「スター・ウォーズ」新三部作でカイロ・レンを演じたアダム・ドライバー。一度見たら忘れられない佇まい、作品ごとに異なる演技......とらえどころのなさも魅力の彼が、いまスゴイことになっている。2019年は配信も含めると4作品が公開、2020年も執筆中の1月現在に決まっているだけでも2作品が公開予定だ。これまで組んだ監督と待機作の多さを見れば、俳優としてのポテンシャルは一目瞭然。知る人ぞ知る存在からアカデミー賞の有力候補へ2020年もアダムから目が離せない。(文・前田かおり/デジタル編集・スクリーン編集部)

とどまることを知らない怒涛の公開ラッシュ

今、もっとも勢いある俳優として注目を集めているアダム・ドライウバー。その名が大々的に知られることになった『スター・ウォーズ』新三部作が、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でついに完結したが、悪役カイロ・レンとして、190cm近い長身でライトセイバーを振るった彼は、熱狂的なファンからも絶賛されるまでになった。

そんな『SW』熱も冷めやらぬうちに、Netflix配信の『マリッジ・ストーリー』での演技でゴールデン・グローブ賞をはじめ各映画賞の主演男優賞にノミネート。アカデミー賞でのノミネートも確実視され、いよいよ名実ともにトップスターに躍り出そうな気配だ。加えて、2020年は主演映画の公開ラッシュで、その勢いに拍車をかけている。

すでに配信中のアマゾン・プライム・ビデオの『ザ・レポート』ではCIAによる非人道的な尋問プログラムを捜査した実在の人物を熱演。『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』では奇想天外な冒険に巻き込まれていくCM監督役。今春公開されるジム・ジャームッシュ監督の『ザ・デッド・ドント・ダイ』では、ビル・マーレイ、クロエ・セヴィニーらとゾンビ退治することになる田舎の保安官を演じている。

その後もレオス・カラックス監督の『アネット』(原題)に、ベン・アフレック&マット・デイモンの共同脚本をリドリー・スコット監督が手掛ける歴史劇『ラスト・デュエル』(原題)などが待機中。かつてこれほど一人の俳優に作品が集中したことはあっただろうか。

これ全部アダム!? 個性あふれる出演遍歴

Photo by Mike Windle/Contour by Getty Images

1983年11月19日、カリフォーニア州サンディエゴ生まれ、インディアナ州育ちの彼は高校時代に演技を始めるが、2001年に起きた・米同時多発テロを機に海兵隊に入隊。イラク派遣を前にマウンテンバイクの事故で負傷し、名誉除隊に。その後、俳優を目指してジュリアード音楽院に入学して演劇を学んだ。

卒業後、ブロードウェイの舞台などで経験を積みながら、2011年、クリント・イーストウッド監督の『J・エドガー』で長編映画デビューを飾る。翌年はスティーヴン・スピルバーグ監督の『リンカーン』、さらにコーエン兄弟監督の『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』にも端役だが出演した。

注目されたのは、2012年から始まったHBOドラマの『GIRLS/ガールズ』。ヒロインの恋人役でいつも上半身裸の変わり者として登場したが、シーズンを重ねるうちに憎めない男へとキャラ変して人気者に。また同年、映画『フランシス・ハ』でノア・バームバック監督と出会い、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』、『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』、『マリッジ・ストーリー』ヘと続く盟友関係が生まれる。

小さな役を重ねながら、2014年、妻の育児ノイローゼに翻弄される夫を演じた『ハングリー・ハーツ』でヴェネチア国際映画祭男優賞を受賞。2016年、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』での詩を綴る運転手役で絶賛され、マーティン・スコセッシ監督の『沈黙サイレンス』では23kgも減量して宣教師役に挑み、観客を驚かせた。

こう言ってはなんだが、いわゆる二枚目ではない。面長で少しばかり大きすぎる鼻は、時に不気味にも感じられる。だが、そんな独特な顔立ちと長身の体躯を活かして、いつしか名匠たちからも愛される俳優へと成長したアダム。変幻自在、唯一無二な存在感を放つ彼の飛躍は始まったばかりだ。

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