものがすべて偽りだったと知らされた時の彼の悲哀に満ちた表情がなんとも哀切なのだ。

この、若者のようでも老人のようでもある男をホアキンが大熱演。20キロにも及ぶ減量でガリガリに痩せ、狂気と正気の狭間を揺れる男になりきった。最初の殺人の後で突然踊り出すのも彼のアイディア。監督とは打ち合わせもほとんどなく、リハーサルもなし。台本にない演技をすることも多く、共演者をたびたび驚かせたという。

ロバート・デニーロ扮するマーレイ・フランクリンのTVショーに登場するくだりも、テイクごとにまったく違った演技を見せている(BD/DVDの特典映像で確認できる)。あの演技派のデニーロが素で驚いている表情が見られるのだ。“本当に恐ろしいのは、先の行動が予測できないこと”ということをホアキンの演技は感じさせてくれる。

02:
監督の記憶で再現された街並み

画像: アーサーの家に続く長い階段は作品の象徴的なモチーフ

アーサーの家に続く長い階段は作品の象徴的なモチーフ

そんな陰鬱な物語の雰囲気を盛り上げるのが背景だ。舞台となる80年代初頭のゴッサムシティのイメージの基になったのが1981年のニューヨーク(劇中の映画館で上映されている映画は「ミッドナイトクロス」「エクスカリバー」など81年の作品)。NYの出身であるフィリップスは街中にゴミがあふれ治安が最悪だった当時の街並みを、自らの記憶に合わせて再現している(当然映画的誇張はあるが)。

実際にNYやニュージャージーでロケが行なわれたが、実際の風景をCG処理することによって、NYの象徴的な景色が消され、NYがゴッサムになっていく驚きのテクニックも特典映像で見られる。

特に印象的なのが、アーサーの家に続く長い階段。ここは階段の多いサウスブロンクスをイメージしたものだそうで、疲れ果てた表情のアーサーがそこを登っていき、ジョーカーとなった彼は笑顔で踊りながら降りてくる、なんとも象徴的な場面の背景になっている。

03:
見るたび増える新たな発見

画像: 幾通りもの解釈ができるのが本作の魅力

幾通りもの解釈ができるのが本作の魅力

ところで、原作コミックではジョーカーの表記は「The Joker」。しかしこの映画のタイトルは「Joker」になっている。つまり、“ある特定の男の物語ではない”と解釈することもできるのだ。

確かにラストの暴動シーンでは街には道化師マスクの男たちがあふれていた。ジョーカーを崇めるような人々を見れば、彼らもまた“格差社会に怒りを抱くジョーカー”たちと見ることができるし、“我々ひとりひとりの中にもジョーカー的なものがある”とも考えられる。

本作ではブルース・ウェイン(後のバットマン)の両親を殺害するのはアーサーではない。極端に考えると、あのマスクの男こそがバットマン世界におけるジョーカーとなるかもしれないのだ。

さらに言うと、この物語すべてが精神病棟に入院中の一人の患者の妄想である、という解釈も可能だし、ラストの足跡の意味は?など見るたびに新しい発見がある映画。ソフトで何度も見られることを活用して、この悪夢のような迷宮に入り浸ってみるのも楽しいかもしれない。

画像: 1/29 DVD発売「ジョーカー」をリピートして見るべき理由3

「ジョーカー」ブルーレイ&DVDセット
2020年1月29日(水)発売
WBHE
【初回仕様】4527円+税(2枚組/ポストカード付)、【初回仕様】4K ULTRA HD&ブルーレイセット=6345円+税(2枚組/ポストカード付)
特典:ジョーカーが生まれるまで、新たなジョーカーとゴッサムを描く、撮影の舞台裏、狂気の記録

TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

 

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